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- / ISBN・EAN: 4907953042902
感想・レビュー・書評
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2011 イタリア フランス
世界で最も気高く栄えある役職の一つであるローマ法王の座。しかし現代において、その実態はただの生贄の子羊だった。
規律を守り善良に生きてきたのに人生にむなしさと行き詰まりを覚えている孤独な老人の姿が、変わりゆく時代に対応できずにいるカトリック教会と重なって、何とも言えないもの悲しさを奏でている。
メルセデス・ソーサの「トード・カンビア」(すべては変わる)が流れるシーンが特に美しく印象的だった。
時代は変わる。すべては変わる。すべてが変わりゆくのだから、私が変わっていくのも不思議ではない。
変わっていけるだろうか?変わるべきでないことを守りながら、新しく生まれ変わることができるだろうか?変わるべきことと変わるべきでないこと、それはどうやって選べばいい?
最悪な状態にいる時は、それをありのままに認めることができれば、そこから回復の可能性が生まれる。ラストシーンのメルヴィルは誠実だった。誠実って、正直ってことだ。メルヴィルの回復はここから始まるのかな。カトリック教会はどうだろう?
ローマの休日の横に並んでいたので、ローマの休日を借りるついでに、つい借りてしまった。パッケージにはコメディと書かれていたので、ローマ法王がオードリー・ヘップバーンみたいにスクーターを運転してみたり、どっかの広場でジェラートを食べたり、真実の口に手を突っ込んだりするのかな、という軽い気持ちで見てみたら…。チャプター3まではコメディだと思っていた。それ以降は、ユーモアはあるけれどコメディじゃない、人間ドラマだ。
リーダー不在で何一つ決まらないとか、決まったことが次の選挙で全部覆るとか、選挙公約が何一つ守られないとか、民主制には問題が多々あるけれど、この映画を見てやっぱり王政とか独裁制とかは残酷すぎると思った。独裁者がとんでもないことをやらかすリスクがあるということだけではなく、一人の人間にあんまり重い責任を課すシステムは残酷だ。死ぬまで重いプレッシャーに耐え続けるなんて。国のトップだって同じような立場に見えるけど、民主政治の一国の首長なんて、いくらでもコロコロ変わるもの。
コメディではなかったものの、いい映画だ。役者も風景も音楽も素晴らしい。また何度でも観たい。詳細をみるコメント0件をすべて表示