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感想・レビュー・書評
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企業は最高を目指して競争するのではなく、独自性を目指して競争するべき。
競争の本質は、競合他社を打ち負かすことではなく、「独自の価値」を生み出すこと。卓越した価値を生み出し、業界平均を上回る収益率を持続すること。
高い収益率を決定する要因は、「相対的価格」と「相対的コスト」。
競争優位がある企業は、他社と比べて価格が高いか、事業コストが低いか、あるいはその両方を実現していることを忘れてはいけない。
競合企業間のコストや価格の違いは、生産、販売、配送など企業が行う無数の「活動」から生じる。競争優位を生み出すには、こうした活動のうち、価格上昇またはコスト低下をもたらすものに焦点を当てることが肝要。
戦略とは、高業績を持続的にもたらす優れた競争戦略のこと。
「戦略の目標」は、卓越した投下資本利益率:ROICを長期間維持すること。
個別の要因ではなく、多くの要因を組み合わせて価値を生み出すと良い。相互依存的な活動すべてを模倣する必要が生じるため、模倣が難しくなり参入障壁を築ける。
実践で使えるフレームワークも数多あり、サクサク読める良本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マイケル・ポーターの『競争戦略』を、その弟子が説明した本。説明がわかりやすく、マイケル・ポーターの考え方をよく理解できた。「モーサテ星野塾」でも星野リゾートの星野佳路氏が題材として使っていたが、なるほどと思わせる箇所が多く、とても勉強になった。素晴らしい経営書だと思う。
「収益を高めるには、価格を上げるか、コストを下げるか、その2つしか方法はない」p21
「(ゼロサムゲームの弊害)最もよくある誤解が、競争に勝つには「最高を目指す」のが一番というものだ。これは直感的にわかりやすい考え方だが、実は自己破壊的で、底辺に向かうゼロサム競争をあおりかねない。組織は独自性を目指して競い合うことでこそ、卓越した業績を持続させることができる」p23
「(競争優位)一般に競争優位は、競合他社を負かすために使われる武器と理解されている。だがポーターの言う競争優位は、つきつめれば価値創造に関わる問題であり、それを競合企業とは異なるやり方で行う方法のことである。この意味で競争優位とは、他社と異なるバリューチェーンをいかに構築し、業界平均を上回る業績を確保するかということに尽きる」p24
「独自の価値提案が有効な戦略になり得るのは、それを実現するための最良の活動の組み合わせが、競合他社の行う活動と異なる場合に限られる。競争優位は競合他社と違う方法で活動を行うか、競合他社とは違う活動を行うという選択から生まれるのだ。したがって特別に調整されたバリューチェーンをもっていることが、優れた戦略の第二の条件となる」p25
「競争は動的である。かつての誇り高き企業が変革を怠り、衰退した例は枚挙にいとまがない。また、企業は変化しすぎる。または誤った方法で変化することがある」p26
「矛盾しているようだが、組織は戦略を継続することでこそ、適応力とイノベーション能力を高められる」p27
「優れた戦略には長く通用するものもあるが、永遠に続くものは1つとしてないのだ」p28
「ポーターは、1位を目指すのではなく、ユニークな存在になれと諭す。競争の本質は、競合他社を打ち負かすことではなく、価値を創造することにある」p31
「マクドナルドはファストフード、特にファストバーガーでの勝者だ。イン・エヌ・アウト・バーガーは、スローバーガーで成功している。同社の顧客は、注文を受けてから調理する、冷凍でない生の食材を自家製バンズではさんだバーガーを受け取るまで、10分以上待つことも厭わない(マクドナルドでは永遠のような時間だ)。ポーターの言葉で言えば、企業はきまったライバルとの競争に参加する代わりに、自分の土俵で勝負することもできるのだ」p37
