シルビアのいる街で [DVD]

監督 : ホセ・ルイス・ゲリン 
出演 : グザヴィエ・ラフィット  ピラール・ロペス・デ・アジャラ  ターニア・ツィシー 
制作 : ルイス・ミニャーロ 
  • 紀伊國屋書店 (2011年4月27日発売)
3.21
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215056236

感想・レビュー・書評

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  • 美しい街の風情と、音と光と風、そしてアンニュイな雰囲気を織り交ぜて撮りあげた、雰囲気イケメンならぬ雰囲気映画。

    もっとありていにいうと、ようこんなもん撮ったな!?というのが(かなりの)本音の、スペイン・フランス合作のストーカー映画。

    夏のフランスのストラスブールを舞台に、かつて恋した女「シルビア」の面影を宿した美女を、男がつけまわす。それだけのお話。

    でも、追いかける男とつけられる女それぞれのアンニュイで思いつめた感じの表情、それなのに何一つ明かされない故にかえって鑑賞者の想像力を掻き立て続ける「平坦な」展開、音楽セレクトの妙、ストラスブールの美しい街並みや生活音、光や風といった自然物を捉えた映像美などが、細かな演出の積み重ねとして効いていて、不思議な余韻を残します。

    ここまで緻密に組み立てられて目の前に示されると、ストーカー男の病んだやばい空気感さえも物語に彩りを添えるスパイスとさえ思えてくるから、なんとも不思議。

    まあ、美男美女だから「観られる」ものになっている点は否めない気はしますが…。

    想像力を掻き立てる芸術映画ととらえれば、とても意欲的でよくできた作品だと思います。

    消えない不可思議さと余韻に、この監督の別の作品を手に取ろうと気には確実になります。

  • 赤いバッグを肩から下げた長髪の男は、そのバッグの赤さをのぞけばキャメラに向かってごく限られた仕草しか演じようとしない。黙ってイスに座っているか、それとも路上を歩いているかのどちらかでしかない。めいめいの女性をながめてはスケッチブックに鉛筆を走らせる。できることといえば、飲みかけのコーヒーカップやビールのグラスをテーブルにひっくり返すことぐらいだ。

    ところが、監督は寡黙でときに不器用な男がはらむ豊かな意味の広がりを夏の乾いた空気にまぎれこませ、誰もがストラスブールとしして知っているドイツ国境に接したフランスの都市を、世界のどこにも存在しないシルビアの街へと変貌させる。そうして、人は映画という名の奇跡に間近に接し合い、あたかもこの映画が初めてこの地上に生まれ落ちでもしたかのような甘美な錯覚に思わず身震いする。

    冒頭も微笑を誘う。ベッドに横たわる男の寝袋がキャメラにおさまることはない。室内は、近くを通りすぎる車のヘッドライトは、その後で画面を満たす夏の陽光への反映として描かれる。ベッドメイクをしたいというメイドの声でそのショットが終わると、絵に描いたような小津的な構図が画面に広がり出す。T字型の通りの建物正面が視界をさえぎり、かなりの円形となるその前の通りを複数の男女が右から左、左から右へと横切り、自転車や車も低いサウンドをだしながら姿を現す。やり過ぎかと思えるほど、導入は視覚的にも聴覚的にも充実しきっている。

    クライマックスは、ムルナウの傑作『サンライズ』のように街路樹に覆われた路線を低い走行音とともに滑っていく路面電車が舞台だ。明るいその車内がその舞台となるのだが、この光景の尋常ならざる美しさをやたらな言葉で汚す木にはとてもなれない。人は、映画に「美しい」という属性がそなわっていたことを不意に思い出し、この、街の路面電車の窓ガラスが途方もなくおおきなものであったことを目頭を熱くしながら祝福することしかできない。

     いうまでもなく、美しいのは路面電車の滑走運動にほかならない。男が車中で黒髪の女に声をかけるまでの、追跡のサスペンス豊かなシークエンスは、一瞬ごとに画面が生々しく露呈されるかのようで、文句なしにすばらしい。

