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感想・レビュー・書評
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ホフマン作・センダック画の『くるみわり人形とネズミの王様』
モーリス・センダックは、1983年に上演されたパシフィック・ノースウエスト・バレエ団のクリスマス公演で「くるみわり人形」のステージと衣装のデザインを担当した。
そのときのデザインと、書き下ろしのイラストを大型絵本に仕立てたもの。
総ルビでしっかり漢字をつかった昔ながらのつくりの本。
とにかく絵が楽しい。
オリジナル演出の舞台のためのデザインだから、本文とズレた絵がある。
「かいじゅう」が顔をのぞかせるようなファンサービスもある。
オリエンタリズムはご愛敬。
この本を好きになれるか否かはほぼそのままセンダックを好きか否かにかかっている。
センダックによる前書きは、この本について、というよりも舞台について語る。
パンフレットに載っているほうがしっくりくる文章だ。
もし私が子供の頃にこの本に出会っていたら、前書きだけで挫折しただろう。
大人の目でみると仕事の話としてとてもおもしろいけれど、おもしろいからこれからはじまる物語の魅力が半減してしまう。
ホフマンの物語よりもむしろ舞台がみたくなる。
てことで、2冊続けて読んだという部分をさしひいても、センダックに食われちゃってる本だ。
良くも悪くも。
「名訳と名高いラルフ・マンハイムによる英語版から訳しました」と誇らしげに書いてある。
名訳というのは「原書を損なわず、しかもその国の言葉として魅力的な文章」なのだから、名訳から訳しましたってのはアピールポイントにならないはずなんだけどな。
西村書店http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4890138765のとつきあわせて読んだら向こうは削られている部分がちょこちょこある。
こちらは古い言葉が多い。「バレー」表記は球技を連想してしまう。
一方だけだと意味の通じない部分がもう一方と合わせるとわかってくるところもある。
詩に至っては同じものとは思えない。
これは多分、底本が違うんだろうな。
よほどマイナーな言語ならばしかたないけれど、翻訳は基本的に原文から訳すべきだと思うんだ。
伝言ゲームは誤読を呼びやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示