「たいていの事業には「最高」なるものは存在しない」p38
「(ゼロサム競争の本質)勝利は誰かの敗北によってのみ成り立つ」p39
「企業が必然的に価格競争に陥る様子は、ビジネス版の相互確証破壊(MAD)にもなぞらえる」p40
「競争の主眼はライバルを負かすことにあるのではない。売上を奪うことがねらいではない。肝心なのは、利益をあげることだ」p53
「価格競争は、あらゆる競争形態のなかで最もダメージが大きいとポーターは警告する」p73
「真の競争優位をもつ企業は、競合他社に比べて低いコストで事業を運営しているか、高い価格を課しているか、あるいはその両方だ」p89
「成長だけが目標なら、価格を半分に下げるだけですぐにでも達成できる」p92
「割高な価格を要求できることが、差別化の本質である」p99
「ポーターの言う差別化とは、割高な価格を要求できる能力のことだ」p99
「競争優位を実現した企業は、活動がほかと違っているはずだ」p123
「競合他社と同じ活動を行いながら競争優位を、つまり価格またはコストにおける持続可能な違いを、実現できると思うのは間違いだ。例えば業務効果にかけては、日本企業の右に出るものはない。だがポーターの研究に詳しく述べられているように、業務効果での競争にとらわれたせいで、最も優れた日本企業でさえも慢性的に低い収益性に悩まされているのだ」p126
「競争優位をもつ企業は、同業他社より高い相対的価格か、低い相対的コスト、またはその両方を維持できる。競争優位は必ず損益計算書に反映される」p127
「競争優位を持っているとは、顧客のために価値を創造し、かつ業界内で有利なポジションを選択したために、利益をむしばむ5つの競争要因の影響からうまく身を守り、価値を獲得することができる状態をいう。簡単に言えば、ほかと違う存在になることによって、よりよい業績をあげる方法を見つけたということだ」p130
「あらゆる競合企業がまったく同じように製造、流通、サービスなどを行っている状態は、ポーターのいう最高を目指す競争であって、戦略による競争ではない」p132
「価値提案は、戦略をつくる要素のうち、社外の顧客に、つまりビジネスの需要サイドに目を向ける要素である。これに対してバリューチェーンは社内の業務に焦点を当てる。このように戦略には、事業の需要サイドと供給サイドを一つにまとめるという、統合的な性質がある」p135
「サウスウエストは、特定のの路線を最低のコストで頻繁に運航するために、すべての活動を特別に調整した。最初から機内食は出さず、座席指定も、乗継便への荷物の移送も行わないし、ファーストクラスやビジネスクラスも提供しない」p154
「昨今の熾烈な過当競争の世界では、競争優位を持続させることなどできないと考えられている。あらゆるものの模倣が可能で、現に模倣されているこの世界では、競争で臨めるのはせいぜい一時的な優位だという考えだ。どこかで聞いたような話だろうか。そう、これはおなじみの最高を目指す競争だ。だが少し考えれば、この議論が事実にそぐわないことがわかる」p165
「(二股をかける(ストラドリング))これは企業間競争で最も一般的な形態の模倣だ。こうした企業は、二股という言葉の示すとおり、既存のポジションを維持しながら、成功したポジションのよいところを取り入れようとする。いいかえれば、新しい機能やサービス、技術を既に行っている活動に移植することで、二つの世界のいいとこどりをしてすべてを手に入れようとする。だが戦略とは二者択一の世界だ。二股をかける企業は、二者共存の世界に逃げ込めると思っているが、その期待はたいてい空頼みに終わる」p176
「トレードオフは、一度に二つの方法で競争しようとする企業に、厳しい経済的ペナルティを与えるのだ」p176
