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- / ISBN・EAN: 4523215038669
感想・レビュー・書評
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誰しもが生きていく中で少なからず体験するであろう、現実世界における行き詰まりと、当人の心の中で起こる精神的逃避を、境目が曖昧で混然とした、けれど、とても吸引力のある映像構成で形にし尽くした監督の技量に感心した映画。
有名映画監督のグイドは、長らく新作の構想を完成させられないまま、映画の撮影準備に追われる羽目になっていた。
そんな中、彼の新作映画になんとか関わろうと、役割欲しさに彼に群がる俳優や製作陣が彼の神経をさらに苛立たせていた。
そこに加わる、妻と愛人の間に起こる軋轢と、埋められない心の溝。
精神を圧迫され続けた彼は、必死に映画の構想を考え続けるうちに、幼少期のとりとめない記憶の回想から始まって、やがて、身勝手で奇妙な妄想に心を囚われていくけど…。
映画監督が映画監督を主人公に据え、映画の構想に悩むという設定を活用したからこそ、現実と虚構の境目が曖昧なままの、不可思議で魅力的な映像を撮れた、という面はあるとは思います。
しかし、それと同時に、グイドの生々しい身勝手さや愚かさ、そして卑小さが、心のうちで起こり、やがてそれに囚われていく現実逃避を、誰もが少なからず持つリアルなものとして、鑑賞者に突きつけてきます。
現実がとうとう空想に呑み込まれてしまったかのようなラストは、狂気じみていて、強い印象を残しました。
ただ、私が狂気と破滅の象徴のように感じたラストシーンに対する印象は、観た人によってかなり違うようです。
中には全く正反対のことを考える方もいるもよう。
他に観た人の感想を聞いてみたい、なんとも不可解かつ蠱惑的な作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
OTTO E MEZZO
1963年 イタリア+フランス 138分
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ/アヌーク・エーメ/クラウディア・カルディナーレ
映画監督のグイド(マルチェロ・マストロヤンニ)は新作の撮影を目前にしてスランプ、温泉地に療養に行くが、プロデューサーや女優、関係者がひっきりなしに押しかけてきて少しも心休まらない。とはいえ彼自身も人妻の愛人カルラ(サンドラ・ミーロ)を呼び寄せたり、さらに妻のルイズ(アヌーク・エーメ)も呼んだりと無節操な私生活。次第に追いつめられたグイドは、過去の回想や妄想に現実逃避を始め…。
若い頃にビデオで何度か見て好きだったフェリーニの名作を改めて。記憶の中には幻想的で美しいシーンやラストの祝祭感ばかりが強く残っていたのだけど、すっかりグイドより年をとった今見ると、グイドのクズっぷりばかりが目についてイラッとすることしきり(苦笑)まあそこも見据えて監督が自分の分身としてグイドを描いたことはある意味潔いといえるかもしれない。
幸福だった少年時代の回想と、サラギーナが砂浜で踊る場面がとても好き。大勢の女性が登場するけれど、サラギーナはとりわけ異彩を放っている。浜辺で暮らすサラギーナは、一応家らしきものはあるけれどたぶんホームレスのような狂女。子供たちは彼女を冷やかし半分、性的好奇心半分で、お金を与えてルンバを踊ってもらう。
愛人と妻なら妻役のアヌーク・エーメが圧倒的に好み。メガネも知的で素敵。そのせいもあって彼女に感情移入してしまったので余計にグイドのダメンズぶりに苛立った。愛人カルラは美人で華やかだけれど会話の内容は空虚、あまり知性が感じられないタイプ。とはいえそんな彼女を好き好んで愛人にしているのはグイドなのだから一番悪いのは彼女ではなくグイドの趣味の悪さ。
