ファンタスティック・プラネット [DVD]

監督 : ルネ・ラルー 
  • パイオニアLDC
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4510242163600

感想・レビュー・書評

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  • 原題はフランス語で「La Planète sauvage」(野生の惑星)。
    作中では主人公テール(たちオム族<ドラーグ族@惑星イガム)が「目指す星」。
    英題の「Fantastic Planet」だと惑星イガムを指すと思えてしまうので、根本的にニュアンスが異なる、と思う。
    何よりも、クロード・レヴィ=ストロース「野生の思考」(La Pensée sauvage)(1962)からの引用である可能性が見えただけでも、原題に気づけてよかった。
    実際オム族たちはブリコラージュ式の作法を身に着けているし。

    ディスクを手に入れて何年も敬遠していたのは、支離滅裂で高尚なアートだろうという先入観があったから。
    が、今回見てみたら、意想外にかっちりしたストーリー。
    序盤は衝撃的なイメージだが、中盤以降、明らかにナチス、奴隷制、東西冷戦、帝国主義など人類史の負の側面を描いた上で、わかりやすいくらい被抑圧者による革命の話に展開する。

    そりゃ宮崎駿が「出発点」で取り上げるだけあるわ。
    本作は1973年。
    映画「風の谷のナウシカ」は1982年。
    が、本作が日本で公開されるのは1985年なのだ。
    ん? 齟齬がある。あるいは輸入盤で見るとか、特殊な上映経路があったのかしらん。

    駿に影響を与えた! という惹句が目立つが、個人的には諸星大二郎を連想する場面が多かった。
    諸星大二郎を信用できるのは、「夢の木の下で」とか「遠い国から」(とか「カオカオ様」)のような寂寥そのもののような絵を描いた人だから、と思っていたが、むしろ「夢の木の下で」は1998年なので、本作からの影響大あり。
    影響関係は単純な矢印では整理できまいが、ひょっとしたらヴォイニッチ手稿や、中世の博物図鑑に、源を求めるべきなのかも。ヒエロニムス・ボスとか。
    いまふうにいえばキモカワ。
    あとポップカルチャーで連想したものを列挙したら、

    ・寺山修司(1935-1983)はどう感じたんだろう。
    ・手塚治虫(1928-1989)はどう嫉妬したんだろう。
    ・水木しげる(1922-2015)は異様な草木の描写を好んだはず。というか引用魔だから例のスクラップブックに入っていたんじゃないか。
    ・藤子・F・不二雄(1933-1996)は「ミノタウロスの皿」を描くときに参考にしていたのか? と思って調べてみたら、1969年発表なので、違う。いやドンジャラ村のホイとか、ジブリ「借りぐらしのアリエッティ」とか影響関係見れば延々なのだろう。Fを思い出したのはミノタウロス意外に、のび太が未来に行ったら無料で泡を吐きかけられて未来っぽい服に着替えさせられる無人の街という描写があったのが、本作の「服屋」? から思い出されたからだ。
    ・エドワード・ゴーリー(1925-2000)への影響ってどうなんだろう。
    ・富野由悠季が「ガンダムF91」で描いた「バグ」(人間(ビルギット)だけを殺す機械かよ!)。
    ・伊藤潤二は、絶対引用してるだろ。あの顔と眼。
    ・萩尾望都は、見て、どう思ったんだろうか。生殖関係。
    ・PCゲーム「ゆめにっき」(2004-)作者ききやま、への影響やいかに。
    ・異世界生物の理屈という点で、つくしあきひと「メイドインアビス」とかも。

    いろいろ書いたけれど、
    単純に自分が虫を殺すとき、虫の視点ってこうなのかなとか、
    脳にジャックインして学習するって、絵面で表現すればこういう道具を使うんだなとか、
    眉毛から上のオデコのあたりに学習内容が描き込まれるイメージなんだなとか、
    「過去当時の未来描写」って面白い。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      knkt09222さん
      > 駿「出発点」に
      そうなんだ、読んでみなきゃ。。。

      昨日、帰り道で色々考えていて、字幕どうだったんだろう...
      knkt09222さん
      > 駿「出発点」に
      そうなんだ、読んでみなきゃ。。。

      昨日、帰り道で色々考えていて、字幕どうだったんだろう?とか(話が判らなくて往生した記憶はないのですが)。タイトルが「フェンタスティック・プラネット」なのはアメリカで販売されたフィルムだったんだろう。じゃぁ画面も差し替わっていた?(判らない)等々、、、