     特に、女が下車した停留所のイスに、男が黙って座ったままでいる3日間の光景は忘れがたい。そこには何両もの電車が行き交い、電車のガラスに映る光景は、ときに現実と反映とが見分けがつかなくなりさえする。そして、ジョン・フォード風の大気の流れが巻き起こり、別の女の長い金髪を思い切りかき乱したりする。やり過ぎだと思うだろうが、それが例外的に許される映画だ。

    【ストーリー】
     朝、ホテルの一室。ベッドの上で考え事をしていた青年(グザヴィエ・ラフィット)は、やがて地図を片手に街へ出てゆく。カフェで女性客に声を掛けるが無視され、不注意から運ばれてきた飲み物をこぼしてしまう。

     翌日。演劇学校前のカフェの奥に陣取り、客を観察してデッサンをしている。ノートの余白に“シルビアのいる街で”とフランス語で記す。カフェの喧騒、市電の通り過ぎる音、ジプシー音楽風のメロディーを物悲しく奏でるバイオリンの女たち。彼は、ガラス越しに見つけた美しい女性(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)に目を止める。彼女がカフェを後にすると、彼も慌てて後を追う。

     中世風の美しい町並みの下、繰り広げられる追跡劇。彼は“シルビア”と声を掛けるが、反応はなし。市電の中で再び声を掛ける。「バー飛行士で6年前に会ったシルビアだよね。あの時、君がナプキンに書いてくれた地図を、今でも持っているよ」。だが、女の返事は「自分は1年前ににこの街に来たばかり。人違いよ」とそっけない。加えて「ずっと尾行されていて気味が悪かった」と非難まで浴びてしまう。

     1人取り残される青年。夜は孤独に、思い出のバー「飛行士」で過ごす。翌朝。再びカフェに姿を見せた彼は、やがて市電の駅へ。通り過ぎる市電の窓越しに見え隠れするたくさんの人々。ガラスに反射するいくつもの人影。彼のノートが風にめくられてゆく。女の後姿。ブロンドの長い髪が美しく舞っている。駅に佇む彼の前を、何本もの市電が通り過ぎていくのだった。

     名匠ビクトル・エリセが“スペインで最も優れた映画作家”と期待を寄せるホセ・ルイス・ゲリン監督による初の日本国内劇場公開作品。かつて出会った女性の面影を求めて、街をさまよう青年の姿を追う。ヴェネチア映画祭出品作。出演は「ガブリエル」のグザヴィエ・ラフィット、「女王フアナ」のピラール・ロペス・デ・アジャラ。

  • びっくりするぐらいキレイな映画。
    ここ数年見た中でいちばん好き。

    街の音、人の会話、すべてが作品になっている。ほんとに素晴らしい。

    多分この映画以上に好きになる映画には出会えないと思う。

  • 解説:

    数年前に出会った女性の面影を求めて思い出の地をさまよう青年の心模様を、独特な映像表現で紡いだ映像詩。

    情緒あふれる古都ストラスブールを舞台に、主人公の風変わりな恋物語を、緻密に構成された音と絵画のような映像美で描く。

    監督は、ドキュメンタリーとフィクションの境界上で野心的な映画製作を続け、名匠ヴィクトル・エリセの後継者といわれるスペインの俊英ホセ・ルイス・ゲリン。

    人々のざわめきなど街のノイズを生かした音響や、独特の演出が余韻を残す。

    とあるカフェ、客を観察してはスケッチをしている画家志望の青年(グザヴィエ・ラフィット)がいた。

    ガラス越しに一人の女性(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)を見つけハッとした彼は、彼女が店を出るとその後を追う。

    彼女を追って市電に乗り込んだ彼は、あるバーで数年前に出会ったシルビアではないかと声を掛けるが……。

  • 美しい街に、美しい青年と美しい女たち。

    果たしてシルビアは実在するのか。

  • ストラスブールの街を歩いているような気分になれる映画。
    フランスの女性ってセンスが良くて美しい。

  • ひとこまひとこまが綺麗
    いつまでもシルビアを探している

  • 映像と雰囲気は素敵でしたが、ストーリーがイマイチ。惜しいです。

  • カフェでみかけた女。その女を追いかける男。

    とてもおしゃれで、モデルのような登場人物。

    なんだか、もったいない。もうひとひねり、あれば。

  • ひたすらに追いかける話。
    雰囲気を楽しむ映画。
    ストラスブールの街並みがとても綺麗。

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