Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty (English Edition) [Kindle]

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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780307719232

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  • 経済発展の秘訣を搾取的な制度設計からより自由主義的で公平な制度設計に帰結させる点には、開発学の文脈で現代的には粒度の浅さを感じざるを得ないが、事実、過去数千年に当たり、開かれた権利のもとに経済成長の萌芽が見られていることを確認するにみるに、面白い議論であるし、また、この研究をもとにガバナンスと経済発展について、ますます議論されてるのだと思う。

  •  本書は、「現役最強経済学者」MITのアセモグル先生とハーバードの政治学者ロビンソン先生が15年に及ぶ共同研究の成果をもとに数々の歴史上の事例を交え、一般向けに国家の盛衰を決定づけるメカニズムについて解説したものです。

     一言で要約すると、「制度」がインセンティブを形成し、インセンティブが経済発展を決める、という経済学の王道的見解で、ノーベル経済学賞受賞者6名と共に、レビット先生も”Truly awesome…brilliant in its simplicity and power.”と表紙に絶賛されてます。

    もう少し長く要約すると、

    現在の世界の経済格差を生んだ原因は、気候や地理的要因、文化、無知などではなく、「制度(Institution)」の違いによるもの。

    制度には、政治&経済について、①Inclusive(=全員参加型) と②Exclusive(=少数支配型)の2種類あり。

    Inclusive(=全員参加型)な政治制度が、Inclusive(=全員参加型)な経済制度を生み、人々のイノベーション・創造的破壊へのインセンティブを形成し、持続的な経済成長が可能となる。

    逆に、②Exclusive(=少数支配型)な制度下では、エリート層が既得権益の維持と政治的安定を優先するため、イノベーション・創造的破壊は忌避され、経済は(いずれ)停滞する。

    人類史上、殆どの国家が②Exclusive(=少数支配型)であったが、名誉革命後の英国で初めて①Inclusive(=全員参加型)な政治&経済制度が成立し、産業革命が勃発。

    現在の経済格差が生じたのは、産業革命以降であり、産業革命を受け入れ可能な政治&経済制度=①Inclusive(=全員参加型)な制度を採れたかどうかで勝負が決まった。(19世紀後半当時、日本はギリギリセーフで、中国はアウト。)

    Exclusive(=少数支配型)な政治体制下でも、かつてのソ連の様な短期的な経済成長は、可能だが、イノベーション・創造的破壊へのインセンティブが無いため、やがて失速する。

    また、制度は、好循環と悪循環を生みがち、方向を変えるのは容易でなし。(先進国の開発援助やミクロ経済学的な施策もかなり否定的)

    現在の中国は、Exclusiveな政治体制下で、ある程度Inclusiveな経済制度を発展させた例だが、今後成長を持続させるには、政治制度、財産権の確保等の改革が必要。放っておけば、自然にInclusiveな政治体制に移行するという甘いものではない。ブラジルの方が政治的にはInclusive。

    解説としては、himaginary氏が紹介しているMITニュース↓がベストでしょうか。
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20120323/All_the_difference_in_the_world 

    また、①Inclusive(=全員参加型) と②Exclusive(=少数支配型)という(やや曖昧な)二元論で切り過ぎてない?とお感じの方が多いようです。

    山形氏
    ■[書評]アセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するか』上巻:サクサク読めておもしろい。が、前からこの種の制度派について思っていた疑問はそのまま。
    http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20130624/1372091174

    池田先生
    単純で曖昧な制度決定論 - 『国家はなぜ衰退するのか』
    http://agora-web.jp/archives/1543549.html
    (最後までお読みなったのかは、?)

    出版後の論争については、himaginary氏が結構フォローされてます。

    中国がアセモグル=ロビンソン理論を打破するとき
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121114
    アセモグル=ロビンソンとCAPM
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121203
    (このエントリは秀逸)
    アセモグル=ロビンソンの「直線史観」
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121213
    アセモグル=ロビンソンと地理的条件:サックスの反論
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121214/Sachs_on_role_of_geography_in_reply_to_AR
    因果関係を示す理論に予測力は必要無い?
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121215
    アセモグル=ロビンソンの「直線史観」:サックスの批判
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121216
    アセモグル=ロビンソンの「直線史観」と文化
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121217/Culture_and_the_historical_process
    やはり病気は経済発展の負担
    http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20121229

    で、現在の日本はどうなんでしょう?といういうことで、↓

    「既得権益層が居座り続ければ、国は衰退する」
    ダロン・アセモグル米MIT教授インタビュー
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130527/248653/
    「まず政治制度が(参入障壁が高く)全く競争的ではありません。その結果、経済制度も競争力を失いました。自動車業界や電機業界のような国際的企業は別ですが、国内の経済が(インフラなど)独占的な企業に支配され、競争がなかったからでしょう。また日本は経営のプロよりは同族による経営が多く、企業統治が不十分です。ここは制度的な問題ですね。

     競争が激しい電機業界の調子が悪いですが、世界中の電機メーカーが「世界的な大変化」に巻き込まれて苦戦している状態です。ドイツでもアメリカでも同じです。これはソニーや他の日本企業だけの問題ではないのです。

     キャッチアップ型の時には、大企業を基盤にしてうまくやっていくことができました。投資をして、既存の技術に適応していけばよかったからです。しかし、米国のソフトウエアやバイオ技術、ナノ技術などのように動きが激しい業界においては、カギとなるのはベンチャーです。果たして国内の環境、経済制度が、新しいプレイヤーが入れ代わり立ち代わりやってきて、容易に資金調達ができ、必要な支援を受けられるものになっているかどうか。そして、一緒にアイデアを実現しようとあちこちからやってくるような人々を雇用できる環境を整えているかどうか。日本はおそらく、米国や他の国々に比べ、そこでつまづいているのでしょう。」

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