- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988105055636
感想・レビュー・書評
-
九州・日豊本線築橋駅近くで、多額の現金が奪われ惨殺された二つの死体が発見された。事件の容疑者として浮かび上がったのは、榎津巌(緒形拳)という男である。しかし榎津は警察の追及をあざ笑うかのように、九州から浜松、東京で五人を殺したうえ、史上最大とも言われる重要指名手配の公開捜査をかいくぐって逃亡を続ける。
時には大学教授、時には弁護士と称して、殺人、詐欺、己の欲望のままに女に明け暮れる冷血で大胆な榎津。驚くべき犯罪の才能をみせるこの男の行く末とは…。
彼をこれほどまでに駆り立てたものはなんだったのか。そして、その生き様が社会に、我々現代人に問いかけるものとは、いったい何なのであろうか…。
榎津厳が詐欺と殺人を繰り返す事実関係を淡々とドキュメンタリータッチで描きながら、榎津が自分の妻とキリスト教徒の父親の不義を疑ったことから始まる根深い確執があり、榎津の中に父親が象徴する良識や道徳に対しての不信感と憎悪が拭い難くありそれらに対しての復讐が榎津の殺人と詐欺の根本にあること、榎津だけでなく息子の嫁に対しての欲望を捨てきれない榎津の父親など欲望に流され易い弱い人間たちの群像劇、自分の正体を知られても浜松の売春宿の女将との未来を夢見てしまう榎津の安らぎを求める孤独さ、緒形拳や三國連太郎や倍賞美津子など演技派俳優のアンサンブル、人間の中の善と悪を描いた傑作実録犯罪映画。
ラストの積年の想いをぶつけ合う緒形拳と三國連太郎は、必見です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
迫力と緊迫感が持続する2時間20分。緒形拳をはじめ、三国連太郎、倍賞美津子、小川真由美、清川虹子、北村和夫、ミヤコ蝶々などの名優たちが織り成す情念的な人生模様から一刻たりとも目が離せない。破滅型の犯罪者の心の底は見えないけれど、信心、信頼、信用、を憎み、徹底的に背を向けた人間の、それは皮肉にも自らへの信念だったのだろうか。次第に自分で作り上げた人生の美学に縛られ、自分でも後戻りができなくなった男の物語だったように思う。それにしても深い情念が渦巻く世界観。終盤の三国連太郎と緒形拳の対決シーンには息を呑む。
-
(1979年作品)
-
反社会的なヒーロー。