NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2011年 09月号 [雑誌]

  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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感想・レビュー・書評

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  • 2011年9月号の目次
    シリーズ 70億人の地球 少子化とメロドラマ

    50年間で出生率が3分の1になったブラジル。国の人口抑制策もなく、女性たちがみずから「産まない」決断をしていった。その背景には何があるのか。メロドラマが少子化に一役買ったというが……

    文=シンシア・ゴーニー  写真=ジョン・スタンマイヤー

     合計特殊出生率、すなわち、一人の女性が一生に産む子供の平均数は世界的に減少傾向にある(世界平均2.56で、日本1.27)。なかでも、人口学者たちが注目しているのがブラジル。1960年の6.3から2009年には1.9にまで激減しているのだ。

     その原因の一つと考えられるのが教育。ブラジルでは、女性が受ける教育年数が延びていて、2000年までには男性を上回った。しかし、女性の教育機会が増えると、出生率が下がることは、なにもブラジル特有の現象ではない。研究者たちがブラジルならではの特徴として関心を寄せているのが、高い人気を誇るメロドラマだ。

     「ノベラ」と呼ばれるこうしたドラマの主人公は、社会進出を果たす女性たちが多く、子供の数も少ない。こうした“先端を走る女性たち”がロールモデルとなり、教育やキャリアへの憧れをかき立てているのかもしれない。

     女性の社会進出と出生率の関係を、ブラジルを舞台に解き明かしていく。
    編集者から

     メロドラマに熱中する主婦たち、子育てしながら内職する2児の母、家を新築する資金を貯めようと働く20代の女性……。この特集は出生率を下げる方法を探る記事でありながら、今のブラジル人女性の姿を克明に伝えているルポでもあります。人口問題に興味がなくても、読んでみると、意外に面白いかもしれませんよ。
     「出生率は下がっていますが、将来を見据えた取り組みは見えてこないですね」――マーケティング会社を経営する女性のこの言葉が、特に印象に残りました。(編集T.F)

    みなしごゾウを育てる

    ケニアには、人間によって母親を殺されたみなしごゾウを助け出し、育てる施設がある。保護された子ゾウたちは、献身的な飼育員によって傷を癒やされ、その愛情を胸に、再び野生へと帰っていく。

    文=チャールズ・シーバート  写真=マイケル・ニコルズ

     ケニアの首都ナイロビ近郊に、幼いゾウたちを育てるナイロビ・ゾウ保護センターがある。飼育員は24時間つきっきりで、特製のミルクを与えたり、身の回りの世話をする。ここに収容されているゾウのほとんどが、密猟者や農場主に親を殺されたみなしごだ。

     1989年に象牙取り引きが国際的に禁止されて以降、ケニアではアフリカゾウの生息数が増加傾向に転じ、2010年には3万5000頭を上回った。しかし、その一方で、ゾウの生息地に農地が広がり、農民たちとゾウの軋轢が高まりつつある。

     みなしごゾウの保護活動を通じて、ケニアに生息するアフリカゾウが置かれた現実を見つめる。
    編集者から

     基本知識を入れようと、特集の主人公、ダフニ・シェルドリックの著書『エレナ 我が心のアフリカ象』(成星出版)を読みました。保護センターでの日々の様子が、エレナというみなしごゾウとの触れ合いを中心に描かれています。発行は1997年ですので、センター設立初期といったところ。まだ試行錯誤も多く、そこから現在のシステムになったのだなと思うと感慨もひとしお。前例のないことを、何十年もかけて改善し続けるって、やっぱり「すごい」です。
     ところで、その著書の中に、日本のテレビ局が取材にやって来たというエピソードが登場します。教育番組の人気キャラクターが、ゾウたちに会いに来たという設定なのですが、ダフニいわく「テディベアとミッキーマウスを足して2で割ったような、緑色のフワフワしたやつ」が現れたとか。賢いゾウたちは、着ぐるみの中に汗だくの日本人が入っていることをちゃんと理解していて、暴れることもなく(むしろ、じゃれまくって)無事撮影は終了したそうですが……この緑色のキャラって何!? やっぱりガチャ〇〇? ネットで検索してみましたがいまだ確証が得られず、気になって眠れぬ夜を過ごしています。(編集H.O)

    鳥になりたい

    大空を自由に飛ぶ夢は、人々の心をとらえて離さない。さまざまな飛行装置と最新鋭の“鳥人間”を紹介。

    文=ナンシー・シュート

     鳥のように空を飛びたい――。人類が抱き続けてきた夢は、航空機の発展によって、かなえられたかに思える。しかし、それでは満足しない人たちがいる。大きな機械に乗るのではなく、翼を手に入れ、思いのままに飛びたいと願っているのだ。

