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- / ISBN・EAN: 4907953020917
感想・レビュー・書評
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『灯台守の恋』を観て
フランス領の孤島にアルジェリア戦争の帰還兵アントワースが灯台守として赴任してくる。孤立した島国の閉鎖的な男の世界は、都会で育ち、伸びやかな感性のアントワースを受け入れる余地を持たない。
この世界のなかで、『灯台守』という職業を選択したアントワースがどうやって馴染んでいくのか、時間の経過と果てしなく続く忍耐を想像してやまなかったが、この映画の主題はタイトルのとおりそんなところにはなかった。
同じ灯台守として働くイヴォンが、アントワースに信頼を寄せて、友情を築き上げていく。イヴォンとて最初は、アントワースを灯台守に不適格としての嘆願書を出そうと考えていた閉鎖的な島民だった。だが灯台守として一緒に過ごす時間が流れていけば、必然的にその人物が見えてくる。
だが、アントワースは一方で、マベとのあいだに抑えきれない恋愛を燃え滾らせてしまう。このマベはイヴォンの妻なのだ。友情と恋心が、三人の中で交錯する。
この映画を観ながらボンヤリ考えていたのは
『 “恋愛”というものがその社会、あるいは文化のなかでどのように存在しているのだろうか』ということ。
というのも、この映画を観る前に車のなかのラジオで「最近の若者のなかには恋愛とか、恋とかの感覚がわからない人が増えている」というのを聞いていた。聞いた瞬間には「そんなことあるん」と呟いていたけど、幾つかの言葉を助手席の妻と交わした数分後には「ありうるね」という合意に達していた。
その合意への道筋はかなりプライベートになるから省くけど、お互いの初恋の想い出のときのトキメキが“恋”の感覚だという同意がこの合意につながった。
これはフランスの映画、私たちの暮らすのは日本。この映画に限ったことではないけど、“恋愛”というものに価値を置くフランス。そして、その定義は『法外のもの、許されないもの』だから、燃えるし、市民が憧れその存在を守り人間としての美しさの一端として認める。そこには、社会秩序の維持や調和というレイヤーとは違うヒューマンとしての価値のレイヤーがより高次のところに存在している。
日本でも、恥の文化なりに“恋愛”を美しく讃える文化はあった。数日前に観た『心中天網島』『曽根崎心中』などを観ているとフランスの果敢な恋愛と比べると閉じていく恋愛だけどそれは切り取りの違い。
“恋愛”を見つめる社会の姿勢が違う。性の商品化が進んだなかで、あるいは「個人が社会のなかの一部」(個人が集って社会を作っているのではなく)であるという観念が蔓延している国家のなかで、いつのまにか心のウヅキを自ら抑制しようとしてしまっている。それが「理性のある大人の社会だ」という取り返しのつかない方向に進んでいる。
『ロストエモーション』で観た世界だ。
でも、こうも考える。ヘレンケラーが初めて発した言葉「Water!」。サリバン先生に導かれて蛇口からでる水を手に感じたときの驚きを言葉にした叫び。
まずはその存在をあらわす概念の存在を知ることができれば。
『恋心』がわからないということはおきない。
本を読もう。映画を観よう。そして街に出よう。人と話そう。
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うーん。やっぱり海は怖いよなあ…
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「1冊の本に秘められた母の恋」
カミーユ(アン・コンザイニー)は生まれ故郷のブルターニュ地方ウエッサン島に戻ってくる。もう今は亡くなってしまっている両親の家を売却するためだ。
カミーユと伯母のジャンヌ(マルティーヌ・サルセイ)の二人はその家で最後の夜を過ごすことになる。
カミーユは、一冊の本を受け取る。その本はアントワーヌ・カッサンディ著“私の世界の果て”。表紙のイラストが、父親が灯台守をしていたジュマン灯台に似ているのと、伯母の態度が気になった彼女は、その本を読みはじめる。そして、父と母の秘密を知ることになる―。
1963年、“世界の果て”と呼ばれるブルターニュ海岸の辺境ウエッサン。
ある男が島にやってきて、カミーユの父イヴォン(フィリップ・トレトン)が率いる灯台守たちの一団に加わる。