「企業は顧客基盤と売上の拡大を図ろうとして、時とともにますます多くの機能や特徴を製品に詰め込む傾向にある。「多いことはよいことだ」の哲学にあらがうのは難しい。おなじみの理屈が「機能の自己増殖」を招く。ほんのわずかなコストで機能を追加できる、売上を伸ばさなくてはならない、ライバル企業の製品に対抗する必要がある、顧客がそれをほしがっている等々。これは最高を目指す競争へと続く、転落の坂道だ。何かを万人に提供しようとすると、競争優位を下支えしているトレードオフを緩和してしまうことが多い。長年にわたって競争優位を持続させてきた組織は、あまたの猛攻から主要なトレードオフを守ってきたことがわかる」p184
「たしかにエドワード・ジョーンズ(高級投資会社)は儲けるチャンネルをみすみす逃している。しかしその一方では、ポーターの言う「競争における最大のパラドックスの1つ」を解決したのだ。顧客を失うことを恐れて、トレードオフに二の足を踏む企業幹部は多い」p186
「戦略におけるトレードオフの役割は、一部の顧客を意図的に不満にさせることなのだ」p187
「戦略とは競争においてトレードオフを行うことである。戦略の本質とは、何をやらないかを選択することなのだ」p188
「「適合性」は活動間の結びつきを強め、最も緊密に結びついたバリューチェーンを生み出すことによって、模倣者を閉め出すのだ」p210
「継続性も重要なのだ。変革を怠った企業がとかく注目されがちだが、ポーターはそれより大きいとまではいかなくても、同じくらい大きな過ちがあると指摘する。企業は変化しすぎることがあるのだ。しかも誤った方法で」p214
「どんなにすばらしい戦略も、特にくわしいまたは具体的な将来予測をもとにしていることはまずない」p223
「イタリアの作家イタロ・カルヴィーノの言葉を借りれば、真の古典とは「いつまでも意味を伝えることをやめない」作品だ。彼は続けてこういう。「どんな古典も読み返すたびに、最初に読んだ時と同じように発見がある」」p242
「あらゆる顧客の声に耳を傾け、その要望に応える企業が、戦略を持てるはずがありません」p249
「私のいう成長とは既存事業での成長であって、多角化による成長のことではありません」p252
「各事業部に計画を立てさせると、一貫性のある戦略ではなく、断片的な「ベストプラクティス集」になってしまうおそれがあります。だからこそ戦略立案では経営陣全員を巻き込んで、業界や競合企業、機会、バリューチェーンについて考え、最終的にポジショニングと方向性について何らかの決定を下さなくてはならない。続いて総員でそれを具体的な行動に落とし込む必要があります」p271
「戦略を受け入れず、どうしても同調しようとしない社員には、社内で継続的な役割を与えるわけにはいかない。はっきりいうと、やめてもらうしかないということです」p273
「これまで私は経営陣が反対者を野放しにした例を数多く見てきました。彼らがもたらす負のエネルギーと混乱、時間の無駄は、戦略に大きなダメージを与えます。もちろん意見が合わないのは健全だし、経営者は自分の主張を述べ、考え直す機会を与えられるべきですが、いつかは議論に終止符を打たなくてはなりません」p273 -
謝辞
はじめに
いまなぜポーターなのか?
なぜ私が?
大いなる飛躍
各章のロードマップ
本書でとりあげる事例に関する注意書き
Ⅰ 競争とは何か?
第1章 競争―正しい考え方
第2章 五つの競争要因―利益をめぐる競争
第3章 競争優位―バリューチェーンと損益計算書
経済の基本原理
バリューチェーン
戦略への洞察:ポーターの輝かしき新世界
競争優位を実現するどうすればよいか?
Ⅱ 戦略とは何か?
第4章 価値創造―戦略の核
第一の条件
第二の条件
第5章 トレードオフー戦略のかすがい
トレードオフとは何か?
なぜトレードオフが生じるのか?
本物のトレードオフは模倣者を寄せつけない
何をやらないかを選択する
第6章 適合性―戦略の増幅装置
適合性とは何か?
適合性のしくみ
適合性とコアコンピタンス
適合性は戦略の持続性を高める
第7章 継続性―戦略の実現要因
なぜ継続性が欠かせないのか?
継続性には何が必要か?
