ユダの福音書を追え

  • 日経ナショナル ジオグラフィック社/日経BP出版センター
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784931450608

作品紹介・あらすじ

イスカリオテのユダ。銀貨30枚で師イエスを裏切ったこの男は、古くから忌み嫌われてきた。だが歴史は、ユダをめぐって別の物語があったことを伝えている。ナショナルジオグラフィック協会の支援でこのほど修復・解読された『ユダの福音書』によれば、ユダは裏切り者ではなく、イエスが深く信頼していた使徒だったという。正統派の教義とは相容れないこの『ユダの福音書』は"異端"の烙印を押され、歴史から葬り去られた。だが1700年後、失われたはずのこの福音書のコプト語写本がエジプトの砂漠で見つかった。この写本はそこから人々の思惑に翻弄され、数奇な運命をたどった末に、朽ち果てそうになる。本書は、この『ユダの福音書』が、消失の危機からよみがえり、苦心の修復・解読を経て、その驚くべき内容が明らかになるまでを、入念な取材でたどった渾身のノンフィクションである。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史に「裏切り者」は付き物といえますが、中でも銀貨30枚で「イエス」を裏切った「イスカリオテのユダ」の話しは有名です。
    この本はその「ユダ」の側から書かれた福音書の発見から復元、解読までのドキュメントです。

    古美術商の世界が評論家や美術、歴史の先生などの表の世界とは打って変わって、盗掘と騙し合いから成り立っていることに先ず驚かされました。

  • 翻訳本と感じさせない、とても素晴らしい訳だと思う。
    ただ、「ユダによる福音書」が書かれているのかと思いきや、「ユダによる福音書」発見されてから、翻訳に至るまでの経緯について書かれたものだった!

    ちょっと夕刊フジ的な要素あり…

  • p

  • まさに囚人のジレンマ。。

  • ユダの福音書の内容自体にはほとんど触れていないが、その発掘過程に関するエピソードが豊富。文化財の盗難や密売買に関する話題は珍しいのではないかと思う。 四福音書の中で年代を追うにつれ描写が変化することは知っていたが、ユダの死やそれがもたらした影響に関して書かれていたのが良かった。 ただ、もうちょっとユダの福音書の内容とそれが現在あるキリスト教世界への影響としてどのようなものが考えられるかなど物足りないと感じる視点の部分も多かったのはまだ研究が始まったばかりだからなのだろうか。

  • (2014.10.23読了)(2012.10.25購入)
    「新約聖書 福音書」塚本虎二訳、岩波文庫、を読んだので、ついでに関連する本も読んでしまおうと取り掛かりました。
    新約聖書には、マルコ、マタイ、ルカ、ヨハネ、の四つの福音書が収録されています。いずれもイエス・キリストの生涯を綴ったものです。イエスが洗礼者ヨハネによって洗礼を受けるところから始まるものやイエスの誕生前から始まるものもあって、始まりはさまざまですが、イエスが磔刑によって死亡し、復活を遂げるところで終わるのは、ほぼ共通しています。
    キリスト教の初期においては、伝道のために書かれた色んな文書があり、新約聖書には、収録されなかったものが多数あるようです。
    「ユダの福音書」もその中の一つで、その存在をほのめかいしている文書が残っているのですが、最近まで、「ユダの福音書」の現物は見つかっていませんでした。
    この本は、「ユダの福音書」が発見され、世に出るまでのいきさつを関係者に取材して明らかにしようとしたものです。
    1970年代に、エジプトの古代に墓として使われていた洞窟で、白い石灰岩の箱に入れられた状態のパピルス文書が見つかりました。文書は三つあったようです。何語で、何が書かれているものかは、わかりませんでした。
    正式の発掘隊が発掘したものではないので、闇ルートで取引が行われ、ハンナ・アサビルというエジプトの古美術商が入手します。
    売るまえに専門家にどのような文書なのか見てもらいます。写真を撮ってはダメ、筆記してもダメという条件でした。
    一つは、幾何学に関するもの、ひとつは、キリスト教に関するもの、コプト語で書かれていました。
    買い手はなかなか現れず、盗難にあったりもしています。
    研究機関での買い取りは、出どこが明確ではないため、実現しませんでした。盗品とか不正に持ち出されたものなら、返さないといけないので。
    最終的に売却された時には、保管状態が悪く、崩壊状態でした。復元作業が行われましたが、復元できたのは、全体の三分の二ということです。
    流転の間に、一部抜き取られたりもしているようです。
    ユダの福音書の詳しい内容については、この本には書かれていませんので、別の本に当たるしかありません。
    ただ、ユダがイエスを裏切ったのは、イエスに依頼されたからと書いてあるようです。
    四大福音書にも、神の意志が実現されるためにイエスは一度死んで復活しなければならない、と書いてあったように記憶しているので、そんなに驚く内容ではないように思うのですが。

