裸のキッス [DVD]

監督 : サミュエル・フラー 
出演 : コンスタンス・タワーズ  アンソニー・アイスレー  マイケル・ダンテ  ヴァージニア・グレイ 
  • 紀伊國屋書店
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215007849

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  • THE NAKED KISS
    1964年 アメリカ 91分
    監督:サミュエル・フラー
    出演:コンスタンス・タワーズ/アンソニー・アイスリー/マイケル・ダンテ
    http://www.fuller2016.com/

    美貌の売春婦ケリー(コンスタンス・タワーズ)が、上前をはねた女衒ヒモ男をバッグでボコボコに殴っている。掴みあいになり、ケリーのウイッグが外れると、彼女は丸坊主。男をやっつけて、自分の取り分を奪ったケリーは鏡を見てメイクし出て行く。

    2年後、小さな町に流れついたケリーは、彼女の商売のセオリーとして、警官のグリフ(アンソニー・アイスリー)を誘惑。彼と寝ることで、売春に目をつぶってもらおうと考えていたが、グリフは自分のシマでは困る、川向うのキャンディの店に行け、と言う。最初はそのつもりだったケリーだが、疲れ果てた自分の顔を鏡で見て考えを変え、普通の下宿を探し、障害のある子供のための病院で看護婦として働き始め…。

    とにかく冒頭のエピソードが強烈で掴みはオッケー。ケリーという女性の気性をよく表している。彼女が丸坊主だった理由はのちに明かされるが(売春仲間を庇って組織に楯突いた)それもいかにもケリーらしい。真っ当な人間としてやり直そうと決意した彼女は、病院の子供たちの間でも人気者となる。下宿のおばさんも親切。

    ある日、ケリーが働く病院の出資者である町の名士・グラント(マイケル・ダンテ)のパーティに、婦長に連れて行かれる。グラントはいかにも良家の子息らしく教養があり、紳士的。ベートーヴェンの「月光」、バイロンやゲーテの詩集を好むケリーは彼と意気投合。やがて二人は恋仲になる。ついにグラントからプロポーズされ、ケリーは自分の過去を彼に打ち明けるが、彼の心は変わらず、ケリーはプロポーズを受けることに。

    ここまでなら一種のシンデレラストーリー。しかしもちろんそのままハッピーエンドとはならない。ウエディングドレスをグラントに見せようとウキウキやってきたケリーは、あろうことか、グラントが実はロリコンであることを知ってしまう。詰問するケリーに、しかしグラントは開き直り、売春婦のケリーは自分と同類、二人でうまくやっていける(つまり一種の偽装結婚)と言う。激怒したケリーは、手近にあった電話でグラントをぶん殴って殺害してしまう(!)

    グラントが子供のための病院を作ったのも、たぶんロリコンだったから。さらに、子供たちとケリーが歌っているのを録音しているのだけど(この歌がとても良い!)ケリーのためかと思いきや、たぶんこれもロリコンだから。

    そんなわけでここからは、刑務所のケリーをグリフが尋問する展開。ケリーは病院の同僚の相談にあれこれ乗って助けてあげていたが、ここではそれが裏目に出て、売春しようとしていた同僚のためにキャンディの店に殴り込みに行ったことから、キャンディの怨みを買い不利なウソの証言をされてしまう。さらに新聞でケリーのことを知った元ヒモが現れたり、元娼婦のケリーに味方はいない。

    最終的になんとか、被害者の少女をみつけだせたこと、ケリーに助けられた同僚が真実を話してくれたことで、ケリーは無罪となるが…。

    個人的に、警察官のグリフという人間が、非常に興味深かった。好意的な意味ではなく、むしろ嫌いなのだけど。彼はけして悪徳警官ではないし、最終的にはケリーを釈放してくれるが、そこに至るまでの心理の変化がなんというか良く言えば人間くさい、悪く言えばただのゲス。最初にまずケリーを買い、キャンディの店を紹介する。後日キャンディの店に行くと、ケリーは来ていない。ケリーと会えなかったことに彼はがっかりする。おそらく彼は一夜を共にしてからケリーを憎からず思って(なんなら恋して)いたのだろうけど、そんなケリーが娼婦を止め真っ当に生きようとしていることを知り、応援するどころか、ガッカリするんですよね。つまり彼はケリーが娼婦でいてくれたほうが都合がよいわけで、なぜならそのほうが自分の支配下に置き思い通りにできるから。

