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感想・レビュー・書評
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酒場で2派に分かれた歌やダンスの合戦、人が歩いている間に年代が変わって行くことなど、斬新な演出が多い。
すごいのは集会の場面。大島渚も舌を巻いたように、カメラが360度回転すると、時代は変わり、死人も生き返る。そんなことおかまいなしにフィルムを回し続けるアンゲロプロスの心意気にほれる。
何よりも、急がない旅芸人たちのゆるやかな歩調がここちよい。
「傷だらけの自由に希望をもて」というシャウトもいいね。
【ストーリー】
旅芸人の一座11人は、各地で古典劇を演じつつ、いつしか時代の目撃者の役割を果たして行く。
軍事政権下、ある時には作品内容を前世紀の田園劇(それは実際に劇中劇として演じられる芝居“羊飼いの少女ゴルフォ”)と偽って--ちょうどナチ占領下のフランスの「天井桟敷の人々」のように--製作された、旅一座の家族を通じギリシア現代史をパノラミックに総括した壮大な映画の叙事詩だ。
一家の物語はそのままアトレウス家の古代神話(戦争から帰ったアガメムノンが妻とアイギストスに殺され、やがて息子オレステスがその復讐を姉エレクトラと共に果す-)をもじっている。
これを39年のメタクサス将軍の極右独裁体制の開始から、ムッソリーニの侵攻、42年の独軍占領、44年の国民統一戦線(共産党系の国民解放軍と亡命した国王の復讐を望む王党派の民主国民同盟の連立政府)の勝利、戦後のゲリラ下部組織の掃討から共産派弾圧、52年のパパゴス元帥の軍事政権の誕生までの歴史事実を、生々しく介在させ、政治の荒波に翻弄される画面外の民衆の息吹すら感じさせる。
ひたすら曇天下での計算され尽くした路上のシークェンス・ショットは、古典劇の重みの中に過去の迫真の蘇りがみられ、幾度も息を呑んで見守ってしまうはずだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示