一番印象的だけれど一番最低なグイドの妄想は、妻や愛人、これまで関係を持ったり好意を持った女性を一堂に集めたハーレム生活を夢想する場面。本当にどこまでも自分に都合がよすぎて…。妻にはものわかりよく愛人と仲良くしてほしいとか虫が良すぎるでしょ。妄想ハーレムの中では、ある一定の年齢に達したら女性は「2階」に追いやられる。常に若く美しい女性たちにチヤホヤされていたいグイド。妻はその間シンデレラのように家事をさせられている。どんなドリームだよ。
妄想の中だけど女性たちは反乱を起こす。しかしグイドは彼女たちに対して鞭をふりまわして少しも反省しない。基本的にグイドは女性たちにもそれぞれの意志があるということを全く認めていない。ただただ自分にとって都合の良い存在でいてほしいだけ。ついに彼は完全なる妄想で理想の女性クラウディア(クラウディア・カルディナーレ)を生み出すが、彼女ですらグイドの思い通りにはならない。
…と、ついついグイドに対するディスりが止まらなくなりますが、映画全体としては白昼夢のような夢と現実の境界がどんどん曖昧になっていく雰囲気がとても好き。そしてラストシーンの祝祭感。おそらくグイドは直前のパーティのシーンで自殺したのだと自分は解釈しているけれど、そもそもその前からもうグイドは生きてる感じがしていなかった。死んでいることに気づかずウロウロしてる系の人みたいな印象もあり、そういう部分は今見てもやはりとても好きでした。 -
たまたま北野作品のことを調べていたら、『監督・ばんざい!』とかあの時期のはフェリーニの『8 1/2』だと言われていたので鑑賞。
これで初めてフェリーニの映画を観てしまったんだけど、
それまでの作品を観た上での方が楽しめたかもしれない。
これ、わかりにくい作品では無いと思う。
むしろよくわかる。
つまんない作品でもなくて、個々のエピソード(妄想・夢・幻覚)は
とても面白かった。
そのかわり、それらのエピソードが入り混じって混沌としてて、
ストーリーが分断されているのでその部分は一見わかりにくいのかも。
ハーレムのくだりとか最高なんだよ・・・。
以前から気になっていたこと、映画監督等ものづくりをする人間にとって
アイデアが枯渇することはないのか?という疑問に答えてくれた作品でした。
監督の自問自答をそのままフィルムに焼き付けたような内容。
これのミュージカル版リメイク『NINE』は、よりわかりやすくなってます。
僕自身何年も抜け殻みたいな状態になっているので、沁みる。
キャスト、主演のマルチェロさんが非常にカッコいい。
愛人役が全然かわいくなくて奥さん役がすごくかわいい。
これはやっぱり、ヒロインはこっちですよーってことなのでは。
そういえば、『NINE』も含めて主人公がモテてる話ってレビューを見ますが、
モテてないです。むしろ逆。
映画監督だから女性と知り合う機会は多いけど、
結局性欲や恋愛感情と仕事の上で女優を探す行為も、
全て混沌としてて、イコール愛を知らないってことなんじゃないかと。
枢機卿がする鳥のさえずりの話って、
冒頭で流れる『ワルキューレの騎行』につながってるのかもしれない。
ここは要検証。
あと車。
ジュリエッタ・スパイダー、ポルシェ356、シトロエンDSと
各国の名車がでてくるとこがすばらしい。 -
アヌーク・エーメがお洒落で素敵で最高! 目で追ってしまう。マルチェロ・マストロヤンニって今までそんなにいいと思ったことなかったけれど、はじめて格好いいかもと思った。スランプって怖いね。死んだのかと思った。きっと何度もこれからみかえす映画になりそう。
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フェリーニ「8 2/1」http://www.imdb.com/title/tt0056801/ … 観た、やっと観た、ウルトラおもしろかった!ゴダールみたいな気取った映画かと思っていたらコメディというか全体的にバカバカしい(褒めている) 2時間超なのにあっという間。そして音楽がとてもいい。アヌークエーメ♡
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フェデリコ・フェリーニXマルチェロ・マストロヤンニ
の完璧な映画。完璧なんて絶対ない、いや、あるんです、ここに…。