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- / ISBN・EAN: 4988103601620
感想・レビュー・書評
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2007年 日本 101分
漱石の『夢十夜』を11人の監督がそれぞれ10分前後で撮ったオムニバス映画。以下一応個別に。
★プロローグ&エピローグ(監督:清水厚)
導入とエンディングだけの短いストーリー。正直不要でした。戸田恵梨香で客寄せしたかっただけとしか…。
★第一夜(監督:実相寺昭雄)
夢十夜の中ではいちばん有名な「百年待っていて下さい」の話。しかしなぜか主人公は漱石ではなく内田百けん先生(松尾スズキ)で、金魚を飼っている妻つぐみ(小泉今日子)と、100年連れ添う話となっている。妻はもしかして『蜜のあはれ』の金魚だったのだろうか。
★第二夜(監督:市川崑)
悟りを開こうとする侍(うじきつよし)と和尚(中村梅之助)の話。モノクロでサイレント。これが一番原作に忠実でほぼそのまま映像化しただけ。
★第三夜(監督:清水崇)
これも有名な、負ぶった子供が「百年前にお前に殺されたのも…」と石地蔵になる話。まず漱石(堀部圭亮)と六人目の子供を妊娠中の妻(香椎由宇)の日常エピソードがあり、妻が六地蔵のひとつを子供の頃壊してしまったから最初の子は流産したのだ…というような話をし、漱石がくだんの夢を見る流れ。監督:清水崇がホラーの人なので、子供が地蔵になる場面などが無駄にホラー。香椎由宇はとても良かった。
★第四夜(監督:清水厚)
手ぬぐいが蛇になる話だけど、その部分が少し使われているだけで全く別の話。はるかという女性の手紙を持って駅にやってきた漱石(山本耕史)が、手拭いを蛇にするよと見世物の呼びかけに集まる子供たちについていき、少年時代にタイムスリップするかのような展開。見世物師はハーメルンの笛吹きのようで面白かったけど、全体的に何かがあざとい。実は少年時代の漱石の友達だった女の子が彼を「漱石くん」呼ばわりするのもどうかと思った。せめて金ちゃんとでも呼んでれば。
★第五夜(監督:豊島圭介)
馬を駆る市川実日子、それ以外はほぼ原作とは別物。こちらもホラーの監督なのか、安っぽいホラー演出にちょっと白けてしまった。ストーリー自体はオリジナルながら面白い構成だったと思う。夫(大倉孝二)に、元ヤン時代の過去と、最初の結婚の夫(三浦誠己)と子供を事故で亡くしたことを隠している女性が、それを夫に知られてしまうことを恐れている心象風景。隠している本当の自分=包帯ぐるぐるの怪物というのがチープすぎて台無しになってた。
★第六夜(監督:松尾スズキ)
個人的にこれが一番面白かった。運慶が仁王像を彫っているのを見物に行く男の話。モノクロの、黒澤映画風に始まるのに、なぜか主人公の男(阿部サダヲ)はじめ登場人物は皆ネットスラング(2ちゃん用語)で話し、それに英語の字幕が出る。運慶(TOZAWA)は、人々が集まる前でいきなりダンスを始める。演じた人はプロのダンサーで、めちゃめちゃ上手い。そしてパフォーマンスの途中で、ノミで木をガツっとやると仁王像が!なんか変な説得力がある(笑)家に帰った阿部サダヲが真似をするも出来上がったのは…というオチも笑えた。センスの良いふざけ方。
★第七夜(監督:天野喜孝/河原真明)
こちら唯一のアニメーション。なぜか全編英語で日本語字幕。大きな舟に乗っている男(キャラデザ天野喜孝なのでヴァンパイアハンターDみたいなビジュアル)巨人たちが働いているが誰もまともに答えてくれない。ピアノを弾く少女の場面がとても幻想で美しかった。男の言ってる内容は中2的でちょっと痛々しいが、とにかく映像がキレイなので見ていられる。ストーリーも実は原作に忠実。
★第八夜(監督:山下敦弘)
床屋の話のはずだけど、全然違った。田んぼでザリガニ取りをしていると一人の少年が人間の胴体ほどもある巨大なミミズをみつけペットにしようと連れ帰る。これは漱石(藤岡弘)が見ていた夢。目を覚ますと真っ白な原稿、窓の外から近所の子供が彼をからかい「鴎外先生!」と叫ぶ。ドリフのコントのように、上から落ちてくる巨大ミミズ。全く意味が解らない。コミカルな作品はいくつかあったが、これは悪ふざけ。センスの悪いふざけ方だったと思う。
★第九夜(監督:西川美和)
戦争が始まり、夫(ピエール瀧)が出征したため、無事を祈り、幼い子供を連れてお百度詣りをする母(緒川たまき)。しかしその頃夫は戦地で…。緒川たまきの佇まいがとても美しい。