      > 仮想敵に見做したのでしょうか。
      それ面白いかも。ご自身が面白いと思ったモノは何でも取り込まれる方ですから、ひょっとしたら何かバクシの痕跡があるかも。。。
      2023/10/24
    • knkt09222さん
      45年前の記憶を掘り起こしてくださり、ありがとうございます。
      映画の内容そのものだけでなく、観客の受容史、作家への影響など、興味は尽きませ...
      45年前の記憶を掘り起こしてくださり、ありがとうございます。
      映画の内容そのものだけでなく、観客の受容史、作家への影響など、興味は尽きません。
      駿への「ファンタスティック・プラネット」の影響は顕著ですが、当人も無意識な取り入れや、隠しておきたい影響など、を調べるための一材料になりそうです。
      2023/10/24
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      knkt09222さん
      > 観客の受容史、作家への影響など
      何か判りましたら、是非ご披露願いますᓚᘏᗢ
      knkt09222さん
      > 観客の受容史、作家への影響など
      何か判りましたら、是非ご披露願いますᓚᘏᗢ
      2023/10/27
  • 第26回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作品。地球ではないどこかの惑星では巨人ドラーグ族が人類オムをペットとして飼っていた。しかし、虐げられていたオムたちは徐々に知恵をつけ、ドラーグ族に反旗を翻す。

    1973年、フランス・チェコスロバキア合作。が、日本での公開は1985年。このアニメーション、世界観は今観てもまったく古びていない。世界がきな臭い今、再評価されても良いと思う。

  • 不気味でシュールな世界観に圧倒されるフランスのアニメ映画。普通に生きてたらこんなセンスは身につかないな、どうかしてるなと思います。(いい意味で)

    青い巨人の世界に住む人間達は飼育されたり駆除されたり虫のような扱いをされています。そんな中で巨人の学習装置を盗み、勉強し知識を得た人間達は自分より10倍以上大きい巨人達に反逆しようと試みます。

    異種と共存しないと破滅してしまうし、大きいものが優れていると勘違いしそうになるけど発展していかなければ他の生物に追い抜かれていってしまうし、今の状況が当たり前ではないことを警告されたような気がします。

    争いのシーンでは今の世界情勢と重なるところもあり色々と考えさせられました。ただ、耐性ないとトラウマになる不気味さなのでうっかり人に勧めると多分心配されます。見たい人だけが見る映画ですね。

  • 星の景色と色彩と、ヒエロニムス・ボスみたいな動植物が素敵でした。
    シュールってこういう事なのかな。。ちょっと火の鳥宇宙編っぽさも感じつつ。
    ニタニタ笑ってる木みたいなやつに掴まれて落とされてたくさん散らかってる生物と、いつも内臓的なの吐いてるの…?と思いつつ服作ってくれる生物がかわいいです。他のも絶妙にグロくて良い。

    巨大な青い人たちが小さい人間っぽい人たちを支配してるのかと思ってたらそうでもなく、なんかよく分からないのがたくさん居るなぁ…って感覚なのかな。虫みたいな。
    瞑想って何だろ?って思ってたら全く高尚じゃなかったの笑いました。そりゃたくさん瞑想するだろうね。
    ラストの急展開にびっくりでした。
    理解は追い付いてないですが好きな世界です。

  • ユニークな作品。おもしろい。巨人族の住む惑星の植物? 青い巨人、の造形がおもしろい。巨人と小さな人間を登場し現代社会の勢力争いを描いているともとれる。最後はSFらしいオチ。

    不思議な植物?のある荒野を赤子を抱いて逃げる人間の女性。小山に登ると大きな手に何度もはじかれ力尽きてしまう。この大きな手はそれだけの物体か、と思ったら、なんと巨大な青いヒトの形をした・・巨人の子供だった。人間はアリのように小さく、残った赤ん坊は巨人の女の子のペットとして飼われる。巨人の子供たちは人間をペットにしていた。

