キネマの玉手箱

著者 :
  • ユニコ舎
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本棚登録 : 34
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784991136801

感想・レビュー・書評

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  • 読みたいリストに入れたのはいつの事だったのかと追ってみると発売直後のタイミングだったようだ。電子化されたら買いやすいのになぁ…と願いつつもなかなか達成されない中、コロナ渦はまさかの三年目に突入。で、その後ようやく達成された訪日時、いろんな優先度がもつれ本作の探索などは随分と下位の方だったはずなのに、それはふと突然目の前に現れた。しかもそれは本屋ではなく博物館だったというのが不思議なこと。

    ここ数回の一時帰国期間中には必ずその上映スケジュールを確認していた京都文博、その館内に書籍コーナーがあったことには気づいていたが、そこの映画関連書棚が異様に充実していたことには認識できていなかった。で、気づいてしまったのである、このたび。あっさりと本作の表紙が目に留まり、気がつくとその他にも気になるタイトルがいくつも鎮座されていることを認識するや、円安を味方に爆買している自分がいた。その数日後、想定外の冊数をどう持って帰るかで悩むことにならざるを得なかったのは言うまでもなく…。

    今思えば2015年のJapan Societyでの回顧上映企画に奥さん、娘さんと共に訪米された際にその場に同席させてもらえた事は非常にありがたいことであった。その頃の自分の大林通度はズブの素人状態で、せいぜい「転校生」(1982) の鑑賞歴があったぐらい。それが同会場で「野のなななのか」(2014) を鑑賞して度肝を抜かれ、さらに同時期に「House ハウス」(1977) も劇場で鑑賞させてもらっていたがゆえその上映会にはかなりの意気込みをもって挑ませてもらっていた記憶が蘇る。

    本書の序章は監督ご本人の口で語られる病巣発見時のいきさつから始まる。そのためつい「そうか…闘病記なのか…」とうなだれて読み始めることになるのだが、数章進む内に監督は見事にその心配をくつがえしてくれる。考えてもみればこれを書いたときの監督はとてつもなく晴れ晴れとした気持ちで筆を進めていたのだから、そうした陰鬱な雲が漂うはずもなかったのだということは読みすすめる内にすぐに明らかになってくる。

    幸いこの過去10年ぐらいの劇場通いの習慣のおかげで監督が言及する作品の多くに自身でもうんうんとうなずきながら読了することができた。とはいえ自分の経験は邦画に偏重していることもあり、監督と対等に語り合えるためにはまだまだ映画という文化そのものを真摯に愛して正面からぶつかってゆかねばならないと再認識されるのであった。

    精進あるのみ…である。

  •  尾道3部作は、転校生(1982)、時をかける少女(1983)、さびしんぼう(1985)。尾道に生まれた映画監督、大林宣彦(1938.1.9~2020.4.10、享年82)著「キネマの玉手箱」、2020.4.25発行。2016.8に肺癌(ステージ4)が判明、余命6ヶ月と。治療・闘病しながら、2020年公開「海辺の映画館 キネマの玉手箱」に向けての思いと映画人生を語った自伝的エッセイ。


  • NHKの最後の講義 映像作家 大林宣彦
    は、鮮烈な印象が残っている。
    癌で余命半年を宣言された中での講義であった。

    生の言葉で話す内容は、心に響く。
    特に彼が母親の話をするところが、印象深かった。

    その経験は、のちの人生に多大な影響を与えている事が、感じ取れた。

    本書は、追悼本ではなく、生前に校了し、印刷の工程の最中、4月10日に亡くなっている。

    本書の最後の方で、4K、8Kについて語っている。新しい技術にも興味を示している。

    英語で話す時は、cameraは、キャメラと発音する。
    日本語の会話の中でも、カメラと言わずキャメラと表現するのは、映画人のこだわりなのだろう。

    合掌

  • 是枝裕和監督のこと、山田洋次監督と一緒に胴上げしてあげたいって言っていたんだね。
    それを受けてバトンを渡されたとあとがきに言葉を添えた是枝監督。
    ほんとに一生涯映画監督であり続けた人だった。
    尾美としのりは大林監督には欠かせない俳優。
    勝った時に負けた顔ができ、負けた時に勝った顔ができる表現力を持った俳優で監督のフィロソフィー(ものの見方、考え方、この言葉よくでてくる)にぴったり出そう。
    知世ちゃんのこと、貴子ちゃんのこと(監督がこう呼んでいるので)微笑ましく読む。
    ジョン・ウェインは失恋ができるよく似合う?
    小津安二郎と原節子は精神的に結婚してた。
    ”晩春”のラストシーン、号泣の指示ではなく(小津さんの心までは演じられないと言って)と静な名シーンになったとか。
    死ぬまで想い続けたのはゲイル・ラッセルだったと言われてることも初めて知った。
    裏話的なこともいっぱい描かれていて読んでいて楽しかった。
    いつの頃からか、大林監督の新作を観なくなってしまっていたけど、また観てみよう。

  • 映画ファンには面白い

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著者プロフィール

映画作家

「2018年 『大林宣彦 戦争などいらない‐未来を紡ぐ映画を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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