★第十夜(監督:山口雄大)
これも有名な、庄太郎が崖っぷちで大量の豚に襲われる話。庄太郎(松山ケンイチ)はイケメンで女にモテるが、ブスが嫌いで脳内で(?)殺戮を繰り返している。ある日よし乃(本上まなみ)という美女に誘われてほいほいついてゆき、美味しい豚丼を食べるが、地下の豚丼工場では安田大サーカスの汗で出汁をとり肉が刻まれており…。平賀源内(石坂浩二)にもらった杖でなんとか逃げ出した庄太郎を、豚の妖怪に変身した本上まなみが追いかけてくる。これもものすごくふざけてるのだけど、なぜか許せる面白さだった。
総じて、いろんな解釈やいろんなジャンルがごっちゃになってるのはオムニバス映画の醍醐味だからそれはそれで良いとして、やっぱり監督次第で自分の好みに合う合わないがあり、ハズレ、と思うものもあった。プラマイゼロで平均点かな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夏目漱石の「夢十夜」を10人の監督が作り上げた作品。
正直、ここまでつまらないとは思わなかった><
松尾スズキとか、好きな監督さんの作品は面白く拝見させていただきましたが・・・。
わけがわからないなら、わからないでいいんです。
でも、短編なのに、見ていて飽きてくる、ていうのはどうかと・・・。
最後まで飽きさせずに見れた作品が少なかったので、残念でした。
この映画を見て「夢十夜」が読み返したくなったのは、私だけではないでしょう。 -
夏目漱石の作品「夢十夜」を一夜毎、色々な方が監督をされたオムニバス形式の作品でした。各々の監督さんの色も出ている感じで、そういった視点でもおもしろかったです。アニメーションのもあったりしてビックリした。でも、原作がそうだから仕方ないのかもしれないけど、変わったというか複雑というか、よく分からないお話が多かったように思いました。こういう風に脚色するのか…と発見もあっただろうから、原作読んでから見ればよかったかなぁ…と思いました。そのままストレートに表現してる方もいれば、どうしてそういう表現になるの?と不思議に思う方もいました。松尾さんのは冒頭笑った。
この「夢十夜」という作品。学生時代に、研究発表の題材になった作品だったので、何となく覚えてはいました。グループ発表で、この映画同様、一夜を担当して研究発表するという授業でした。自分が何夜を担当したのかまったく覚えてなくて、見てれば思い出すかなー…と思っていたのですが、まさしくその通りになりました。
私が担当したのは「第十夜」。偶然にも、この映画を見ようと思ったキッカケである、松山さんが出演されてる回で、ちょっとうれしかったです。この「第十夜」、「ブタ」のイメージですっごい覚えてるの。あと、「崖」。この2つの単語は何を言わんとしてるのか…っていうのを研究してたな。学校に、「イメージ辞典」っていうのがあって、それを使いながら研究してたんだけど、その辞典がおもしろかったんだ。その辞典、欲しくなったもの。
そんなこんなで、うわーい♪となりながら見てました。松山さん、和服似合うなー…と、きゅんきゅんしながら。ああいう和洋折衷なのって大好きなのです。お話は何か、ますますお肉嫌いになりそうなお話でした苦笑。でも、うぷって吐きそうになってる時に、口を押えてる手に萌えながら見てました。相変わらず手がおキレーでときめきます。
エピローグで使われていたこの作品の文庫が、自分の持ってるモノと一緒だったので、ちょっとうれしかったです。
ちなみにこの文庫、家に2冊ありました。姉が使ってたのが。何で、それ使わなかったかな、自分。もったいない。…と、今更ながら思っちゃったのでした。
自分が担当していたお話以外では、「第三夜」しか覚えてなかったので、原作読もうと思ってます。「第三夜」のお話はすごく覚えてるの。多分、怖かったんだと思います苦笑。こういう怪談ちっくなお話苦手なんだ。怖いんだ。 -
「ユメ十夜」観る。漱石原作をアレンジ。監督が各話違う。監督も役者も有名所。2ch用語出るわ、英語あるわ、白黒ありーの、天野喜孝アニメありーの、てんやわんや。低予算?はわざとか?難解?な原作がより意味不明に。どうでもいいかもだが、市川崑の話に石坂浩二が出ているわけではない。2話子供の顔は普通が良かろう。2chのが面白かった。
多分、大方、おそらく、きっと、本上まなみが鼻の穴に自分の指を突っ込んで豚を演じる姿が観れるのは「ユメ十夜」だけであろう。十話目ね。
夢十夜は全編アニメで原作に忠実に作ってくれないものかのぅ。 -
