神々の体系 ──深層文化の試掘 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • ポールの死亡説を思い出した(w)

    面白く読める。と言って著者の主張を鵜呑みすることはできない。
    そもそも「記紀」は誰を「読者」として想定したのだろうか?当時の識字率からすれば間違いなく天皇家を中心とした貴族が対象と推測される。
    著者は、「記紀」を出自の悪い藤原家が天下を取るにあたり「他豪族に引けを取らず名門です」とメーキャップしたと主張するが、この事情を理解してる他貴族たちを読者にこのフィクションを書くことの意味が分からない。想定する読者を当時の人間ではなく後世の人間とするなら、現に著者が藤原家=出自悪いと記載している以上、少なくとも全く効果はなかったといえる。
    権力者が経歴詐称をするのは、むしろ権力を持つ前、権力を得るために必要なのであり、この時期の不比等には必要ないのではと。
    意図した偽りの記憶作成は本人にとって一番空しい作業でしかなく、そこに意味はないと思うが、、、

    以上一つの説としては面白いが、自分には冒頭に書いた通り「ポール死亡説」のように知的遊戯としか思えない。これは自分の読み方が浅はかなのか??

    天皇家に代わる実質の支配者となってもシンボルとしての「天皇家」権威を活用しエネルギーの浪費を回避とあるが、これが天皇家が続いた理由としては腑には落ちない。
    権力維持にはその正当性が求めらるというが「物語」と「継続」はその根源になるのか?
    歴史にifはないものの信長とフリードリッヒ二世がもう少し生きていたらと考えてしまう、、、

  • 上山春平 「 神々の体系 」

    記紀(古事記 日本書紀)の政治的意図を考察した本。梅原猛 氏と同系列。

    記紀の神々の体系化することにより 天皇出現のロジックを抽出し、記紀の制作主体(藤原不比等と仮定)の政治的意図として 藤原家の出自を仮装し、政治的実権を奪うプロセスを考察した。元明天皇と藤原不比等の関係は 初めて知った

    神々の体系=天皇の理念形成のロジック
    *両極(天降りと国ゆずり)が交わって→中性(天皇が出現)
    *アメノミナカヌシ→高天の原系 と 根の国系に分化→イハレヒコ(神武)
    *高天の原系=タカミムスビ→イザナギ→アマテラス→ニニギ〜ニニギが天孫降臨の主役
    *根の国系=カミムスビ→イザナミ→スサノオ→オホクニヌシ〜オホクニヌシが国作りの主役

    神代史
    *制作者の政治意図が反映
    *記紀の前半=イザナギ、イザナミの国生み
    *記紀の後半=アマテラス、スサノオの葛藤と和解

    深層文化論
    *文化が時代とともに層をなして埋もれている
    *日本文化=輸入と模倣→日本流にアレンジして変容

    記紀の制作主体=不比等→不比等の政治意図
    *律令国家の成立→政治実権は天皇から藤原家へ→名門豪族を崩壊
    *新興(非名門)の藤原家の家柄を粉飾するため〜中臣イカツオミが神功皇后(卑弥呼)に仕える説話

    大化改新後
    1.天智、鎌足体制
    2.持統、不比等体制
    3.不比等、元明体制

    藤原家の摂関政治の成立条件
    *律令政治の中枢をなす太政官として=天皇の代行機関
    *天皇の外籍として=天皇の意志をコントロール

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著者プロフィール

1921年、和歌山県生まれ。京都帝国大学文学部哲学科卒業。太平洋戦争では人間魚雷回天に搭乗した特攻要員。戦後、京都大学教授、京都国立博物館館長、京都市立芸術大学学長などを務める。1988年紫綬褒章受章、1994年文化功労者。その研究は、哲学から仏教、国家論、天皇論、文化論など広汎な分野に及ぶ。2012年没。著書は、『大東亜戦争の意味』中央公論社1964、『明治維新の分析視点』講談社1968、『大東亜戦争の遺産』中央公論社1969、『神々の体系 正・続』中公新書1972・1975、『埋もれた巨像 国家論の試み』岩波書店1977、『空海』朝日新聞社1981、『天皇制の深層』朝日新聞社1985、『受容と創造の軌跡 日本文明史の構想』角川書店1990など多数。また『上山春平著作集』全10巻(1994-1996)が法藏館より刊行されている。

「2019年 『天皇制の深層』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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