黄金の腕環 流星奇談 [Kindle]

著者 :
  • 2012年10月4日発売
0.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 6
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (10ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者、押川春浪(おしかわしゅんろう)(本名:方存(まさあり))(1876-1914)は、日本に「冒険小説」、「SF小説」を確立した人物と言われる。その一方で、スポーツ全般、特に野球の振興に尽力した人物でもある。優秀ではあったが、バンカラ気質であった押川は、あるときは野球に没頭しすぎ、あるときは乱暴を働き、いくつかの学校を転々としている。
    冒険小説を愛読していた春浪は、自らも小説を志し、在学中に書いたものが巌谷小波に絶賛されたこともある。

    現在放送中の大河ドラマ「いだてん」に出てくるスポーツ社交団体、天狗倶楽部の代表者は押川である。ドラマでは三島弥彦がクローズアップされていて押川はいささか影が薄いが、天狗倶楽部は元々、彼を慕うさまざまなバックグラウンドの若者たちが集まって、わいわい野球を始めとするスポーツを楽しむ団体だった。押川は雑誌『冒険世界』の主筆を務めつつ、天狗倶楽部の活動も楽しんでいた。
    後年、押川は、野球害悪論を唱える新渡戸稲造を相手に『冒険世界』上で論陣を張り、大騒ぎとなる。このため雑誌社上層部と対立し、辞任せざるを得なくなる。失意のうちに酒に溺れ、それが元で亡くなってしまう。享年38歳。
    とにもかくにも激しく駆け抜けた人生であった。

    本作は児童向けのちょっとした冒険譚。初出は『少年世界』(1907年1月号)。
    ある大晦日、イギリスの海岸の別荘に住む伯爵家に、ロンドンにいる兄の侯爵から贈物が届く。由緒ある美しい黄金の腕輪だった。だが、伯爵家には3人の娘がいるのに、腕輪は1つ。さて、誰にあてたものだろうか。添えられた手紙には、「最も勇ましき振舞を為せし人」に与えるとあった。さて、誰が一番勇気があるか試すにはどうしたらよいか、父、伯爵は一計を案じる。
    父の与えた試練に娘たちはどうする? 腕輪を手に入れるのはいったい誰だろうか?

    流星のエピソード、暗い森の描写など、ちょっとぞくぞくする要素も盛り込みつつ、からりと明るい小品。舞台を英国として少し異国趣味を盛り込んでいるところも楽しい。
    少年・少女は胸ときめかせながら読んだことだろう。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1876年(明治9)愛媛県松山生まれ。本名方存。日本キリスト教界の元老押川方義の長男。東京専門学校(早稲田大学の前身)在学中の1900年(明治33)、冒険科学小説『海底軍艦』(文武堂)を発表。多くの作品を残し、日本SFの祖と称される。また、雑誌『冒険世界』や『武侠世界』の主筆を務め、後進の作家や画家の育成に尽力。スポーツ社交団体「天狗倶楽部」を結成するなど、スポーツ振興活動も行った。過度の飲酒により、1914年(大正3)死去。

「2023年 『押川春浪幽霊小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

押川春浪の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×