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感想・レビュー・書評
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相変わらず何が楽しいのか愚にもつかない小説を書いていて、人生の貴重な時間を浪費しています。
うまく書けなくて、だいたいいつも悩んでいます。
時々は実際に書斎でのた打ち回ります。
具体的には、頭を抱えて床の上でごろんごろんするわけですね。
存外気持ちいので、興味のある方はやってみてください。
そんなですから、岩見沢市立図書館の新刊コーナーでたまたま本書のタイトルを眼にした時は、手が勝手に伸びていました。
模倣―。
独創性、オリジナリティーが求められる文学の世界にあって、いけないことのような気がしますね。
そんなことはないのです。
文学史を紐解けば、まさに模倣のオンパレード。
夏目漱石は19世紀ドイツの作家E・T・A・ホフマンの「牡猫ムルの人生観」から影響を受けて、あのデビュー作「吾輩は猫である」を書きました。
横光利一の初期の短編「頭ならびに腹」は、当時、堀口大學が翻訳して日本の文学界に大きな影響を与えたポール・モーランの「夜ひらく」の文体が色濃く影響しているそう。
そんなことを言えば、村上春樹さんなんて、レイモンド・チャンドラーそっくり。
デビュー作「風の歌を聴け」は、ヴォネガットやブローティガンの影響がはっきりと見て取れます。
私が言っているのじゃありません、著者が言っています。
ちなみに「風の歌を聴け」は他の村上作品同様に英訳されていますが、なぜか作者の希望で日本国外では読めないのだそう。
著者は
「この作品はまるっきりヴォネガットやブローティガンの習作的な模倣と見られかねないからである」
と断定しています。
もちろん、稚拙なパクリはいけません。
著者は「作家と出版社、あるいは出版社と新聞社との力関係が、疑惑の色を濃くも薄くもするのである」と生々しい業界内の実態を明かしたうえで、次のように警鐘を鳴らします。
「少なくともこれからデビューしようとしている人は、すなわち最底辺の弱者である。そういう書き手は、誰にも守ってもらえないことを心しておくべきだろう。ネットでたやすくバッシングを受けるような、幼稚なパクリはしないことだ」
肝に銘じます。
とはいえ、著者は基本的には模倣を奨励する立場。
その立脚点として、著作権法に立ち返って次のように述べています。
少々長いですが、引用します。
「まず、大前提として著作権法の目的は、『著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする』と、第一条に定められている。『文化の発展に寄与する』という表現が大事である。あれもダメ、これもダメ、と規制ばかりして萎縮させることが本意ではなくて、多種多様な表現の権利を守って『文化の発展』を支えて奨励するという大目的があるのだ」
ははあ、なるほど。
著者によれば、創作の世界において、独創なんてものは勘違いに過ぎません。
SMAPの27時間テレビが感動の中で終わった後なので恐縮ですが、
「自分を特別なオンリーワンだなどと思い込んではいけない。同じように、自分のアイデアを天から降りてきた唯一無二の独創だなどとは信じてはいけない」
のです。
さあ、自信を持って模倣しましょう。