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感想・レビュー・書評
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癩病と、肺結核と、共産主義者
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3.15事件で検挙、投獄された主人公。誰とも会話することのない独房生活の中、突如喀血し、肺病患者と癩病患者とが隔離されている病舎に収容される。「一度ここへ来たからにゃ、焼かれて灰にならねえ限り出られやしねえ」と同じ棟の癩病患者は言う。
著者の実体験を基としており、淡々としていながら凄味を感じさせる筆致。戦前の政治犯の、過酷な状況も窺い知れる。
同著者の作品『赤蛙』と共通して感じられるのは、極限状態にある人間にとって、本当に生きる力となり得るものは何か?という著者の強い問いかけだ。この『癩』ではまだ、その答えは朧げなままである。
オーウェルの『1984年』を、ここでもまた思い出す。絶望的な状況の中でも泰然と思想を守り続ける「岡田」の強さは、いったいどこからやって来るものなのか。主人公同様、私にもさっぱり判らないが、だからこそ強く心を惹きつけられる。
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