Lord of the Flies [Kindle]

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  • Faber & Faber
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  • 小説の一つの原型(原風景)をここに見た。
    なにを書くか、もさることながら、どう書くか、の面白さが、いろいろ提示されている気がした。

    私が一番面白いと思ったのが、主語の言い換え。少年の名前のかわりに「the figure」みたいな抽象的な名詞がよく使われるんだけど(それもいい場面で)、「ええと、これは誰のことでしたっけ?」と一瞬立ち止まったのち、誰だかわかって、「うわっ!●●殺されたんかい!!」と驚かされたりするのが、なかなかに快感であった(これはひとえに私の英語力の問題かもしれず、普通の読者は、瞬間的・自動的に頭の中で誰だかわかるのかもしれない)。

    うちの子の学校(男子校)では、文化祭になると、もやしっ子たちが髪を七色に染め、体育祭では、意味もなく上裸になって、なよなよした肉体をさらけだす奇習があるのだが、これ、the savagesが顔にペイントしてクンクンになっているのと妙に重なる。べつに人殺しの本能が備わってるとか、そこまでじゃなくても、ある種の祝祭的スイッチが入った人間が取る行動というのは方向性としては共通してるんだなあ。面白い。

    あと、いま訳してる小学生向けの平易なチャプターブックに
    「大地からは熟れたにおいが強烈に立ちのぼっていた(直訳)」みたいな文が唐突に登場し、
    「何をおおげさな! 平たく訳しちゃうよ」と苦笑していたのだが、著者にしてみれば、『蠅の王』的な自然描写への憧憬みたいなのをどこかで発露したかったのかもなあ。中上健次みたいな天才のみならず、有名・無名いろいろな作家の心の原風景になっている作品なのではないかと想像した。

    読み終わってから、ネットでかるく評論をあさって、舞台が「第三次世界大戦中の近未来」だと知った。そんなこと、どこに書いてあったのか。あと、サイモンがあんなに重要なカギを握るのがわかってたら、もっとサイモンの紹介箇所(?)もちゃんと読んだのにと悔やまれた。(いろんな子ども出てくるなあ、って感じで最初のほうはけっこう飛ばし読んでいた)ほんとうは再読したいけど、時間もないので、新訳熱烈希望。

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