    【目次】
    はじめに
    本書の登場人物
    プロローグ
    第一章 砂漠の墓
    第二章 大金を求めて
    第三章 イエスを裏切る 
    第四章 大物の古美術商たち
    第五章 窃盗事件
    第六章 最初の調査
    第七章 ナグ・ハマディの栄光
    第八章 煉獄
    第九章 学者たちの追跡
    第一〇章 米国にいた「ユダ」
    第一一章 ガリアの異端紛糾者
    第一二章 フェリーニとの対立
    第一三章 風化
    第一四章 暴露
    第一五章 パピルスのパズル
    第一六章 『ユダの福音書』
    エピローグ

    ●古美術商(68頁)
    フリーダにとって驚きだったのは、カイロで有能といわれる古美術商たちが、誰一人として古美術品に関する書籍や文献をそろえておらず、考古学的な専門知識も持ちあわせていなかったことだ。品物が何であれ、美術書などでそれがどんなもので、どのくらいの価値があるかを調べようとする者はなかった。カイロのエジプト考古学博物館を訪れたことのある古美術商はいないといってもよかった。
    ●ユダ(81頁)
    キリスト教の歴史が始まってからずっと、キリスト教徒は、イエスはユダヤ人のせいで殺されたと非難し、ユダはイエスを裏切ったユダヤ人の象徴であった。
    ●イスカリオテ(82頁)
    学者のあいだでは、イスカリオテという名はケリヨト村の出身であることを示す、という見解でほぼ一致している。ヘブライ語ではishは「人」に相当するので、Ish-Keriotは「カリオテ出身の人」という意味だ。
    ●ロゼッタ・ストーン(106頁)
    ナポレオン軍が1799年にエジプトで発見した、有名なロゼッタ・ストーンもその一つだ。その後ナポレオンは英国に敗れ、ロゼッタ・ストーンは1801年のアレクサンドリア条約で英国の所有物となった。それ以来、ロゼッタ・ストーンは大英博物館に保管されている。エジプト政府は何度となく返還を求めているが、英国政府と大英博物館は頑として拒否している。
    ●古文書(137頁)
    基本的には古美術商は三つの分野に分けられる。古代芸術を専門とするグループ、コインを専門とするグループ、そして古文書の持つ魅力と魔力に引き付けられている比較的小さいグループである。古文書の場合は、他の分野に比べてあまり金にならないと見なされている。
    ●エイレナイオス(257頁)
    エイレナイオスの使命は、ガリア地方のみならず、世界各地に出現していたキリスト教集団に、正当な神学理論の枠組みを与えることだった。エイレナイオスはその使命を立派に果たした。彼が基礎を築いたキリスト教教義は、140年後の325年、ニカイア公会議で正式に採用された。
    ●『ユダの福音書』(354頁)
    『ユダの福音書』は、イエスの神性を信じる作者が、まず自分の民族を、そして人類全体を救済するためにやって来た一人の教師が官憲に引き渡され、死を経て永遠の命にたどり着いたという伝承に基づき語ったものであり、その意味において「キリスト教」の書である。
    ●ナグ・ハマディ文書(382頁)
    翻訳にあたった研究者によると、この写本に記された神学概念や文章構成は、ナグ・ハマディ文書にかなり似ているという。ナグ・ハマディ文書は、やはりキリスト教初期に書かれたグノーシス主義関係の文書で、1940年代にエジプトで発見された。

