地球を活かす市民が創る自然エネルギー

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  • シネ・フロント社
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784915576256

作品紹介・あらすじ

3・11後の新しい社会をどう創るか。世界の事例から提案する。

感想・レビュー・書評

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  • 大震災が起きて、ジャーナリストの伊藤千尋は先ずどうしたか。なんと先ず一週間後に上関の祝島に行っている。私の場合は、たまたま祝島に行ったのであるが、ほとんど入れ替わりぐらいで伊藤さんがいったということになる(←残念だ)。内容は今では随分と知れ渡った島民30年の闘いをコンパクトにまとめている。

    この本の大きな特徴は、富士山演出場をやめさせて巨大な露天風呂を作ろう、地熱発電を本格的に始めようという提案である。彼の発想の源はアイスランドにある世界一の露天風呂にある。日本の地熱発電の技術は世界一なのだそうだ。6月には、日本最大の地熱発電所を見学に大分に行っている。伊藤は、幾つか問題はあるが克服可能だ、と思う。むしろ、ガイドの「自然エネルギーは原発の添え物に過ぎません」という控えめな説明ぶりに苛立ちを覚える。

    この本は、「脱原発にむかう世界」の解説本にもなっている。ドイツの脱原発宣言の背後には、強力な反原発の世論がある(緑の党の役割)こと、今のところ2050年までに80%の再生可能エネルギーを目指しているが、実質は100%が可能で、雇用が100万人になる見込みなどを書いている。自然エネルギーに転換する欧州(オーストラリア、イタリア、スウェーデン)の動きを取材、アメリカ、中南米の動きにもめを配り、今自然エネルギーに舵を切らないと、ホントに日本は、世界から取り残されるだろうということが解るようになっている。

    高知県梼原(ゆすはら)町の赤字財政からの転換を自然エネルギーに掛けた取り組み(一度行ってみたい)も取材している。

    もちろん伊藤さんは、マスコミに猛省を促している。しかしマスコミの中にいて、市民にも訴える所が他の人とは違う。

    メディア批判をよく耳にするが、メディアはその時代の民度を象徴する。ジャーナリストは神様ではない。メディアに期待するなら、メディアを市民の側に引き寄せる力が必要だ。メディアを変えたいと思うならば、市民が市民運動を盛り上げて社論を変えるのが一番の近道だ。(114p)

    現に9.19脱原発集会で6万人集まった時に新聞やメディアはいっせいに大きく取り上げたと、伊藤さんは言う。(←果たしてそうか、という疑義は私にまだあるが)ただ、今回の20万人集会にいたって、初めてマスコミは取り上げだした。その感度が正常なのかどうかと言うと異常だとは思う。しかし、結果的には伊藤さんの言うとおり、世論の声が大きくなれば、マスコミは取り上げるのではある。

    最後の章は水俣市の取材だった。最悪の公害都市から最高の環境都市へ、そこにはこの50年の多くのジレンマ、地域差別との闘いが書かれていて、この後の福島への提言にもなっている。

    あとがきに書く。
    「サザエさん」の漫画に、セントラルヒーティングで完全に電化した家が登場したのは1968年だ。その家の主婦は大いばりだが、カーテンの陰では一人寂しく食事するおばあさんが「昔のほうがずっとあったかだった」とこぼす。(略)経済や生活の発展は、人間を幸福にするために考えられたのではないか。逆に人を不幸にするのだったら、いったい何のための発展だろうか。(155p)

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1949年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業。1974年、朝日新聞に入社。サンパウロ支局長、バルセロナ支局長、ロサンゼルス支局長などを歴任、40年にわたり主に国際報道の分野で取材を続けた。2014年に朝日新聞退職後も、フリーのジャーナリストとして各国の取材を続け、精力的に執筆と講演を行っている。「コスタリカ平和の会」共同代表。「九条の会」世話人。

大学時代、キューバで半年間、サトウキビ刈り国際ボランティアとして汗を流した。4年生の夏休みに朝日新聞社から内定を得るが、産経新聞社が進めていた冒険企画に応募。スペイン語とルーマニア語の知識があったことから「東大ジプシー調査探検隊」を結成して東欧へと旅立った。東欧では「日本のジプシー」を名乗り、現地のジプシーと交わって暮らした。日本初のジプシー語辞書を作り、帰国後は新聞にルポを連載、ジプシーを扱った映画『ガッジョ・ディーロ』ではジプシー語の翻訳を担当した。ジプシー調査でジャーナリズムの醍醐味を知り、1974年、再度入社試験を受けて朝日新聞社に入社した。

朝日新聞時代も、学生時代の突貫精神そのままに、市街戦の銃弾をかいくぐりながら、そしてときには会社とも闘いながら取材を続けた。フリーになった現在も変わらない記者魂を、本書の随所で感じることができる。

「2019年 『世界を変えた勇気 自由と抵抗51の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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