うーん、夏目漱石のってこんな感じだっけ…???監督にもよるけど、全体的にチープ感があって…俳優は豪華なんだけど…勿体ない感じ。
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レンタルで観ました。
原作は夏目漱石作品で一番好きです。
オムニバスで映画化、そして好きな監督さんもいるということでわくわく観ましたが、「何故こうなる」が多くてあれれ…でした。
第一夜、第三夜、第六夜、第七夜が原作では好きなのですが、この映画で良かったのは三と六でした。六は楽しかったです…さすが松尾スズキでした。
後、第十夜の松山ケンイチさんが妙な色気があって素敵でした。このお話は勢いで押し切った感じでしたが好きです。臓物を滴らせながら帰って来た庄太郎、結局100歳以上生きたのか!長生き!と思いました。
あとはあまり印象に残らず…実相寺昭雄、久世光彦、市川崑の前半は古めかしい感じが良かったです。
原作を再読したくなりました。 -
第八夜 監督:山下敦弘 脚本:長尾謙一郎
出演:藤岡弘、(夏目漱石、正造)山本浩司、大家由祐子、土屋匠、森康子
折角原作は面白いのに、その素材を生かし切れなかったというか、
部分的に面白い描写があるのに、それを生かし切れなかったというか。
最初、子どもが田んぼの中から大きなものを掘り出す。
家に持って帰るが、母親から飼えないと叱られる。
「モノになるの?」
「モノになる!」
田んぼの中から掘り出したものは、この子どもの才能だと考えれば面白い。
ザリガニのような小さくまとまった才能を持った才人が
「あいつにはかなわない」
と感心して同じ道に進むのをあきらめるような途方もなく大きくてよく分からない才能。
周囲の人や子ども本人にすらどう使っていいのか理解不能のとてつもない才能。
そばで、かつて自分も「モノになる!」と言ったことのあるおじいちゃんが今までの人生を振り返りながらそのやりとりを聞いている。
……と解釈すれば面白いのですが、その後の展開がグダグダでよく分からない。
おじいちゃんが障子の後ろを歩くのですが、これは今までの人生を表現しているのでしょうか。
むしろ、子どもの影が段々大きくなって、子どものその後の人生を表現する方が面白いと思うのですが。
そして、おじいちゃんが現代的な部屋の2段ベッドに寝るという、わけのわからない展開。
ここはむしろ、「モノになれなかった」子どもが、「モノになる」可能性を秘めた孫娘に世代交代した、と解釈した方が面白い。
『2001年宇宙の旅』の最後で、宇宙人がベッドに横たわっているシーンを思い出したり。
……と思っていたら、夏目漱石の執筆シーンになったり。これは単なるコントの小ネタだろう。
……と思っていたら、脈絡なく床屋から帰るシーンになったり、時々現れる金魚売りは一体何なのだ、と、部分的には思わせぶりで面白い描写が雑然と切り貼りされていてよく分からない。
ところで、「庄太郎」さんは、原作では重要人物と思われます。
あの「庄太郎」さんがどんな形で登場するか、ファンとしてのがキーポイントなんです。
原作には登場しない第四夜や第五夜では登場して「(ファン心理を)分かってるな」ですが、肝心の第八夜には登場しなくて「分かってないな」です。
子どもの名前が「庄太郎」だったとしたら面白かったのですが、友人達から「ミツ」、母親から「みつくん」と呼ばれています。
とすれば、おじいちゃんの名前が「庄太郎」なのでしょうか。
(ウィキペディアには「正造」と記述されています)
ともかく、一般向けのエンタメ作品で難解な文芸作品や不条理劇をやるな、もっと分かりやすくしろ、と言いたいです。
(よく考えると、原作も、わけのわからない描写が脈絡なく次々と出てくる展開ですね。)
http://sanshirou.seesaa.net/article/435815427.html -
夏目漱石の小説のパロ?
10人の監督がそれぞれ面白いような、ホラーなようなタッチで短編で映像を作ってる。
中には面白いものもあるけど、飽きる。 -
漱石の原作では、夢の不思議さ怪異な感じを淡々と書くことで品位があり、奇妙な雰囲気を漂わせることに成功しています。それが、映像化されると、表現が直接的になり、あざとさがあります。11人の監督の競作ですが、それぞれ自己主張が強めに出てしまい全体として原作の雰囲気を壊しました。もっと原作に対するリスペクトがあっていいですね。
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クセとアクの強い、
良作多めのヨニキモってかんじ
最後がこれじゃなかったらホシイツツ