戦略は新しく生まれ、また進化する
継続性のパラドックス
終章 本書の実践的ない意味
10の実践的な意味
よくある質問:マイケル・ポーター インタビュー
1.よくある間違いと障害
2.成長:機会と落とし穴
3.戦略とイノベーション
4.特殊な事例:魅力い貧しい業界、開発途上国、
非営利組織
5.組織を指揮する
ポーターを読み解くための基本用語集
注釈と出典
索引に代えて -
競争戦略論の大家、マイケル・ポーター氏。その代表的著作である『競争の戦略』『競争優位の戦略』をもとに、「戦略」と「競争」の本質を読み解く書籍。
企業は、競合他社に勝つために「最高の」製品・サービスを提供しようとする。だが、ポーターは、こうした「最高を目指す競争」は間違っているという。何をもって最高とするかは目標によって異なるし、すべての競合企業が最高を目指せば、誰も勝てないゼロサム競争と化すからだ。
ポーターは、企業は最高を目指して競争する代わりに、戦略的競争「独自性を目指して競争する」べきだという。
ポーターのいう「競争優位」とは、ライバル企業を下すことではない。卓越した価値を生み出し、業界平均を上回る収益率を持続することを意味する。
企業の収益性を決定する要因は、「相対的価格」と「相対的コスト」である。競争優位がある企業は、他社と比べて価格が高いか、事業コストが低いか、あるいはその両方を実現している。
競合企業間のコストや価格の違いは、生産、販売、配送など企業が行う無数の「活動」から生じる。競争優位を生み出すには、こうした活動のうち、価格の引き上げまたはコストの低下をもたらすものに焦点を当てることが大切である。
優れた戦略が満たすべき条件は、次の5つである。
①顧客に「特徴ある価値提案」をしている。
②特徴ある価値提案を実現するのに最も適した一連の活動、すなわち「特別に調整されたバリューチェーン」がある。
③ライバル企業とは異なる「トレードオフ」を行っている。
④バリューチェーン全体に「適合性」(フィット)がある。
⑤長期にわたる「継続性」がある。 -
1985年の名著以降、2011年までに発表した論文も加えて、エッセンスをまとめてあるので、体系的な講義等には有用。
5つの競争要因(=既存企業同士の競争に加え、新規参入者・代替品の脅威、サプライヤ・買い手の交渉力)をベースとして、視点を変更しながら、競争戦略を解く。ホテル業界のベッドの高品質化競争にみられるような、stuck in the middle(あらゆる顧客にあらゆるものを提供しようとして陥る戦略の罠)を回避し、barriers to imitaition(業界内企業が戦略を模倣する場合にクリアしなくてはならないハードル)を築くことこそ、差別化戦略であるという論旨は、一貫している。 -
会社の大先輩に借りてチラ読み。
非常に有用なことが書いてあったように感じる。
競争において独自のポジショニングを取る話、優位性は財務諸表に現れる話、トレードオフは競合に模倣されない戦略をとる重要なヒントになる話、やること/やらないことのポジショニングを綿密に設計した上で、その前提で成り立つ競争優位性にこそ永続性や模倣困難性がある話など。
安易に変更するリスクについても触れられていた。今のポジショニングが綿密な設計の上に成り立っているのであれば、外部環境の変化に応じてその一部を変えたときに、ほかの部分が大きく破綻しないよう、十分気を付けなければいけないと感じた。
終盤に十か条のようなまとめがあるが、本文の内容を正しく理解していないと、まとめの言葉だけ読んでも正しく内容をとらえられないように感じた(十か条だけを別の先輩に説明しようとしてやたらと苦労した) -
「戦略に本気で取り組もうという人には、ポーターの研究こそが土台となる」といわれている、戦略の教科書的な本。以前の"良い戦略、悪い戦略"もとても良かったが、それとはまた違う切り口の本。
詳細は下記
https://note.com/t06901ky/n/nbb2d394c43da -
ビジネスモデルと戦略は違うということ、押さえるべき5つの競争要素などを実例を交えて説明されている。
そもそも戦略とか、難しいので理解しながら読むのに集中力がいった。
古典と言われるものらしいけど、今も有用な内容だと思う。