    グラントから、ケリーにプロポーズしたと打ち明けられた後も、グリフは警察官のくせにケリーに脅迫まがいのことをしてくる。娼婦だったとバラすぞ、今すぐ町から出て行けと。しかしケリーはすでにグラントにそれを打ち明けているため、これは脅迫として成立しない。自分のモノにならなかった女が、自分よりもずっと良い男(ロリコンだとバレる前のグラントは大金持ちの紳士だし)を捕まえたのが気に入らなかったのだろう。そしてケリーの逮捕後は、やっぱりろくでもない売春婦だ、と彼女を厳しく尋問。告白すらしていないけれど振られた腹いせとしか思えない。まあ最後は警官として正しい判断をしてくれたからマシだったけどさ…。自分の思い通りにならない女、に対する示威的な言動が不愉快でしかなかった。

    対照的に、ケリーはとても魅力的でした。題材的にな『ショック集団』のほうが好みなのだけど、こちらの映画のほうが面白いと感じたのはひとえにケリーの魅力ゆえ。演じた女優さんはショック~ではキャシー役だった人。

  • 荒削りで、目まぐるしく、型破り。ところどころ稚拙にさえ感じられるし、このストーリーにこの語り口が最適だったのかもよくわからない。それでも思わず息を飲む冒頭部分を皮切りに、忘れがたいシーンが続く。時代を考えれば題材も非常にチャレンジングで、作りたい作品を作っているという気概にこちらもいつのまにか前のめりになっていた。ラストは「ザ・プリズナー」(1955)の影響かな?

  • これは傑作。特に娼婦が売春宿のボスを殴り倒す序盤がすごすぎる。こちらまで殴られているような感覚、本当に怖い。サミュエルフラー、伝説の演出である。



    【ストーリー】
    娼婦ケリー(コンスタンス・タワーズ)は逃げられないよう彼女を丸坊主にした売春宿の主人を殴り倒し、自らの稼いだ金を取り戻してそこを立ち去る。

    それから2年後、彼女はグラントビルという小さな町のシャンペンのセールス嬢の姿で現われた。しかしそんな彼女の正体を見抜いた警部のグリフ(アンソニー・B・アイスリー)は、彼女と一夜を過ごした後、町を去るよう告げる。だが更生を決意したケリーは町に住いを見つけ、身障児施設の看護婦として働き始める。

    子供たちとも馴染み始めた彼女の前に、町の若き富豪グラント(マイケル・ダンテ)から思わぬ誘い、過去さえも気にしない彼の結婚の申し込みにケリーはついにOKする。しかし、彼女はグラントが実は幼児性愛者であり、そんな異常な趣味に従う女を求めていただけだと知った時、怒りの余り彼を殴り殺してしまう。

    逮捕されたケリーは、グラントのキスが裸のキッスと呼ばれる変質者のそれであったと主張するが、グリフは信じようとはしない。ケリーの過去を知るや急に人々は態度を変え、彼女はいよいよ窮地に陥るが、ついにグラントにいたずらされた少女が発見され、ケリーの無実が証明された。しかし偽善に満ちた町の裏側を知ってしまった彼女は怒りを胸に立ち去ってゆく。

    元娼婦の女が新しい生活を始めようと身分を隠してやってきた町で巻き込まれる恐ろしい事件を描くサスペンス・ドラマ。「ストリート・オブ・ノー・リターン」のサミュエル・フラーが製作・監督・脚本を兼ね、撮影はスタンリー・コルテス、音楽はポール・ダンラップが担当。出演はコンスタンス・タワーズ、アンソニー・ビスリーほか。

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