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- / ISBN・EAN: 0074646585122
感想・レビュー・書評
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ビートルズの登場、そしてディランに代表される歌詞の社会性・芸術性により、職業ソングライターによる甘いポップソングが劣勢となっていった60年代中期~後期。
キャロルとジェリーのコンビにも、そうした状況は及び、キャロルの、ソングライターとしての活動は徐々に減っていきます。
また、1968年に離婚したことで、公私ともにパートナーであったジェリーとの関係は、一旦の終止符が打たれたのです。
その頃、キャロルが交際していたのが、チャールズ・ラーキーです。
彼は、キャロルとジェリーが設立したレーベル、トゥモロウ・レコードからデビューしたバンド、ミドル・クラスのベーシストで、当時、ロサンゼルス郊外で、キャロルと彼女の2人の娘とともに暮らしていました。
さて、キャロルは、彼から、ジェイムス・テイラーがフロントマンをつとめていたバンド、フライング・マシーンを紹介されます。
このバンドのギタリストを務めていたのが、ダニー"クーチ"コーチマーで、やがて、キャロル、チャールズは、ダニーを誘い、3人はバンド"ザ・シティ"を結成、制作されたのが、本作"Now That Everything's Been Said"です。
レコーディングは、ハリウッドのサウンド・レコーダーズ・スタジオ、メンバーは、3人とセッション・ドラマーのジム・ゴードンを中心に行われました。
アルバムは、ジャズワルツ風のリズムに乗って、歌われる"Snow Queen"からスタート。
男たちは弄ばれてしまうだけ。そんな"雪の女王"という名をつけられた女性にまつわる曲です。
しかし、この"雪の(ように冷酷な?)女王"というのが、ジェリー・ゴフィンからキャロルへのメッセージだとしたら・・・メロディの楽しさとは裏腹に、深い歌詞です(^^;)
ロジャー・ニコルスやアソシエイションがカヴァーしています。
ピアノを基調とし、言葉の連続する"I Wasn't Born To Follow"は、聖なる自然をくぐりぬけ、身も心も洗い清められた私は、"人に従うために生まれてきたんじゃない"と思えるでしょう・・といった歌詞が明るく歌われます。
一番最後、フェイド・アウトしながら聴けるギターのフレーズまで、全てメロディアスな名曲です。
この曲は、バーズがカヴァー。
イントロ無しに、歌いだす"Now That Everything's Been Said"は、掛け合いのようなヴォーカル、ジム・ゴードンの刻む弾んだリズム、そしてラストでのピアノのメロディが残す余韻がなんとも味わい深い曲です。
歌詞は、トム・スターンによるもの。
ブライアン・ウィルソンがプロデュースした、当時の妻・マリリンとその妹ダイアンによるスプリングがカヴァーしています。
"Paradise Alley"で歌詞を書いているデヴィッド・パーマーも、チャールズ同様、ミドル・クラスだった人物です。
"Man Without A Dream"では、ダニーがメイン・ヴォーカルを担当しており、"音楽に熱中し、自分の目標や夢を達成しようと努力する代わりに、本当の愛を捨ててしまった"といった内容の歌詞を歌いますが、この歌詞、いつごろ書かれたんでしょう?まるで離婚してしまったジェリー・ゴフィンの告白のようです。
モンキーズがカヴァー。
一転して、明るい"Victim Of Circumstance"では、"私は、周囲の状況の犠牲者なのよっ!"と歌うキャロル・キング。
なんだか、今度は、前曲にキャロルが応えているような感覚を覚えます。
歌詞は、デヴィッド・パーマー。
B面スタートの"Why Are You Leaving"は、別離への悲しみを歌っています。
歌詞は、トム・スターン。
"Lady"は、作品中でも、特に素晴らしい曲だと思います。
語数が多く、語り風になっている出だしや、"How dose it feels?"という歌詞に、Dylanからの影響を大きく受けていたというジェリーらしさを感じたり(笑)
この曲での、ダニーのギターは、切なさを感じさせる実に素晴らしいものです。
カントリー的な牧歌調のコーラスから始まり、それまでの曲から、雰囲気が変わる"Sweet Home"。
ここでは、(コーラス以外では)前半ダニーが、後半キャロルがメイン・ヴォーカルを担当しています。
コーラスでは、やはり、キャロルの声が一番目立ちます。
この曲のみ、キャロルの曲ではありません(M.Allison作曲)
"I Don't Believe It"は、前半は女性側からの視点、後半は男性側の視点から歌われており、ここでも、キャロルとダニーがヴォーカルを分け合っています。
"That Old Sweet Roll (Hi-De-Ho)"は、ダスティ・スプリングフィールド、ブラッド・スウェット・ティアーズがカヴァー。
ラストの"All My Time"は、1つの時が終わり、新たな一歩を踏み出そうとするキャロルの決意が感じられる作品です。
ソングライター時代から親交があったアルドン・ミュージックのルー・アドラーのプロデュースで、彼の設立したオード・レーベルからリリースされた本作は、実質的には、キャロルのソロ作品とも言える内容ですが、シンガーとしては不発だった無名時代への抵抗からか、自らの名前を全面に出していくことには抵抗があったようです。
また、リリース当時、オードのディストリビューションが変更した関係で、あまり市場に出回らなかったため、"幻の名盤"的な扱いを受けていました。
しかし、最もこの作品を表しているのは、内ジャケットにも寄せられているダニー"クーチ"コーチマーのコメントの一節、"「Tapestry」の種はここで蒔かれた"というコメントでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
M10「i don't believe it」
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1.Snow Queen
3.Now That Everything's Been Said
が好きです。ライナーにも書いてあったけど、キャロル・キングの豊かな才能を感じられます。