これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 最低でも3回は読まないと咀嚼できない1冊。正直なところ本編よりも巻末の「それをお金で買いますか」が1番消化しやすかった。(市場経済ではなく市場社会と化してる現代社会。全てを経済的価値で判断してませんか?人間にとって、人生にとって大事な物を見失っていませんか?という問いをくれる短編)

    本編では正義の定義について、主に3つの仮説を検証している。第10章の後半が全体のサマリーとしてわかりやすいかも。美徳と共通善の体現こそが正義を考える上での基本原則であるとの主張。

    実生活では十人十色どころか千人千色なのが現実。社会で統一解を導く事は無理。個人の主義のぶつかり合いの中で、各組織で正解のないTRY&ERRORを続けていくのが人生だと理解した。

    1番刺さったのは人に頼る事、こき使われる事で漸く価値を発揮できる人間が「奴隷」であるという意見。受動的な人間は「奴隷」で一生を終えてしまうという事。自分の意見を持つ事、能動的に動く事でやっと「自分は生きてる」って言えるんだなあと。今の自分は生きながらに死んでないかな?

  • ◯学生時代に特に政治学を勉強したわけではないが、ロールズの正義論を読んでいく中で、最近の潮流として、当たってみた方がいいとの指摘があり、話題の一冊を手に取る。
    ◯講義の内容をまとめたものとのことで、大変読みやすい。学生でも取り組みやすい、現実に即した事例を踏まえながら、政治哲学の論点や課題を追っていく。入門書としてとても良いと思った。
    ◯サンデルの思想の一端は垣間見えるものの、体系だった学として説明されているわけではない。他の本も読んでみる必要がある。

    ◯とりわけ気になったのは、この本を読んだ限りでは、サンデルの指摘は比較的正義論で受け切っているように感じる。

  • 2013年初ログは、「正義」をテーマにした本である。

    Kindle本セールだったので購入した。
    「正義」とあるが、「哲学」の本である。
    「哲学」と聞くと、うぇ〜となるかもしれないが、誰かを助けるために何かを犠牲にしていいのか、何を求め何を拠り所とするのかを、事例を踏まえながら提示していくので、思考停止に陥るほど難解ではない。

    本書では「正義」について3つの考えを述べている。
    1つ、正義は功利性や福利を最大限にすること
    2つ、正義は選択の自由の尊重を意味する
    3つ、正義には美徳を涵養することと共通善について判断すること

    それぞれが示す考えの根拠と事例を踏まえ、筆者が考える「正義」を示す。

    米国大統領選挙で争点となることが多い、中絶問題、同性婚問題、税および富の再配分についても示唆を与えてくれており、よく理解できた。

    結局、現代は多元的社会であり全人民が一致できる最善の生き方なんてないことと理解できる。
    だからといってあきらめない。
    最善の生き方、ミクロでいうと最善の日々の行いや判断を目指すことを諦めない。
    本書は物の見方を振り返ることができ、自分なりの哲学を考える一助となった。

    ん〜でもまだまだ消化不良でもあるのでもう一度読み返さないといけない。
    そんなとき、Kindle本、電子書籍はいい。

    2013年仕事始めは明日から!

  • ある議題に論破する方法論とかに思えたけど、議論すら面倒って人にはただただマッチポンプかな?
    まあでもこれからってのを考えるとAI勉強していく人にとってはトロッコ問題とかの乗り越える考え方の1つの教材としては良いかも

  • 正義つまり正しい行いとは何かを考察する内容。具体的な議論の題材も多く楽しく読めるが大学の講義内容でもあるので一読での理解は困難。全体の幸福度を最大化することを正義とする功利主義の欠点はわかるが、対して個人の自由な選択を尊重する自由至上主義の問題点も考えさせられた。臓器売買や代理出産、志願兵の問題など。命に関わる売買は本当に自由な判断と言えるか。金で買うべきものなのか。格差社会の中で自由を追求する危険性と道徳や美徳という概念、アイデンティティーや公共的なコミュニティーのつながりの必要性がよくわかった。

  • 偏った傾向もあり。参考図書

  • 幸福の最大化
    自由の尊重
    美徳の促進

    社会正義って時代や場所とかでかわるけどだいたいこの3つにカテゴリー分けできるよねって話。

    著者の立場は、個人が所属する社会の「共通善」を正義の判断基準とする共同体主義。


    自分自身は何を正義とするか?決断を迫られた時どう動くか?自分の中に軸を作る手助けになってくれる一冊だと思う。

  •  哲学と聞くと、なんだか自分からは縁遠いような気がするかもしれません。難しそう、興味がない、そんな風に感じる人もいるでしょう。しかし私はそんな人にこそ、この本を紹介したいと思います。
     この本は一言で言うと、「世界の見方が変わる本」です。一つの章を読み終えて顔を上げた時、あなたの目に映る世界は少しだけ違う物になっているでしょう。

     政治哲学という分野について、この本はとても分かりやすく説明してくれています。実際にあった様々な事件や思考実験が例に出されており、それについて深く考察することで、正義の本質に迫っていきます。一つ、本文中の思考実験を例として見てみましょう。
    「あなたは路面電車の運転手で、時速六十マイル(約九十六キロメートル)で疾走している。前方を見ると、五人の作業員が工具を手に線路上に立っている。電車を止めようとするのだが、できない。ブレーキがきかないのだ。頭が真っ白になる。五人の作業員をはねれば、全員が死ぬと分かっているからだ(はっきりそうわかっているものとする)。ふと、右側へとそれる待避線が目に入る。そこにも作業員がいる。だが、一人だけだ。路面電車を待避線に向ければ、一人の作業員は死ぬが、五人は助けられることに気づく。どうすべきだろうか?」(41頁)
     さあ、あなたはここでどう考えますか?ハンドルを切りますか?では、あなたの選択は道徳的に「正しい」ものでしょうか?有名な思考実験なので、すでに知っている人も多いかもしれませんが、今一度考えてみてください。

     結論を言ってしまうと、本文の中ではこの問いに対する答えは示されていません。しかし、様々な方面からの考え方の道筋は示してくれています。新しい価値観を知り、考えを深めるのにはうってつけな本です。ぜひ一度読んでみて欲しいと思います。

    所蔵:本館2階西閲覧室(社会系) 311.1||Sa -, 蔵本2階中央閲覧室 311.1||Sa -
    HN:ふろふき大根

    • tokudaidokusho2さん
      哲学は難しいというイメージがどうしてもありますが、この本を読めば気軽に哲学について考えることができるのかなぁと思いました。有名なトロッコ問題...
      哲学は難しいというイメージがどうしてもありますが、この本を読めば気軽に哲学について考えることができるのかなぁと思いました。有名なトロッコ問題も出てくるみたいなので、読んでみたいなと思います。
      六甲おろし
      2020/06/21
  • 正義を功利主義、自由の尊重、美徳の促進の観点から議論する内容。著者は美徳の促進を最重視すべきとの結論に持っていくのだが、論理的に議論が展開されているように思えなかった。正義に関わる思想史や事例を知るには役立つ本。

  • 功利性の最大化、自由の尊重、美徳の涵養。

    でもこれって、ヴィトゲンシュタイン以降の話なのに何故

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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