    増殖する人間に巨人は敵対し、ついに人間撲滅作戦を実行。この武器がユニーク。音がしない。ぺろっとやってきてガスタンクを播く。

    物理的な大きさの違いから受ける衝撃が強い。このプラネットでは人間はアリ。

    「猿の惑星」みたいな感じも。巨人、アリのような人間、設定を別にして人間の悪行を皮肉っているSFなのかも。小松左京の小説で、題名は忘れてしまったが、ある日突然空から巨大な動物がやってきて人間は右往左往。何年かたちその飼い主が宇宙からやってきて懐かしそうに再会する、というのがあった。南極のタロとジロに触発され書いたものだというが、大きさの違いで、人間がアリになったら? という世界。

    原作:「オム族がいっぱい」ステファン・ウルStefan Wul 1922-

    ウィキペディアを翻訳かけてみた
    Stefan Wul はフランスのSF作家Pierre Pairault( 1922.3.27 – 2003.11.26)のペンネーム。本業は歯科外科医。ペアノーは1989年に歯科手術を引退したが、フランスのSFシーンで活躍し続けた。

    作品一覧
    ・リトゥール・ア・ゼロ(バック・トゥ・ゼロ、1956)
    ・ニオーク(1957)
    ・レイヨンはシダルを注ぐ(シダルのための光線, 1957)
    ・ラ・ピュール・ゲアンテ(巨大恐怖、1957年)
    ○オム・アン・セリー (オムズ・バイ・ザ・ダース、1957年、1973年にラ・プラネート・ソヴァージュとして撮影 監督ルネ・ラルー 英語題ファンタスティック・プラネット)
    ・ル・テンプル・デュ・パッセ(過去の神殿、1957年)
    ○オルフェリン・ド・ペルディデ(ペルディデの孤児、1958年、1982年にレ・マエトル・デュ・テンプスとして撮影 監督ルネ・ラルー)
    ・ラ・モート・ヴィヴァンテ(生き死、1958年)
    ・ピエージュ・シュル・ザルカス(サルカスの罠、 1958年)
    ・末語 1 (1959)
    ・オデッセ・スー・コントロル(オデッセイ・アンダー・コントロール、1959)
    ・ヌー (1977)

    1973フランス、チェコスロバキア
    2021.4.29BSプレミアム

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      bukuroseさん
      ピエール・ペアゴーって初めて聞く名です。昔聞いた時は著名な方の変名とのコトでしたが、本国では名が通っているのかな?
      そ...
      bukuroseさん
      ピエール・ペアゴーって初めて聞く名です。昔聞いた時は著名な方の変名とのコトでしたが、本国では名が通っているのかな?
      そう言えばルネ・ラルーのもう一本「時の支配者」も、ステファン・ウルが原作だった筈。メビウスがデザインしているコトで有名な作品ですが、此方は別の意味でウルっとなります(洒落に非ず)。
      2021/05/12
    • bukuroseさん
      猫丸さん
      またまた初耳、メビウスさんですか。これまた検索してみたら、ローラン・トポールとはまた全然違う画ですね。同じ作家、同じ監督でもまっ...
      猫丸さん
      またまた初耳、メビウスさんですか。これまた検索してみたら、ローラン・トポールとはまた全然違う画ですね。同じ作家、同じ監督でもまったく違う映画でしょうね。また浦沢直樹が影響受けたようですね。
      英語かフランス語できればアマゾンでステファン・ウル、読めそうですね、私には無理ですが。
      2021/05/13
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      bukuroseさん
      監督かプロデューサーか判りませんが、「ファン・プラ」はチェコ、「時の支配者」はハンガリー、「ガンダーラ」は北朝鮮で作っ...
      bukuroseさん
      監督かプロデューサーか判りませんが、「ファン・プラ」はチェコ、「時の支配者」はハンガリー、「ガンダーラ」は北朝鮮で作っている。どんなコネクションがあるんだろう?
      メビウスのBDは、図書館で借りれた何冊か読みましたが、高くて購入に至らず。

      何所か奇特な出版社はないのかなぁ?
      ステファン・ウルの原作を挿絵付きで翻訳出版してくださるような、、、
      2021/05/14
  • フランス・チェコスロヴァキア合作のアニメ。
    めちゃくちゃおもしろかった。名作!