     彼らは、ジェットエンジン付きの翼を装着してドーバー海峡を飛び抜け、エンジンを背負ってパラグライダーで砂漠の上空を飛び、「ウィング・スーツ」を着て上空3500メートルから飛び降りる。人類は翼を手にし、鳥のように飛べるようになるのだろうか?
    編集者から

     子供の頃、わが国を代表するあのマンガに登場する“タケコプター”に憧れなかった人なんて、いないのではないでしょうか。
     自由自在に空を飛び回りたいという願望は世界共通のようです。この数百年の間に登場した、珍しい一人乗り飛行装置の写真に注目してください。1枚目の写真のように、技術はここまで進歩したのかと驚かされるような装置から、まるでおもちゃのような装置まで、個性豊かな飛行装置を見ていると、空を飛ぶことが人々にとっての普遍的なロマンであることを感じずにはいられません。(編集M.N)

    アディロンダックの自然

    ニューヨーク州北東部に、奇跡の復活を遂げた自然が広がる。その表情豊かな森や湖と、公園の歴史を追う。

    文=バーリン・クリンケンボルグ  写真=マイケル・メルフォード

     ニューヨーク州北東部に位置するアディロンダック公園。東京都の面積の10倍以上の広さを誇る園内には、3000以上の湖と40を超す山が点在し、ビーバーやテン、カナダオオヤマネコなどが生息している。

     公園が設立されたのは1892年。このとき、州が所有する土地は永遠に守られることが決まった。設立当初は110万ヘクタールだった面積は現在250万ヘクタールに拡大。公園の6割ほどの土地が私有地で、複雑な土地利用が見られるものの、多くが開発を制限され、かつて林業や工業により破壊された自然が、奇跡の復活を遂げている。

     秋から冬へと移ろうアディロンダックの自然を、マイケル・メルフォードの詩情あふれる写真で訪ねる。
    編集者から

     赤や黄色に染まる木の葉や、風を受けてしなる水辺の青草、吹雪にじっと耐える茶色い木々、雪化粧をまとった山の頂……。季節の移ろいとともに表情を変える公園の自然を収めた美しい写真を楽しんでください。米国西部のイエローストーン(2009年8月号に特集あり)より面積の広いこの公園は、かつて木々の伐採によって荒廃しましたが、行政の力で自然を再生させることに成功しました。さまざまな種類の土地がモザイクのように入り組んでいる事実こそ、その成功の鍵を握っているのかもしれません。(編集M.N)

    南極点に初めて立った男

    100年前、南極点に初到達した探検家アムンセン。栄光を手にした後の人生は、決して平坦ではなかった。

    文=キャロライン・アレキサンダー

     1911年9月、南極・ロス棚氷にあるクジラ湾に1隻の帆船が係留されていた。ノルウェー人探検家ロアール・アムンセンのフラム号だ。アムンセンはこの湾にベースキャンプを設営し、人類初となる南極点到達を目指していた。同じ頃、ライバルである英国人探検家のロバート・スコットも数百キロ離れたエバンス岬にキャンプを設営していた。

     9月8日、アムンセンはキャンプを出発したものの、予想以上の厳しい寒さに撤退。その後、体制を見直し、10月20日に再出発する。犬ぞりとスキー、軽くて防寒性に優れた毛皮服を採用したアムンセン隊は順調に進み、12月14日、ついに南極点に到達。人類初の快挙だった。一方のスコットは、1カ月後の1912年1月17日にたどりつき、そこで初めて、アムンセンに先を越されたことを知る。

     100年前、人類初の快挙を成し遂げた探検家アムンセンの素顔に迫る。
    編集者から

     スコット隊との南極点到達レースがこの特集のメインですが、私が興味をもったのは、アムンセンのその後の人生です。「南極点に初めて立った男」という栄誉を手にしたものの、その後、経済的に行き詰まり、友人とも疎遠になる。知人が北極で遭難したことを知ると、悪条件を押して救助に向かう……。アムンセンが消息を絶ったことをうかがわせる最後の一文が、何とも悲しい余韻を残します。
     しかし、ライバルのスコット隊は、南極点にノルウェー国旗が立っているのを目にしたとき、さぞかし落胆したことでしょう。本誌125ページの写真を見ると、敗北に打ちひしがれた様子がよくわかります。(編集T.F) )

    参考資料:『アムンセンとスコット』(本多勝一著、教育社)

  • 初めて読んだが大ファンになってしまった。世界で起きていることを興味深く取り上げている。毎月買おう。

  • 今月もいいな。 地震前の気仙沼がでてる

  • 今月号にもアラスカの記事がのっていますよ。しかも日本人が書いたものです

    ブラジルの急速に進む少子化の記事、みなしごゾウの野生復帰の記事が特に面白かったと思います。

    写真は相変わらず綺麗ですが、今月号は特筆すべきすごい写真はなかったように思いました

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