探訪村上春樹の世界 東京編 1968-1997 (探訪シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784916090973

作品紹介・あらすじ

デビュー作『風の歌を聴け』から『ねじまき鳥クロニクル』まで。作品・作家ゆかりの地を歩き、写真と文で村上ワールドを読み解く、ファン垂涎の貴重なフォト・グラフィティ。ベストセラー『ノルウェイの森』を生んだ学生寮やジャズの店をはじめ、「あの空間/あの時代」がいま鮮烈に甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 村上作品に関する本は何冊か読んできましたが、この本は、理論や読解を目的としたものではなく、どちらかというと写真集。
    彼の半生に深くかかわった土地や建物のモノクロ写真が、簡単な説明とともに紹介されています。

    1968年から1997年までの日本の様相も、合わせて掲載されています。

    大学生時代、どうも彼の作品は、先生方が熱狂するほどに心に響かないと思い、それなりに悩んでいましたが、それは、彼が描く時代を生きたかそうでないかで理解と共感への線が引かれたようだと、この本を読んで気付きました。

    学生運動の時代の写真の激しさに圧倒されます。
    そのエポックを知らないため、60年代の社会背景が文中で語られても、自分の記憶を思い返すことができず、話に乗り切れないままになっています。
    当時の写真が多数掲載されており、こういう状況だったのかと初めて知りました。
    タテカンの意味すら知らず、写真から初めて理解できたほどです。

    アメリカのムーブメントに呼応したため、日本にもヒッピーはおり、大学のバリケードストライキもあちこちで行われていたとか。
    そんなカオスの時代にいながら、学生運動に背を向け、孤独な世界へと向かっていった彼。
    「タフでハードな時代」は村上にとって生きにく、学生寮をたった半年で退寮しています。
    そして、その時代の空気を封じ込めた初期三部作が生まれたのです。

    初期三部作と『ノルウェイの森』が一枚にまとめられていた年表は、とてもわかりやすい資料でした。
    この時代の話は、どれも青春時代の喪失の痛みを記したものとなっています。
    その後は、80年代を舞台とした作品が増えていきます。

    紹介されているのは、初期三部作や『ノルウェイの森』など、『ねじまき鳥』までです。
    『ピンボール』の直子は『ノルウェイ』の直子と同一人物なのか、気になりながら読みました。

    ピンボールマシンへの偏愛ぶりが、文章から伺えますが、実際春樹本人も、マシンを所有していたとのこと。
    バーを持っていたので、そこに置いていたのだろうと思いますが、作品の重要なアイコンとなって登場しています。

    『羊を巡る冒険』に登場し、鼠を殺した星型の斑紋付き羊の正体が何なのか語られないままのため、モヤモヤしていましたが、それはわが国の近代を突き動かし絶対化を目指してきた観念でもあるとこの本には載っていて、明解さにクラッときました。

    その後の80年代作品では、暴力が作品を支える要素の一つとなり、「コミットメント」というキーワードが登場するようになったため、初期作品とは一線を画しているものだそう。
    1998年以降の作品を元にした写真集もあるのでしょうか。
    これまで読んだ村上作品の解説本は、どれもわかりづらく、よくわからないままでしたが、写真メインのこの本は、コンパクトな作品紹介ながら、簡潔な解説もなされている点が、わかりやすく的確でした。

  • 村上春樹が作家になる以前の和敬塾時代から「ねじまき鳥クロニクル」に至るまでの軌跡がモノクロ写真とともに読み進められる。
    我々の世代が経験したことのない60年代後半から70年代前半にかけての学園闘争の時代についてもおおまかにわかりやすく説明されていたので、当時の雰囲気を感じられる。

  • きなよ、案内してあげる。

  • ハルキストとまではいきませんが・・・

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