アパシー ~鳴神学園都市伝説探偵局~

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  • Amazon.co.jp ・ゲーム
  • / ISBN・EAN: 4510772070065

感想・レビュー・書評

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  • 謎を追ったその先が、たとえ肩透かしだろうとも。それでも彼は見つめてる、己に待つ運命を。

    活動を休止していた飯島健男あらため飯島多紀哉氏が新定義した「アパシー・シリーズ」、その商業第一弾となるタイトルですが……。
    『学校であった怖い話』の対となるスタンスを取り、世界観を共通させた姉妹作でありながら、あまり脚光を浴びることはありませんでした。 
    ゲーム業界復帰に当たって連続リリースされた商業作としては『ONI零-戦国乱世百花繚乱-』『四八(仮)』に挟まれ、あんまりよろしくない世間の評判を受けてしまった作品です。

    まぁ私は好きなんですけどね。
    減点は目立つんですが、全体的な雰囲気は好きです。
    ゲームとして何かが決定的に破綻しているということはありません。
    満足感が得られにくいというだけです。
    必要以上に出来の悪いゲームとして持ち上げるのは負の意味での過大評価でしょう。
    長編ゲームのプロローグに当たるだろう作品が単独リリースされた弊害がかなり大きいのも事実ですが。

    ジャンルとしてはノベル+ちょっとしたミニゲームを解かせるAVGと言った風情。
    タイトルを背負う主人公たちの集団「都市伝説探偵局」は恐怖に呑まれるのではなく、恐怖に立ち向かうというスタンスを取っているので、ホラーゲームとしての側面はあまり強くないです。

    スタイリッシュなイマドキジュブナイルではなく、当時からして一昔前を志向していると思われるので、その手の作風が好きな方にはたまらないかと。
    シナリオに派手さはないものの、堅実に学生が挑めそうなライトな事件を取り扱っています。

    ちなみにグラフィックとしては「尚親」さんのキャラクターデザインがあんまり華のある方じゃないことに加え、モノクローム+セピアな色彩に加工されて全編お送りします。

    よって、なんか必要以上に前時代的なグラフィックをユーザーに与えてしまった印象があります。
    薄暗い作風というわけではないので、その辺ちぐはぐと取るか、ノスタルジックと取るかは人それぞれ。

    で、ここからが問題点。
    ニンテンドーDSというハードに合わせて無理にミニゲームを盛り込んだことでバランスが悪くなっています。
    読ませるシナリオよりギミック重視という印象が残ったこと、文脈無視して謎のミニゲームをやらされた後、選択肢を挟んだ後のつなぎが悪く、結果本筋の進行からなんか浮く、ここは減点です。

    シナリオ総量自体は約四十万字と、ミドルプライスの携帯ゲームとしてはそこそこといったところ。
    ただし、原作者本人が後に言及している通り構成が横に広く、縦に薄いという問題を抱えています。

    本作は二十一話分のシナリオが用意されているんですが、一周のプレイ時間が短めなのに周当たりの共通部分がかなり多いのでここでの悪印象がかなり大きいです。

    具体的には導入編となる「一話」、敵から死の宣告が行われる「二話」、黒幕との初顔合わせで終わる「三話」。
    周回を重ねていけば、選択肢が追加されていくとは言え大筋は変わりません。
    これをもっさり気味なスキップの中で繰り返し見せられるストレスがかなり厳しいです。

    一話と二話の間に派生単独シナリオ「四話」~「六話」のいずれか、二話と三話の間に同じく「七話」~「十四話」のいずれかが選択肢によって挿入されるのですが、たぶん初見だといきなり数字が飛ぶので面食らうと思います。

    加えて「俺たちの戦いはこれからだ」エンドなのがボリュームを必要以上に少なく見せています。
    後日談+単独エピソードの「十五話」~「二十一話」を合わせ、横に幅広くするのではなく縦に連ねる形にしておけば解決される問題だと思うだけに、残念。

    時間をかけて全分岐制覇した私だからこそそう思うので、ここを本作最大の問題点として挙げておきます。

    シナリオ中で語られる蘊蓄もまぁこの界隈に詳しくない人なら知らないだろうなあってくらいなので、読書家で目が肥えた方、シリーズのファンでない方の評価が厳しくなるのもわかります。
    ただ、ライト層向けならこのくらいでいい気もするので、なんとも言い難いところ。

    ちなみに取り扱う話のジャンルとしては「都市伝説」を謳っています。
    と言っても、後に本作とのコラボ作も発表された『流行り神』シリーズのように有名な既存都市伝説や神話などにそのまま題を取った事件を起こすわけではありません。

