雪の断章 佐々木丸美コレクション [Kindle]

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  • 復刊ドットコム
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感想・レビュー・書評

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  • 無理やりでも一冊だけ、自分の人生を方向付けた本を挙げろ、と言われたら即座に間違いなくこの小説を指すだろうと思う。それくらい影響を受けた小説。

    講談社の単行本はもちろん、講談社文庫化された小説すら絶版で、長いこと世間からは忘れ去られつつあった作家であったが、その後根強いファンの後押しもあり、復刊ドットコム、創元推理文庫での出版が叶ったときは、例えそれが作者の生前の意思に反するものであったとはいえ、やはり熱心な愛読者の1人としては嬉しかった。

    こういう悲劇的で残念なことがなるべく少なくなるよう、やはり全ての書物の電子書籍化、要するにデジタルアーカイブ化を望む。

  • 忘れ去られた洞窟の様な古本屋、
    引き寄せられる様にして手にした一冊。
    二段組で書かれた物語は、
    予想を裏切る長編で
    空腹も忘れ、夜明けが近付いていた。
    10年に一度くらいしか雪の来ない街、
    誰も訪ねる事のない部屋。

    吹雪になっていた。




    監督と主演女優と原作ヒロイン。
    三者が見事に交錯する稀有な瞬間がここに。

  • 大分昔の作品ですが、ミステリっていうより、
    優しさと切なさが良い余韻です。

  • 小説が書かれたのはかなり前のようで、ところどころ古臭さを感じさせるが、小説の面白さは色褪せないし、今の時代だからこそ読んでほしい作品

  • ビブリア古書堂の事件手帖で取り上げられていたので興味を持った。
    図書館で借りたものが、講談社発行の第12刷(昭和54年12月27日発行)。
    ブクログ登録でバーコード読み込もうと裏表紙を見たら、下の方に小さく「¥750」。バーコードどころか消費税もなかった時代に発行された本なんだと、妙に感動してしまった。
    挿絵のない、二段びっしりの文字量に若干怯むも、あっという間に物語の世界に飲み込まれる。美しい文章って、こういうものなんだなと思った。心理描写や情景の描写がとても繊細。

    迷子の幼女に声をかける青年……今だとその行為が躊躇われるようになるんだぞとか、当時の児童保護はザルだなとか…令和ならではのツッコミ所も諸所ありつつ。
    なんだかんだで、あっという間に読了した。

    何気なく裏表紙の折り返しに目が止まった。
    作者紹介として顔写真と経歴、住所まで書いてあるのに驚く。
    いろんな意味で、昭和ノスタルジーに触れられる一冊だった。

  • 北海道出身の女流作家が、北海道を舞台に書いた作品

  • 斉藤由貴さんの映画版を若いころにレンタルビデオで見たことがありますが映画版とはだいぶ違った印象でした。

    孤児だった主人公の飛鳥の気持ちを中心に物語は進みます。途中で殺人事件がおき、主人公だけが犯人が誰か気づきます。推理小説という感じではなかったですが最後はちょっと衝撃的でした。

    映画版では劇中で松井須磨子さんの「さすらいの唄」が何度も歌われたり、「お腹がいっぱいでも美味いおでん屋」が出てきたりしますが、原作では登場しませんでした(笑)。

  • 初読のつもりが公園のシーンで一気に自分の時間が逆流しました。既読だったのです。それも数年前とかいう次元ではなく、少女のころに。通常なら、母親の目線で彼女を見つめるところでしょうが、息つく間も惜しく一気にラストまで読みふけった数時間、私は少女に還って彼女と一緒に悩み、闘い、恋い焦がれ、この先に待っているものを思い出して切なくなりました。最後の手紙を胸がつぶれるような気持ちで読んだことも思い出しました。こんなに充実した気持ちで本を読んだのは久しぶりです。今初読だったらきっと違った受けとめをしたことでしょう。

  • 終始飛鳥の考えが中心に描かれている。自分の意見とは違うところがあり大変面白く読めた。
    孤児ということで、素直になれない飛鳥が、祐也さんに気持ちを伝える場面は最高だった。

  • 今年になってから本屋でやたら目につく。作者はもうすでに亡くなられているようだし、この作品自体も作者のデビュー作で1975年の作品だという。
    最近こういう形の復刻版というか過去の埋もれた名作を掘り起こすという試みをよく見かける。本が売れない時代だから新しい需要を掘り起こすための書店の戦略だろうが、東京創元社の文庫版でなくKindle版を購入。

    主人公飛鳥は孤児院で育った。養女として迎えられた家では虐待を受け耐えられずに逃げ出す。当てもなく札幌の街をさまよい心優しい青年と出会う。そこから物語は始まる。
    この小説をミステリ作品だと紹介されているものも見かけるが単に殺人事件が起こるだけで犯人捜しが主眼ではない。殺人事件がこの小説の大きな要素ではあるが、一人の少女が成長していく過程を描いた恋愛小説ともいえる。
    青年が少女を育てるという話だが、決して少女を自分好みの女に育てようとする渡辺淳一のようなエロイ部分は全くない。虐待されたという過去を引きずり自分の思いを素直に話せない主人公。圧倒的な個性をもった主人公の存在感がこの小説の魅力で有り引き込まれてしまう。
    気になったのは登場人物のセリフ全てが妙に知的すぎて上品なところ。通常の会話として、そんな話し方を今時の女子高校生がしないだろうなあ、、、。

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