男の名はアントワーヌ(グレゴリ・デランジェール)、アルジェリア戦争帰還兵で、左手を負傷していた。村人は昔イギリスから渡ってきたケルト人の子孫として結束が固い。彼は村人の強烈な敵意に対峙するが、その敵対心を理解し、彼らの拒絶を受け入れ、尊重すらしてゆっくりと耐えていた。静かな微笑をたたえて。
そんなとき、イヴォンはアントワーヌと一緒に働き始める。大きな波が灯台に当たっては砕け、天候はあまりにもすさまじく、いっときも心休まるときがない過酷な状況のなか、塔の中でずっと明かりを灯し続ける二人の灯台守。
イヴォンは、アントワーヌの人柄を知り、友人として彼を村に迎え入れるが、その後一人の女性がアントワーヌと恋におちてしまう。だが、それはイヴォンの妻マベ(サンドリーヌ・ボネール)だった。
マベは、本好きな母の影響もあり、ブルターニュの外の街へ出てみたかった。しかし、代々ジュマン灯台を守る厳格な父のために、灯台守のイヴォンと結婚し、二人でジュマン灯台を守っていく決意をした。
イヴォンはマベのために過酷な灯台守の任務についた男だった。無骨で寡黙だが、誰よりも深くマベを愛していた。しかしふたりには、灯台守を継ぐべき子供ができないという悩みがあった。
マベの貧しくも幸福な日々に、心を惑わす男が現れた。アントワーヌだった。元時計職人の彼は、繊細な手つきでマベのアコーディオンや自転車を修理し、やさしい微笑の裏側で時折翳りを見せた。抑えられた情熱とイヴォンの存在が、ふたりを思いとどまらせていた。そんなとき、村の祭りが開かれた。
20歳のブリジット(エミリー・デュケンヌ)は、小さな島での暮しに死ぬほど退屈し、婚約者がいるにもかかわらず、アントワーヌに誘いをかける。婚約者は激怒し、アントワーヌを激しく殴打する。心配するマベ。
祭りの喧騒と喧嘩の後の熱に浮かされてか、ふたりは堰を切ったように木陰で激しく抱き合うが。 -
原題は L'équipier。船に乗っていかないと辿りつけない海の中の灯台、っていう舞台がこの上もなくすてき。
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うーん、イマイチ・・
どーしてもただの不倫にしか見えなくて。
あの、視線だけでお互いの気持ちをわかってしまう感じは素敵だけど。
ダンナがめっちゃいい人だし、マベのこと愛してるし、仕事仲間としてもかっこいー人だから、ふたりの不倫が許せない。
ラストも・・
うーん・・なんか苦々しいものを感じました。
人物の魅力とか、風景の魅力が、そういう一切を許せちゃうまでいかないので。 -
ヨーロッパ映画によくある戦争を絡めて深さを出したお話しだし、
恋愛ものとしても新たな発見はないけれど、
そうそう見れない灯台の美しさや、色味はやはり素晴らしかった。
荒れ狂う海、灯台での孤独、孤独ゆえの友情。
彼女は父を探しに行くだろうか。
終わり方はとても好きです。 -
この時代のフランスのブルターニュ地方、灯台守の仕事と、機械化される前の燈台を丁寧に堅実に描いた作品です。
「筋を通す」という言葉が伝わってきました。
細部にまで凝って描かれた作品ですが、ストーリーが地味なことと、大きなテーマがない点から、少しドラマよりの作品となってしまっていると感じがしますが、映画自体を楽しむという点では満足できる内容となっています。
個人的は、燈台に住みついていたネコがかなりかわいかったです!
そして、実は、彼の演技に、一番、目を奪われていました!! -
製作年:2004年 製作国:フランス 時間:104分
原題:L' EQUIPIER
監督:フィリップ・リオレ
(3.0点) -
これは恋愛映画ですけど、
まあなんつーか、男の友情の物語なんですね。
ていうか、たぶんそうだと思います。
この恋愛については特に語るべきことなんて、
なーんにもナイつーくらい平凡なものです。
このお話が素敵に胸を打つのは、イヴォンがいるから。
これねー、
アントワーヌの人が春野寿美礼に似ていて、
イヴォンの人が霧谷大夢に似てるから、
最後のツーショットの写真のところ、一人でウケてた笑。
(宝塚知らない人にはスミマセン笑)
この映画、ずっと前にレンタルDVDの予告編で観て気になってました!
でもレンタル屋さんになく...
この映画、ずっと前にレンタルDVDの予告編で観て気になってました!
でもレンタル屋さんになくて...。
素敵なレビューありがとうございました。