老舎珠玉―戯曲 (1982年)

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  •  本書を読むと、北京の貧しい路地裏(胡同)育ちの老舎は、中華人民共和国が建国されても、その出自を裏切らない作品を紡いできたのだとホッとする。庶民の中で生まれ生活し、庶民とともに叫んできた作家の生き様は、「社会主義国家」ができたあとは難しい。気を抜くと「人民政府」賛美になりがちなところ、老舎は、たとえば題材を巧妙に選ぶことによって、その過ちを避けることができた。「西望長安」がそれだ。この戯曲は英雄主義に陥る弊害を描いている。英雄を演ずる詐欺師は巧妙に周りの人たちをたぶらかしていくが、最後には追い詰めれ正体を暴かれることで、結局「人民」側が勝利する。社会主義的・演劇のお決まりのエンディングとも言える。だが、「人民政府」に巣くう重大な欠陥をえぐり出すという気迫に満ちたものでなくとも、英雄主義を素材に選び、微温的であってもそれを批判的に描くということに、老舎らしさが表れていると思う。この戯曲が発表されたのは1954年のことである。中国政府が朝鮮戦争参戦を正当化するために、戦争英雄をさかんに宣伝していた頃だ。そんな時期に、老舎は英雄主義をちくりと批判する戯曲を著した。

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