美術手帖 2014年 09月号

制作 : 美術手帖編集部 
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感想・レビュー・書評

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  • 特集を知って即購入に走ったのだが、表紙のポップさも素敵な号。絵画の贋作について、贋作者へのインタビューや過去の大きな贋作事件、今も続く真贋論争など、贋作の A to Z が読みやすい分量と記事のレベルで、コンパクトにまとめられている。

    贋作師ジョン・マイアットのインタビューを読むと、贋作商売というのは人間心理のツボをうまくついた商売だとつくづく思う。絵画商売は原則として1点ものの商売なので、既存作品の完全コピーはできないから、描く人物がある意味でのオリジナリティを発揮して「未発見」の作品を作り上げる。「真似ているのは絵でなく、画家のもつスタイルなのです」というマイアットの言い分は、ある意味真実。絵の才能は人並みより上回っているのに、努力を積み重ねても画家の商売に就くのが難しかった人間が、簿外の報酬や屈折した名誉欲を満たすのには、自分がおおっぴらに名乗れないまでも、なかなか都合がいい。しかも、その道のプロといわれる鑑定家が「真作」と判定してしまう場合もままあるというのが、「世間ってこんなもんだよ」的な、ある意味の痛快さも増幅させる。希少品を持ちたい人間と、そこに目をつけた人間の攻防戦、またはある種のゲームは、金融の世界以上に人間の「欲」に正直だと思う。

    贋作者列伝も、結構真にせまったリアルなものから、「なんでこの程度で」というものまであって、そこも面白く読んだ。いつの時代も、名画を欲しがる客のレベルに合った贋作者が生きているんだろうなと思いつつ、贋作製作テクニックの解説ページに、「画家のサインは練習あるのみ」と書かれているのには笑った。贋作者といえど、やっぱり修練あるのみ。

    本好きとしては、贋作を扱った書籍(と映画)の特集がもう少し充実していればさらに嬉しかったのだが、そこは薄味で少々残念。レギュラー記事も面白く読んだが、壇蜜さんをルノワールの意匠で撮ったグラビアは完全にすべっていたのではないかと。壇蜜さんは壇蜜さんとして撮ったほうが素敵ですよ。

    • シンさん
      こんばんは。これ面白そうですね。このあいだ栗原裕一郎さんの『盗作の文学史』を読んで、すごくよかったので、こちらもチェックしてみます。贋作にか...
      こんばんは。これ面白そうですね。このあいだ栗原裕一郎さんの『盗作の文学史』を読んで、すごくよかったので、こちらもチェックしてみます。贋作にかける情熱というのは、どこかそそられるものがありますね。

      あ、それと……読書会ってそういうことだったのですね。しばらくの間全く気がつかず、びっくりしました。やっぱりすごいですね。
      2014/08/30
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      シンさん、こんばんは。

      芸術作品のディーリングや、画商さんというお商売の優雅な胡散臭さが昔から好きなので、この手の本はよく手に取ります...
      シンさん、こんばんは。

      芸術作品のディーリングや、画商さんというお商売の優雅な胡散臭さが昔から好きなので、この手の本はよく手に取ります。絵画だけではなく、池内紀さんの『ハレスはまた来る』のような、偽書のエピソード集もまた面白いですね。

      読書会は、字面でみるとまあ大層な感じですけど、私はつまるところ、会議室を取って、受付メールの返事を打って、飲み会の会場を予約してるだけで(笑)。ディスカッションというか、ツッコミ合戦は出席者のみなさまにおまかせです。
      2014/08/30
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      自己レスです。『ハレスはまた来る 偽書作家列伝』は種村季弘さんの著作でした。
      自己レスです。『ハレスはまた来る 偽書作家列伝』は種村季弘さんの著作でした。
      2014/08/31
  • 贋作を作るための技法や、犯罪性、贋作についての歴史や批評を語っていく流れはアート界の状況を独特な視点で語っていて面白かった。大谷芳久へのインタビューも刺激的。ただアーティスト・インタビューが無かったのが残念。

  • 「美術手帖9月号:贋作ってなに?」 http://book.bijutsu.co.jp/books/2014/08/2014/08/20140818.html … 読み応えたっぷりで贋作制作者へのインタビューも。作家本人が自作と認めたなら本物でいいじゃん。贋作と見抜けず高値がつくなら本物でいいじゃん。真偽の追究こそが作品の純粋な鑑賞から遠ざかっている気がする

  • 贋作特集、贋作美術館にいきたい

  • いいい胃が痛い、、、こんな特集しやがって。。。

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    http://book.bijutsu.co.jp/books/2014/08/2014/08/20140818.html

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