    ☆関連図書(既読)
    「新約聖書福音書」塚本虎二訳、岩波文庫、1963.09.16
    「聖書物語」山形孝夫著、岩波ジュニア新書、1982.12.17
    「新約聖書入門」三浦綾子著、光文社文庫、1984.11.20
    「新約聖書を知っていますか」阿刀田高著、新潮文庫、1996.12.01
    「ナツェラットの男」山浦玄嗣著、ぷねうま舎、2013.07.24
    「死海文書の封印を解く」ベン・ソロモン著、KAWADE夢新書、1998.05.01
    「はじめての死海写本」土岐健治著、講談社現代新書、2003.11.20
    (2014年11月3日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    イスカリオテのユダ。銀貨30枚で師イエスを裏切ったこの男は、古くから忌み嫌われてきた。だが歴史は、ユダをめぐって別の物語があったことを伝えている。ナショナルジオグラフィック協会の支援でこのほど修復・解読された『ユダの福音書』によれば、ユダは裏切り者ではなく、イエスが深く信頼していた使徒だったという。正統派の教義とは相容れないこの『ユダの福音書』は“異端”の烙印を押され、歴史から葬り去られた。だが1700年後、失われたはずのこの福音書のコプト語写本がエジプトの砂漠で見つかった。この写本はそこから人々の思惑に翻弄され、数奇な運命をたどった末に、朽ち果てそうになる。本書は、この『ユダの福音書』が、消失の危機からよみがえり、苦心の修復・解読を経て、その驚くべき内容が明らかになるまでを、入念な取材でたどった渾身のノンフィクションである。

  • [ 内容 ]
    イスカリオテのユダ。
    銀貨30枚で師イエスを裏切ったこの男は、古くから忌み嫌われてきた。
    だが歴史は、ユダをめぐって別の物語があったことを伝えている。
    ナショナルジオグラフィック協会の支援でこのほど修復・解読された『ユダの福音書』によれば、ユダは裏切り者ではなく、イエスが深く信頼していた使徒だったという。
    正統派の教義とは相容れないこの『ユダの福音書』は“異端”の烙印を押され、歴史から葬り去られた。
    だが1700年後、失われたはずのこの福音書のコプト語写本がエジプトの砂漠で見つかった。
    この写本はそこから人々の思惑に翻弄され、数奇な運命をたどった末に、朽ち果てそうになる。
    本書は、この『ユダの福音書』が、消失の危機からよみがえり、苦心の修復・解読を経て、その驚くべき内容が明らかになるまでを、入念な取材でたどった渾身のノンフィクションである。

    [ 目次 ]
    砂漠の墓
    大金を求めて
    イエスを裏切る
    大物の古美術商たち
    窃盗事件
    最初の調査
    ナグ・ハマディの栄光
    煉獄
    学者たちの追跡
    米国にいた「ユダ」
    ガリアの異端紛糾者
    フェリーニとの対立
    風化
    暴露
    パピルスのパズル
    『ユダの福音書』

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 本書を最初に見た時「ユダの福音書?」と不思議に思い読み始め。
    肝心のユダの福音書の内容よりも考古学遺跡のまわりに蠢く魑魅魍魎の話がメインでしょうか。
    ユダの福音書の保存状況が悪くなってしまったのがなんとも残念です...。

  • 「ユダの福音書」を中心にして行方や関わる人々の事を書いてあります。
    エンタメ作品として読める程面白かったです。
    「ユダの福音書」本編は含まれません。

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