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- / ISBN・EAN: 4988102950811
感想・レビュー・書評
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『キッド』で大成功を収めたチャップリンが、監督・脚本・製作を担当して作った若い男女のすれ違いを描く悲劇。映画の最初に、チャップリン自身は出演しない旨のことわり書きが掲載されています。当時の喜劇役者チャップリンの人気の程がうかえますね。
パリ郊外に住むジャン(カール・ミラー)とマリー(エドナ・パーヴィアンス)は、マリーの父の激しい反対が原因でパリに駆け落ちすることを決意する。駅に彼女を待たせて身支度に帰ったジャンだが、折り悪く父親が急死。出かけることが出来なくなる。心配したマリーからの電話で事情を話そうとするジャンだが、わずかなすれちがいで理由を説明することが出来ず、マリーはジャンが心変わりしたものと思い込み一人パリに去っていく。一年後、マリーはパリ一番の金持ちと言われるピエール(アドルフ・マンジュー)の愛人として、華やかな社交界に住む身となっている。ある日、マリーはパーティー会場と間違えて訪れたアトリエで、画家の卵としてパリに来ていたジャンと再開する。
主役は、『キッド』にも出演したエドナ・パーヴィアンス。彼女はチャップリンの映画にしか出演していません。一時チャップリンと恋仲にあったようですが、彼女に愛人が出来たことが原因でチャップリンと別れます。
淀川長治氏の「映画は語る」に、氏が1953年にハリウッドを訪れた時に、チャップリンの秘書をしていた高野氏の紹介でエドナ・パーヴィアンスの自宅を訪れたことが記されています。エドナはこの『巴里の女性』を最後に映画の正解から引退しその後も一人で暮らしていたようです。淀川氏がチャップリンのことを聞くと涙を流して、「私は、あの人の映画以外は出ない、一生。あの人と映画に出たことを私は一生の思い出として心に思っていたい」の語ったそうです。チャップリンと別れても彼のことを大事に思う心持に、チャップリンも応え、『巴里の女性』の権利を彼女に贈り、一生彼女が困らないように気を配っていたそうです。
この映画は、喜劇王チャップリンに珍しい純粋な悲劇作品ですが、ちょうどこのころチャップリンとエドナの間にもいろいろな出来事があったのだろうな、などと思いは巡ります。
作品自体は地味な秀作という感じで、ピエールとジャンの間でゆれるマリーの心模様と、余裕綽々の色男を演じたアドルフ・マンジューが印象的でした。
チャップリンは喜劇の中にもちょっとホロッとするような要素があって、そのあたりが他の喜劇役者と違うところかと思います。笑わせることに長けていたのではなく、人間の喜怒哀楽をよく理解していたのでしょうね。マリーのその後を描くラストシーンに、チャップリンの懐の深さを感じることが出来ました。★★★★☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
製作年:1923年 製作国:アメリカ 時間:81分
原題:A WOMAN OF PARIS
監督:チャールズ・チャップリン
チャップリンが監督業に専念したメロドラマ。冒頭に「私は出演していない」「これは喜劇ではない」と説明がある。物語はよくあるメロドラマだけれど、さすがチャップリンという感じ。ただ、本人が出ていないのはやはり寂しい。(3.5点)