きつねのおきゃくさま (創作えほん)

  • サンリード
4.22
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本棚登録 : 831
感想 : 103
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784914985271

感想・レビュー・書評

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  • きつねを始め、出てくる動物たちの「顔」がいい。どこか間が抜けていて、わるい奴になろうとしても、徹しきることができないきつね。きつねのことを「おにいちゃん」と言って慕い、すぐに相手を信用してしまう、これまた間の抜けている顔のひよこ、アヒル、うさぎ。紙芝居のように一ページごと見やすく整えられた絵に加え、むかし話のような語り口は、おだやかに、かつ軽快に読者に大事なことを伝えてくれる。

    この絵本を読んでいると、言葉がどれだけ相手の心を動かすものなのか、その影響力と可能性についてしみじみ考えさせられる。「やさしい」「しんせつ」「かみさま」そういうまろやかな言葉によって心はほぐれ、その嬉しさを相手に返したくなる。きつねの中にあった最初の思惑が何であったにせよ、時間をかけて育まれ、こころの中にポッと咲いたその感情はまぎれもなく本物なのだ。

    きっとこの絵本を読んだ人ならわかると思う。自分の中にある、「思いやり」とか「尽くしたい」とか「喜んでほしい」という感情がどこから来るものなのか。人は他者との関係性によって自身を育み、言葉によって心の糧を得、それがいずれ行動となる。

    たぶんきつねは見つけたのだろう。自分が生きている意味を。だから最後は幸せだったのだと思う。そして、そんなきつねと一緒に暮らした、これまたどこか抜けたところのあるひよこ、アヒル、うさぎたちは、自分たちのために勇ましく戦ったきつねを見て、きっとなにかを受け取ったんじゃないかと思う。死を悼むということは、嘆き悲しむということは、涙を流すということは、その人のことが好きだったということを意味しているのだから。

    ふとしたきっかけで生まれた感情が本物の感情となり、やがて行動へといたる。そしてその行動はきっと残った3匹に伝わり、彼らに何かを宿らせたんじゃないだろうか。
    とっぴんぱらりの ぷう。

  • きつねにまつわる物語絵本シリーズですが、あまんきみこさんの作品として、知っていたものの、読めてなかった作品です
    ひとりぼっちのやせっぽちでおなかを空かしたきつねが、同じくやせっぽちのひよこと出会い、まだまだやせっぽちだな、よおっく太らせてぱくりと食べてやろう! と自宅で保護して美味しいごはんをたくさん食べさせてやるのです
    そして、やせっぽちのアヒル、やせっぽちのうさぎも、きつねは自宅で面倒を見てやるようになるのですが、ひよこ、アヒル、うさぎの三羽組は、きつねを心から慕うようになり「きつねのおにいちゃん」なんて呼ばれてしまって、誉め言葉にすごく弱いきつねのおにいちゃんは、そのたびにくねくねと身をよじって照れるのでした
    ある日、きつねのそのにぎやかなルームシェアのおうちが、とんでもない災難に襲われます
    しかし、きつねのおにいちゃんは、ひよこと、アヒルと、うさぎのために、彼らが抱いていたきつねのおにいちゃんのイメージのそのままの、頼もしい、勇敢な行動をとったのでした
    きつねのおにいちゃんの最後の姿は、息絶えたことがはっきり分かる作画で、ここまでお人好しで誉められる度にすごく照れる顔をするきつねを見ていただけに、それでいいの!? きみはそれで良かったの…? って聞きたいくらいですが、
    でもきつねのおにいちゃんは、心から満足そうに笑っていたのです

    ところで、きつねの自宅内の作画がすごく好きです
    特に人間みたいな服を着てたりせず、鳥獣戯画くらいの感じで二足歩行してたきつねですが、自宅内にはダイニングテーブルが設えてある上に、ひよこ、アヒル、うさぎが増える度にベッドも増えていきます
    そしてきつねのおにいちゃんは多分、ベッドは使ってなかったし、ひよこ、アヒル、うさぎを大切に太らせていた
    きつねさん、もっとわがままになっていいのよ
    お腹を満たすことよりも、慕われて名誉ある死を選んだと言える結末だけど、ひよこ、アヒル、うさぎがきつねを慕って悼む以外のことしてないなー、きつねのおにいちゃん割りが悪いな! と、きつね推しとしてはモヤモヤしてしまうのでした
    きつね自身はきっと、しあわせだったんだろうけど

  • 5分 遠目はそこそこ
    高学年までいけそう
    昔話風

  • 子どもの頃読んで印象的だった本。
    大人になった今読むと、とても深い話だなとしみじみ感じます。
    キツネの最後は残念だけど、人に与えることで豊かになり愛を知れたキツネは幸せそうだった。

  • なんとなく展開が読めたけど、きつねの最後の描写は衝撃だった。文も絵も良かった。
    子どもはこれを読んでどう思ったのかな。言葉にするのはまだ難しいかな。
    2回目読んで気づいたけど、きつねの家のベッドが増えていくのも良かった。

  • 知性に生きれば本能に窮屈だ。

  • 2023.2.10 3-1

  • きつねの家に、ひよことアヒルとうさぎが来て、優しいお兄さんや神様のようだと言われる。しかし最後には狼と戦って死んでしまう。創作絵本で、うれしか悲しいか、どちらを子どもは感じるだろうか?

  • 下心あって、皆を優しく世話してたきつねだったけど、本当にかみさまみたいに変わっていって。
    お世話するきつねの顔が、どんどん優しくなっていくのが印象的。
    勇敢に戦った、きつねの勇気にも感動。
    最後はとても悲しいけど、『はずかしそうに わらって』に、じーんときてしまった。

    全幅の信頼を持って、側にいるひよこのピュアさ。それに心動かされたんだろうなぁ。母性愛

  • 喜んでもらえるって、嬉しい。
    きつねさん安らかに…

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著者プロフィール

1931年生まれ。児童文学作家。1968年にデビュー作品集『車のいろは空のいろ』が日本児童文学者協会新人賞および野間児童文芸推奨作品賞を受賞。以降、いくつもの文学賞を受け、多くの作品が小学国語の教科書に掲載されている。2001年に紫綬褒章受章。京都在住。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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