    エッセンスを抽出したうえで創作した本作オリジナル+『学校であった怖い話』からファンサービスが少々といった感です。
    学生ならではの何気ないノリやネット上のサービスを端緒に話が推移していき、なんかなぁなぁで平和に終わったりもする展開は悪くないです。

    反面、強烈な訴求力には乏しいです。
    もっとも肩透かし気味なオチも結構記憶に残りましたし、なんだかんだでバッドエンドの方にも妙な味があって個人的には好きだったりします。
    文句を言い出したらキリがないんですが、同時にいいところ探しも無限に出来そうなくらいには好きです。

    主人公「賽臥隆恭(さいが・りゅうすけ)」のキャラも結構ハマってます。
    いわゆる魔眼系の特殊能力を持ったダウナー系現代っ子なんですが、振り回され+後輩ポジションに収まってからなんだかんだで先輩を立ててる辺りとか、周囲が奇人変人ばかりで相対的に常識人になってる辺りとか。

    彼の性格が脱力系の話を引き立ててくれたり、死の恐怖に怯える等身大のところを見せてくれたりとか。
    よく言われる点として今回特殊能力はギミックとして仕事をしてくれませんでしたが、シナリオ上の要所では機能してくれたかと。

    「万物の真偽を見抜く眼」を通して事件を解決していくというゲームコンセプトは微妙でしたが、続編を出せるポテンシャルはあると思います。

    事実、発売当時に開発費は回収できたようなので続編にOKサインは出たそうです。
    ただし、本作の開発は東南アジアの会社に委託するというよくわからない状態にあったらしく、原作者の飯島氏はそれを憂いて自前のスタッフを揃え、規制の無い同人に活動を推移していきました。

    要は、本作のファン、というか私じゃ完全な評価を下すためには続編待ちと言う辛い状態に長く置かれることになったのです。
    いささか評価の付け方としては卑怯かもしれませんが、余談も兼ねてそういうことで。

    一応『アパシー ミッドナイトコレクション vol.2』、『アパシー 流行り神』といった作品に本作『探偵局』のキャラクターはメインで出演しているのですが、いずれも本編の進行はありませんでした。

    本作ではとりあえず出しただけになってしまいましたが、同人でリリースされる『アパシー 学校であった怖い話 2008』シリーズのキャラが出演していることが今後この『探偵局』の追い風になるか否か?

    と、少々余計な話をしてしまいましたが、本作の続編が出て内容を拾い上げれば、評価も上向く。
    そうでなく、投げっぱなしなら据え置き。現状ではその程度のこぼれ話です(2019年3月現在)。

    恐怖に溺れるでも、恐怖に挑むでもなく、今はただ、いなすだけ。
    そんな主人公の姿に惹かれるからこそ目線を追いたくもなる――、この言葉に嘘はありません。

  • 都市伝説をテーマに据えたアドベンチャー作品。
    スキップ機能が無い・セーブ枠が1つしか無いというのは残念。
    フリーズバクも有るらしい(汗)
    ミステリー作品は好きですが、こちらはどの層を狙って発売した作品なのか良く分かりません…。

  • 今年(08年)の夏、<a href="http://www.square-enix.co.jp/774/" target="_blank">ナナシノゲエム</a>を筆頭に
    様々なホラー、ミステリー系ゲームが発売されたのをキッカケに、
    ホラー・怪談・怪奇現象等がすこぶる苦手なわたしが
    どうしてか、そっち系ゲームに惹かれ、何作かプレイしたうちの、最初の一本です。

    これの旧作にあたるSFCの「学校であった怖い話」「晦(つきこもり)」、
    それと同じくSFC版「弟切草」を友人にプレイを余儀なくされた時、
    怖いからなるべく消極的な選択肢で…と動いていたのが
    逆に恐怖を招く事もある、という事を学んでいたので、
    ガンガン積極的な選択肢で攻めてみました。

    けどこの作品は学怖や晦に比べるとかなり恐怖度は低く、
    話もホラーというより「不思議系」が多かったのが意外と言えば意外。
    攻略サイト様等を参考にさせて頂きながら、収録されているシナリオのほとんどは
    見てみたと思います。
    …の割りに、コレ!という好きな話がないのは残念な事実。
    このシリーズと言えば、登場人物は実写というイメージが強いのもあり、
    また、「怖くない」というのが旧作たちに比べると悪い方向に働き、
    印象に残らない作品になってしまっている感があります。
    いや、わたしの主観ですが。

    でもキャラはなかなか可愛くて良かったし、
    一話一話はそんなに長くなく、空き時間プレイが出来るような気がするので
    ガッツリサウンドノベル!というより
    ゆる〜くサウンドノベルやってみたい、という人にはオススメしたいです。うん。

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