紺青のわかれ (1972年)

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感想・レビュー・書評

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  • 中井英夫が「香りへの旅」で言及した
    歌人・塚本邦雄の「かすみあみ」を読みたくなって、
    2005年に『連彈』を入手。
    気に入って繰り返し読んでいたが、
    第二小説集だったことを、先日、不意に思い出し、
    最初の短編集であるこの本を、また中古で購入。
    こちらの方が品数が多いにもかかわらず、
    作品集としてキリッと纏まっていて好感が持てる。
    けれども、「冥府燦爛」の舞台が《射干町》地下街という具合に、
    『連彈』世界とリンクしていることが楽しく、ニヤニヤしてしまった。
    例外もあるけれど、男性同士の交情に重点が置かれ、
    と胸を衝かれるようなショッキングな幕切れを迎えるケースが多い。
    鮮やか過ぎて声も出ないというか、それはないだろ~というか(笑)
    そうしたラストシーンで時間が止まって、
    主人公たちが煮凝りと化してしまうといった趣。
    基本的に女は蚊帳の外で、ほとんどの場合、
    嫉妬深く奸智に長けた忌まわしい存在として描かれがちなので、
    読んでいて時々、複雑な気分になってしまうけど。

  • 著者の処女小説集。
    装丁・装画はAlbrecht Durer(1471-1528)のゴシック様式の版画。表紙は、版画の枠のなかに逆エンボスで題名。見返し紙の紺青の渦模様は、恍惚を覚えるほど美しい。

    密やかな交情に溺れる男たちと、彼らを弄び破滅に追いやる女たち。妖しい香気を放つ、異形の者たちの地獄。
    著者の美意識が凝結した絢爛豪華な美文に陶酔した。和色、動植物、芸術などの博識が作品を豊かにしている。
    幻想文学には「死」がつきものだが、著者が描くのは生きながらの地獄と言ってよい。汗や体臭が匂いたち、一層官能的である。

    お気に入りは「聖父哀傷圖(スタバト・パーテル)」。墨と花と血の凄絶な香に酔う。戦慄する結末の「月蝕」「見よ眠れる船を」もよい。

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