反省させると犯罪者になります(新潮新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 受刑者への更生支援の経験などをもとに、懲罰的に強いられた「反省」が受刑者の感情を抑圧することによって、かえって再犯を促進させてしまう悪影響の指摘がなされる。罪を犯した人が更生するためにまず必要なのは「反省」ではなく、被害者に対する負の感情を含む、心の中にある鬱屈した思いを吐き出させることにある。そこを経ない限りは本当の「反省」を引き出すこともできない。そして問題行動は内面的なヘルプの表れであり、問題行動が起きたときこそ生き方を変えるチャンスである。

    前半は受刑者に関する考察を主とし、子ども時代の親との関係が多くの受刑者の問題の原因となっていることから、後半に向けて子どもの教育論へとシフトする。親の教育方針や環境によって素直な感情を表現できなかった子どもが、抑圧を溜め込むことで、最終的に何らかの歪んだ依存を含む問題行動や走る。当人が問題行動を起こさないにしても、そのような親が子を教育すれば抑圧が再生産される世代間連鎖が生じ、いずれ誰かが大きな悲鳴をあげる。

    「反省文は百害あって一利なし」「まず加害者の視点に立ついじめ教育」など、著者自身の経験をもとにした知見が新鮮である。そして終盤においては、人は人に頼って生きるべきこと、「弱さ」を込みで「ありのままの自分」を上手く出せる人こそが他人にも受け入れられる「強い人」だと、全ての人に適用されうるメッセージを伝える。感情を適切に解放することの重要性、モノへの依存では決して満たされないため、人は上手く人に頼って生きるべきだとする方針は、比較的最近読んだ他の著書で共感した箇所とも相通ずる内容に深く納得することができた。

    このように本書は、人としての基本的で重要な在り方を示唆している。問題行動の有無に限らず、わが子の教育に迷う方はもちろんのこと、人間関係をはじめとして生きづらさを抱える多くの人に読まれてほしい。

  • 内容は良いと思うが、繰り返しが多かった。
    もっと短くまとめられると思う。

  • 何かの本か記事で紹介してあり、図書館にリクエスト。

    刑務所の受刑者の更生に携わる大学教授。

    「反省」
    する気もないのに、反省したふりをしますね。

    私は、教員の母に…
    「相手が怒っていたら、相手の怒りが収まるまで、神妙な顔をしておきなさい」と教育されました。心の中であっかんべーしてても良いから。と。
    この教育、ダメだったのかな。


    受刑者の更生の話から、子育てのヒントをくれる本なのかな。子育てについては、最後の方で扱っています。
    しつけ、難しいですね。

  •  正論は相手の心を閉ざす「言葉の狂気」。ただ厳しいことが相手のためと思っていないだろうか。そのとき自分の正義に酔っていないだろうか。本書はそんな思い込みを正してくれる。
     私達は日頃から悪いことをした人に対して安易に反省を求めてしまう。強くあれという抑圧がそうさせてしまうのだろう。しかしそれでは悪徳が連鎖することを断ち切ることは出来ない。
     相手が心の内面を見つめるように手助けすること。それは自らの内面とも向き合わなければならない。また自らも助けが必要なときそれを素直に受け止め、身近な人に助け求めることを恥じてはならない。そのように出来る人が真に強い人であるように思う。

  • 筆者の理論に納得できるし同意も出来るのだが、特に第1~3章までの文章が冗長というか、同じ内容を強調する部分が多く、中だるみを感じてあまり集中出来なかった……。
    逆に4章、5章は言いたい内容がスッキリとまとまっていたように思う。
    親や子供と関わる仕事をされる方はもちろんのこと、単純に社会人や中高生にもおすすめ出来る内容だと思う。

  • 気持ちを抑圧して、謝らせても、逆効果。
    人は気持ちが原動力だから。

    本当に。
    わかる。
    大人になると忘れがちになるけど、思い出させてくれた。わかりやすくて、読みやすい。

  • 上辺だけの言葉より、内面を見つめ直し、過去を振り返り自分を癒すこと
    寄り添って話を聞くこと

    親との関係だけではないが、それが重要とのこと

    やはり人間には愛が必要なのだ

  • 非常に為になった。
    問題行動を起こした原因分析が大切であるということです。

  • 服役囚の支援をしているという立場から語られる方法論は確かに従来の、ともかく反省を求める、という懲罰的発想の問題点を鋭く批判するものだと思う。ただ一方、著者の主張するような、反省を求めず、加害者自身の内面や背景についてじっくりと探る、という手法が実行可能であるかは疑問だ。著者の手法は学校や家庭での教育にも適用されうる、と論じられていたが、非行に走る子どもたちに対し、懲罰でないにも関わらず、そのような長期に渡る取り組みに協力させられるだろうか。また、自分の過去について、支援者が納得のいくような物語を作ってしまうのではないだろうか。かといって現状を肯定するつもりはないが、疑問に感じた。

  • ふむ

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著者プロフィール

立命館大学教授

「2012年 『ロールレタリング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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