ホモ・モーベンス―都市と人間の未来 (1969年) (中公新書)

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  • 『#ホモ・モーベンス―都市と人間の未来』

    ほぼ日書評 Day449

    中銀カプセルタワービル竣工の3年前、1969年初刊。

    ヒトの正式学名「ホモ・サピエンス」にならい、過去にもさまざまな「ホモ・◯◯」が定義されて来たが、約半世紀前に黒川紀章氏が提唱したのが、この「ホモ・モーベンス」、動くヒト…の意だ。

    建築家の観点から都市設計を論ずるにあたり、都市機能そのものを静的に語るのではなく、「動く」ことで様々な都市機能が結びつけられ、さらにその結合を成立させる「道」の重要性に焦点が当てられる。

    「産業革命が、ものを作る技術の革命であり、工業都市が、ものを作る工業を基盤として成立していたのに対して、情報革命は、物を運ぶ技術の革命であり、情報を伝える技術の革命である。情報と私が物を運ぶ産業や、広い意味での情報産業基盤として成立するのは当然のことであろう」

    繰り返すが1969年初刊である。何たる慧眼。

    「テレビ電話が家庭に普及すれば、人に会わなくてもと言う見方もできるけれども、テレビ電話があるために、年賀状でしか連絡のなかった人たちの間に、直接会うきっかけを急激に作り出していくのではないだろうか。連絡があればあるほど親密度を増していくと言うのが人情と言うものだ」

    このテレビ電話をSNSと置き換えてみたらどうだろう。年式の近い方なら、何十年ぶりに「青春時代」の友人と再会したケースも多いのではないか。

    (往復3時間に及ぶ通勤時間に言及して)「それはある実体的な空間からある実体的な空間移動する単なる手段的な機能ではなくて、動いている人間を収容している電車や自動車、あるいは動いてる人間の場である道路自体が新しい意味での生活空間になる時代だといえよう」

    コロナによって、50年続いた生活空間観が半ば強制的に変化させられることとなり、次の時代はどうなるのか、改めて考えさせられる。

    最終盤では、50年前の日本人の生活に、既に「シェアリングエコノミー」の萌芽とでもいうべきものが垣間見られることが指摘されており、非常に興味深い。

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