    宇宙のどこかにある惑星イガム。青い巨人・ドラーグ族は高度な文明社会を築いている。同じ星に住む小さな人類・オム族は知性ある生き物とはみなされず、虫のように扱われ、ペットとして飼育されたりしている。・・・と、ざっと設定だけ聞くとありきたりな印象だけど、いろんなディテールが私にはとても新鮮でおもしろかった。

    たとえば、ドラーク族が日常的に行う瞑想。
    しばらくすると瞳孔が消えて、意識体のようなものが空中を漂い始める。あるいは、体の輪郭が崩れ始め、隣で瞑想する人と溶け合って一体化していったり・・・
    これって、今の時代のスピリチュアル系の人たちが言っていることと似ているなぁ、と興味深かった。

    星の植生なんかもすごくおもしろかった。ヒエロニムス・ボスの絵みたい、と多くの人が書いているけど、まさに。

    現代社会のいろんな風刺がこめられているのは見ていて明らかなんだけれど、その部分はまあ特に珍しくもないのであんまり記憶に残るほどのものはないが、その中で、唯一、深く心に刺さったのは、虫やペットの気持ちについて。
    これまで飼育したいろんなペット(犬、猫、鳥などなど)に対して、自分はそんなに悪い飼い主じゃないと勝手に思っていたけど、実際は、首輪をつけて引っ張るだけで、それはもう激しいストレスや苦痛を与えているんじゃないだろうかと暗い気持ちになった。

    人間と他の生き物とのかかわりについて風刺する映画は今まで山ほど見てきたけど、こんな風に思わせられた作品は初めてで、正直、ビックリした・・・。

  • 愛玩としてオム族(人類)を飼育する一方、増えすぎたり知識を付け始めたりすると、邪魔者として駆逐するドラーグ人は、まるで現実社会で生きる我々にも通じるところがある。

    人間のエゴや、共存を考えない点において、本作は痛烈な批判を含んでいる。

  • とてもクールで面白かったです。意外な所に落ち着く最後も綺麗。神秘的。

  • あらすじ
    惑星イガムでは、巨大宇宙人ドラーグ人が人間をペットとして飼っている。人間の子供テールはドラーグ人の少女ティバに育てられ、彼らの学習装置により高度な知識を身につける。やがて、成長したテールは学習装置を奪い脱走、反ドラーグの人間たちのリーダーとなっていく。

    みどころ

    幻想的なローラン・トポールのイラストを切り紙アニメで映画化した作品。巨大で無表情なドラーグ人に対して、悲しそうな顔の小さな人間たちがいかにも弱々しい。不思議な生物(この造形がまた絶品)が生息する惑星の描写やドラーグ人の生態など、なんともいえない画像としての魅力を持っています。切り紙アニメ独特のカクカクとした動きもこの作品の雰囲気には適していますね。実に摩訶不思議な世界観。

    ルネ・ラルーはもともとはアニメにかかわる人ではなく、ある村で、バカンスに出かけた精神科医の友人の代役として、絵画や影絵のようなものを使った精神療法を試み、その過程でアニメーションに深くかかわるようになったのだそうです。

    この作品の製作に対するラルーとアニメスタッフ(チェコのイジー・トルンカスタジオ)のこだわりはすさまじく、背景画の上に直接登場人物の絵を乗せて撮影する方法で作られており、実に4年の歳月をかけて完成。画面としてみたときの自然な美しさは特筆もので、マニアの間では「あのトポールの絵がそのまま動く!」として驚嘆のまなざしで迎えられました。1973年のカンヌ国際映画祭特別賞獲得、パルムドールにノミネート。

    個人的には
    アニメ作品ってあまり見ません。なので、当然この作品も全然知りませんでした。

    が、この作品痛く気に入りましたね。その理由は多数登場するわけのわからない生物。なんとも素敵。古くはずいぶん昔に読んだ手塚治虫「火の鳥」(宇宙編?)に出てくる生物とか、SFなどに登場する変な生物の絵に妙に魅力を感じるのですよ。

    特に、学習装置によって知恵をつけた人間が道具を使って初めて鳥の化け物を倒しますが、この鳥!あのぎざぎざの口で人間が住んでいる建物の屋根を破って、その穴からありくいみたいに長い舌を差し込んでくっついた人間食べてます。妙に合理的でグロテスクなところが実にGOOD。素敵だと思いませんか?(思わないか・笑)

  • うまく人間を相対化してみられるような仕掛けがあって面白い。

    地球を支配する(現実世界でいう人間のような)存在の、繁栄の鍵が日々行われる瞑想の中でのある出来事であることが、なんとも深い。

    絵がイイね!さすがです、

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