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感想・レビュー・書評
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『#ストラテジック・イノベーション』
ほぼ日書評 Day534
本書のテーマはDisruptive Innovationによって駆逐される事なく、「大企業」がいかに自らInnovationを起こし、その命を長らえさせることができるかというもの。
成功体験を持つ大企業なるが故に、それを阻む要素は多い。その制約を、こうすれば完全に回避できるとまでは行かぬまでも、数多のケーススタディを帰納的に分析することで、上手くいかなくなりがちなパターンと、その逆のパターンに区分けしてみせる。
その内容を単純にサマリーすることはもちろん能わないが、印象的だった内容をメモしておく。
新規事業に着手する際に設定した計画・目標に拘泥するのはナンセンスだが、未達となった場合にはしっかり要因分析し、フィードバックすることが欠かせない。学習は試行錯誤の中にしか存在しない。
新規事業のリーダーは、既存事業組織の下においてはいけない。特にカニバリが発生するものは。両者を機動的にコントロールする立場の人間が欠かせない。
AT&Tが1980年代にマッキンゼーに携帯電話の市場規模の成長予測を尋ねた時、「世界中で90万台の市場規模が期待できる」と回答された。1日あたり契約件数ではない。総市場規模である。かくも新市場の予測は難しい。
終盤に語られるTFP (theory focused planning) 理論型計画法は示唆に富むので、本書で解説されるその8つのステップはメモしておこう。
Step-1
事業がどう動くかを表現する。因果関係図(インフルエンス・ダイヤグラム)を用いる。さまざまな仮定は置きつつ、行動と結果のパターンをあぶり出す。
Step-2
測定基準を決める。初めのうちは、できる限り、定量化でき、かつ因果関係図の出発点に近いところに着目する。
Step-3
目標を立てる。楽観的ながら現実味のあるシナリオ。目標とするトレンド曲線を意識すると良い。
Step-4
支出の基準を作る。アグレッシブ過ぎる計画に基づいて支出を増やし過ぎるのは厳禁。ただ、急には人は育たない。
Step-5
パフォーマンスを予測する。因果関係図内で低量把握できる要素ごとに定性的要因も含めてトレンドグラフ予測を作成してみる。
Step-6
重要変動要因を洗い出す。論理的予測策定の中で多くの仮定を置いている。この中で変動時の影響が大きいものを予め洗い出しておく。
Step-7
予測と結果とのズレを分析する。ズレの要因は二つにひとつ。予測が非現実的だったか、社員が働かなかったか。ここを、さきの重要変動要因とあわせ、慎重に振り返る。
Step-8
計画を改定する。ズレが生じたら、別の行動の有効性を試すために、これまでの一連のステップを繰り返す。
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相変わらず発音しにくい(笑)経営思想家トップ50の第3位に選ばれたVGこと「ゴビンダラジャン」の本。
ここでいう「イノベーション」は主に大企業の新規事業を意識しており関係者には必読か。
ただし、直接関係ない人、例えばスタートアップの経営者にはあまり役立たないかもしれない(★さがる)
新規系サービスを10年やってきた(コンサル系もいれると11年か)私としては、「そうそうそういうところが難しいんだよね」と共感するところ多数。
しかし、改めて整理されてみたものを読むと、「やるべきこと」をみると(これができればベンチャーにも勝てるわけだが)実際の実行は相当難易度が高い。
まず、一つ目は一番難易度が高い実行に焦点をおいているので、それまでのアイデアはいいのができているという前提。
もう一つは、既存企業との軋轢、連携のうまい対処。
これは、上級幹部(事業本部長より上の役員級が相当理解した上で、コミットしたいとできない。
だって、既存の人事評価を新規事業が使わないとか、目標必達の文化が邪魔になるとか、新規事業の方が上に位置づけるとか別組織にする一方、うまく既存組織の資源を利用するとか、既存の人事評価を使わないとか難しすぎる。
少なくとも、私がやってきたような権限の弱いプロマネ系は、成功には役員級を味方につける相当な政治力が要求される。
あと、米国がメインの研究対象なので、日本では、外部人材をたくさん登用するのは、ややハードルが高いところか。
また、薄々感じてたけど、これまで新規事業・新規サービスできて、どんなによい仕事をしてもA評価をとれなかった理由がより明確にわかりました。要は既存事業の人事評価体系を使って評価しているから。
立ち上げ時は売上の利益も少ないし、ほぼ100%(少なくとも上司が作った場合は)予算は大幅に達成できない。
かと言って、売上が上がってきたらそれは今年の成果ではない、ということになる。
結局真ん中の評価で、上司の定性評価で「お前なんとなく頑張っているから、ちょっと加点しとくわ」ぐらいしかないんですよね~。^^;