Dr Wortle's School (Chronicles of Barsetshire) (English Edition) [Kindle]

著者 :
制作 : MickImlah 
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  • 数十年前、NHKの教育ラジオ番組でこの物語が人知れず朗読されていたのを偶然聞いたのが初めての出会い。当時、中学生だったが、英語は苦手だった。しかし、その番組を聞いていて幾つかのフレーズが理解出来た事に衝撃を受け、それ以来英語に関心を持つようになった忘れられない本。内容が知りたいと紀伊国屋でイギリスからわざわざ数ヶ月かけて取り寄せてもらった。その後、英語を猛勉強し、今では仕事で世界中を飛び回るようなったが、この本に出会っていなければそれはなかったかもしれない。

    さて、内容だが、19世紀のイギリス、ビクトリア女王の時代に書かれた小説であり、当時のイギリスの上流階級の子息がオックスフォード大学に入る前の準備のための学校が舞台となっている。そこに教師として赴任したピーコック氏は誰もが認める紳士であり、教師としての資質やスキルは卓越しており、採用した校長のウォートル氏は満足していた。

    そんな中、ある日、ピーコック夫人を知っているというアメリカ人の男が学校を訪れた事で事態は思わぬ方向へと展開する。 曰く、その男の兄がピーコック夫人の本当の夫であり、夫人は重婚者だと。それを広められたくなければ金を払え、と。ピーコック夫妻は元夫は死亡したと信じていたが、それを証明する術はなかった。ゆすりは毅然と断ったが、噂は瞬く間に地域に広がり、地元新聞もスキャンダルを書き立てた。ウォートル氏は、地域の司教や子息を預ける親たちから非難を受けるが、一貫してピーコック夫妻を守ろうとした。親たちは動揺し、生徒を学校から引き揚げ始め、ウォートルは窮地に立たされる。夫妻は、責任を感じ学校を去る決意をするが、ウォートル氏が取った行動は如何に。

    小説を通して、当時のイギリスの上流階級の宗教観やが絡み合う中、正義とは何か、愛とは何か、という普遍的な問いについての葛藤や矛盾が描かれている。形式にこだわる司教や保守的な一部の親達に対して、高い能力持ち生徒たちからも愛される紳士淑女であるピーコック夫妻の内面こそが最も大切なものであると説くウォートル氏。そして氏の友人は、頑なであるウォートル氏に親身になって落としどころをアドバイスする。正論と正論がぶつかりあった時にこそ、どう立ち振る舞うかという事が問われるのは洋の東西を問わない。

    英語は幾分、古めかしい表現もあるが、比較的読みやすっく、英語の純文学の読み物としてはおすすめである。この本は邦訳もされておらず、おそらく読んだ事のある日本人は極めて少ないと思われる。しかし、そうした誰も知らないマニアックな本に当たるのも一興である。

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