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- / ISBN・EAN: 4949478460045
感想・レビュー・書評
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驚異的な「バランス」の上に成り立った作品。
ベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一というとてつもなく重い歴史事象を素材としているのに、とてもテンポよくコミカルな構成で、家族への愛とそれゆえの優しい嘘をしんみりと魅せてくれる。そして、ただ心温まるだけでなく、人が持つ二律背反や欺瞞といった面も程よく織り込んでいる。
東ドイツの首都東ベルリンに暮らすアレックスとその家族。彼が子どもの頃に父が愛人と西ベルリンに亡命してしまってから、母は心の隙間を埋めるように社会主義に傾倒していた。
けれど、1989年10月に起こった反政府デモにアレックスが参加したのを偶然目撃してしまった母は心臓発作を起こし、昏睡状態となってしまう。
母が眠っている間の1989年11月にはベルリンの壁と共に彼女の愛した社会主義体制も崩壊し、資本主義の世の中へと移っていった。
それから数ヶ月後、奇跡的に母は眼を覚ます。今度発作を起こしたら彼女の命はないと医師から宣告されたアレックスは、母を守るため、家族や恋人を強制的に巻き込んで社会主義体制が続いているように見せかけようとするのだけど…。
母のために必死になるアレックスは本当に健気。
街中に西側から流入した製品が溢れる中、東の製品を偽装しようと、ようやく集めた東の空き瓶にちまちまと食品を詰め替えたり。
映画マニアの友達の協力のもと、ニュース映像を偽造したり。
けれど、時代の波にはどうしても逆らえなくて…。
躍起になって奮闘するアレックスだけど、実は彼は自分の行いの欺瞞に気づいている。そして、虚しさにも。
けれど、彼は止めることができない。
そして何も知らないはずの母は…。
ヘビーな主題と、それに反したコミカルな展開構成、そして、アレックスの矛盾や悲しみといったさまざまな感情を表現するナレーション融合がなんとも巧みで、最初から最後までグイグイとみられる。
中盤までのコメディテイストに対して、決して大団円ではないしんみりと胸に迫るラストの「現実性」も、この作品をより印象的にしている。
なんというか、とっても技巧的で職人技を感じさせる作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東ドイツに住む主人公
のほほんと生きているが、国家を熱心に支持する母親にデモでの拘束現場を目撃されてしまう。
母はショックで倒れ目を覚まさない。
そうこうする内に、まさかのベルリンの壁崩壊。
やっと母親は目を覚ますが、安静にし続けねば命の心配も。
主人公は周りを巻き込み、もう亡くなってしまった『東ドイツ』を作り上げる。
国や政治に振り回される市井の人々が、コミカルながらたまにしんみりと描かれる。
家族や同じ集合住宅の住民、友達との大げさでないドタバタ「東ドイツ」ライフ作りは素朴で必死。 -
大昔に見たのだけど、当時はあまりおもしろいと思わなかった。というか、途中からウトウトして記憶がない、というのが正しい記憶。
なので、もう1回ちゃんと見よう、と見終わった直後に思って幾星霜。やっと見直した。
驚いた。切ない映画だった。てっきりコメディかと思ってた。昔の私はそういう理解だった。たいしておもしろくないコメディだと。
今、見直してみて、この映画の切なさは子供(最初に見た時の私のことですが)には分からんだろう、と思う。
自分たちが一途に守ってきた国が、価値観が、ある日突然なくなってしまうとまどい。これまで信じて励んできたことが突然、否定されてなかったことにされてしまう。
正確には東ドイツはなくなったわけではなくて、再統一されて元に戻っただけなんだけれど、でも、気持ちとしては完全否定されてなくなってしまったに等しい。
日本と同じだなぁ、と思う。
若い主人公はもちろんその変化に柔軟に対応しているわけだが、心臓の弱い母にショックを与えないためにまだ旧東ドイツが存続しているふりをしていくうち、主人公がその場しのぎの嘘を重ねて描き出した東ドイツは、まるで、かつてあの国が掲げた理想をまじめに正確に追求し、ついに実現したかのような様相を帯びてくる。
このあたりがなんというか、すごく文学的ですごく切ない。
戦前の日本とつい重なってしまう。完全にいろいろ間違っていたのは事実だけど、だからと言って、その時代に国の言う嘘を信じて一生懸命生きていた人たちのすべてを否定する気になれないですよね。新しい価値観がより良いものであるという事実は別にして。
「もしもあの国があのまま進み続けたら」という他愛のない嘘が、次第に絶対にありえないような、奇妙に主人公の理想を反映していると分かった時のあの不思議なおかしさというか、切なさというか。
この話、そっくり場所と時代設定を戦後の日本に持ってきてリメイクすることが可能ですね。
ということで、繰り返しになるけれど、この映画のなんともいえずおかしくて哀しい感じ、年を重ねないと分からないだろうなぁ、と思う。少なくとも若いころの私には分からなかっただろうと思う。
20代くらいまでは自分という人間を生きるのにせいいっぱいで、自分の生まれた国がそれほどの影響を自分に与えているという感覚があまりなかった。
人間の価値観なんて、簡単にひっくり返されたり元に戻されたり、絶対なものなんて何もない、ってことも分からなかったなぁ。日本文学なんて、ずーっとそういうことばっかり言ってるんですけどね。 -
録画を観ました。あらすじは知っていましたが、こんなにもあたたかい作品だとは。
昏睡状態の間にドイツがひとつになって、それを知らない母のために、東ドイツはまだあるのだという嘘をつき通す主人公が哀しくも優しいです。
というか、皆優しい。主人公の同僚、なんて良い人なんだと思いました。
ラスト、多分主人公の彼女が母に真実を伝えたと思うのですが、その後も息子の作ったお話に付き合ってくれた母にじーんとしました。
母が一人で外出するシーンも悲しくなりました。知らない間に、信じていた世界が無くなるってこんなことなんだろうな。
良い映画でした。 -
単純に家族のお話としても楽しめるし、
自分にとって理想の国家とはどんなものか考えながら
観ても面白いかもしれない。
重すぎず軽すぎず、ちょうどいい塩梅の映画。
世界情勢や歴史に疎い私にとっては
東西ドイツ統一による庶民のカルチャーショックって
こういうものだったのねという点でも勉強になりました。-
Sandmann の Puppet Animationが劇中に流れると聞いて観に行ったら、とっても切ない話でした。Sandmann の Puppet Animationが劇中に流れると聞いて観に行ったら、とっても切ない話でした。2014/04/01
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最後の自作ニュースを観ている時の、お母さんの視線。これがあたたかく、せつなく、たまらなく優しい。
お母さんはすべてを理解した上で、亡くなったのだと思う。必死で隠し通そうとする子どもたちの優しさを汲んで、受け入れて。
だから最後まで幸せだったと思う。
それからララが可愛い。同僚がいいキャラ。
瓶詰めのきゅうりのピクルスが食べたくなります。 -
相手を思うあまりに、相手を縛ってしまう。
相手の為だと思っていても、エゴでしかなかったり。
人を大切にするって、難しいなあ。
あと、ベルリンの壁崩壊の時代のドイツが感じられて面白かった。 -
東のピクルスはありませんか?
テンポと色彩の綺麗な映画。 -
すごく面白かったのですが、テレビで見たり世界史の教科書を読んだぐらいで、ドイツ事情をよく知らなかったので、話に着いていけないところがいくつかあったことが残念。でもこの映画で東ドイツ側の事情がよく分かった。
果たして、アレックスは母の為を思ってついた嘘は、正しいことなのか。切ない話ですが、私は正しかったんじゃないかと思う。ガールフレンドの存在があったからの話ですが。
ドイツ映画は初めて観たんですが、女性の裸や男性の股間とかが普通に映っていたので、かなりびっくり。ヨーロッパの映画は規制が無いとか言われていますが、本当だったんですね。なんか感心。-
>nyancomaruさん
普通に女性や男性の裸が出てきたので、隣にいた姉と一緒に「うわああ!」と声を上げてしまいました(笑)
私はDVDを...>nyancomaruさん
普通に女性や男性の裸が出てきたので、隣にいた姉と一緒に「うわああ!」と声を上げてしまいました(笑)
私はDVDを借りて観たんですけど、もし地上波で放送されることがあったら、ちゃんとモザイクかけてほしいと思います。2012/06/19 -
「もし地上波で放送されることがあったら」
地上波だったら、ちゃんとカットされるかボカされて大丈夫だとは思いますが(オロオロ)、、、「もし地上波で放送されることがあったら」
地上波だったら、ちゃんとカットされるかボカされて大丈夫だとは思いますが(オロオロ)、、、2012/06/21 -
>nyancomaruさん
面白かったのでもう一度観たいです。
地上波でやってくれないかしら。
もちろんモザイク……いや、カットで(笑)>nyancomaruさん
面白かったのでもう一度観たいです。
地上波でやってくれないかしら。
もちろんモザイク……いや、カットで(笑)2012/06/26
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