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- / ISBN・EAN: 4988013564565
感想・レビュー・書評
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私は人からよく「好きな役者は?」と質問されます。そんな時は、今は亡きフランスの女優ジャンヌ・モローが真っ先に頭に浮かびます。
そんな彼女の、人生の集大成とも言える魅力が存分に詰まった作品でした。
夫とは離婚し子供たちも既に独立しているエストニア人の中年女性アンヌ。
彼女は同居介護していた老齢の母を看取った後、ひどい喪失感と孤独に苛まれていた。
そんな彼女のもとに、エストニア移民で長年パリに暮らす老齢マダムのための住み込み家政婦の仕事が舞い込む。
彼女は気持ちを紛らわすため、また、若い時分に憧れたパリを目指す意味もあり、その仕事を受ける。
しかし、待ち受けていたのは、とても気難しくて我儘なマダムのフリーダ(ジャンヌ・モロー)。
何度も心折れそうになるアンヌだったけど、同郷の二人はいつしか心を通わせる。けれど…。
老い、看取り、孤独、喪失、それらへの抵抗、郷愁、そして、時間の共有と慰めといった、人生の中で避けては通れない多くの課題が盛り込まれており、胸が痛いことも多いのだけど、共感せずにはいられません。
でも何より、気難しくて我儘で身勝手なのに、不思議と惹きつけられるフリーダを演じた御年80越えのジャンヌ・モローの魅力がすごいのです。
なんでこんなに惹きつけられるのだろうと考えたのですが、この人、細かい表情の演じわけが本当に上手いからかな、と思いました。
不機嫌でむっつりしている時、浮き足立つ気持ちに思わず唇の端を釣り上げてしまう時、故郷を思い出して遠い目をする時、過去の行いを糾弾されて苛立つ時…。
若い時分は、悪女なのに色気と哀愁を兼ね揃えた魔性の女性を多く演じて作品を彩っていましたが、その魅力は60年近く経っても変わらず健在でした。
アンヌがさまよい歩くパリの街の映像の巧みな使い方も見事です。
せっかくパリに来たのに、フリーダに認めてもらえずに孤独なままのアンヌが、気を紛らわすために、仕事終わりの夜毎あてもなく華やかなパリの街を徘徊するシーンなどは、心の寂しさと映像の華やかさの対比も相まって、思わず感情移入してしまいました。
気が沈んでいるときに、部屋にこもったままだと余計に沈むので、目的もないのに繁華街に出向くとか、私もやったことあって…。
正直、90分弱の中に押し込められたストーリーは全体としてはあまりに駆け足であっさりしすぎているというか、脈絡や辻褄が合わない所もいくつかありますが、孤独な人間の表情や行動原理が実に上手く捉えられています。
全体を通して白みの強い色彩が醸し出すうら寂しさも、人生の儚さを象徴するかのようです。けれど同時に、フリーダが一人孤独に暮らす屋敷の豪奢な映像が、鮮やかな対比となっており、視覚的にも充分楽しめます。
心と人生の機微を的確に捉えることに成功した映画は、展開が巧妙な映画に勝るのかもしれない。
なんだかそう思うほど、個人的には好きになった作品です。(両方を網羅していることが理想ですが、そういう完璧な映画に出会うのは意外と難しいのです。)
ジャンヌ・モローファンにはおすすめ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
80代で、ラブシーンができるジャンヌ・モローが圧巻。
フランスものを観ると思うのは、彼らの人間臭さ。ロマンチックなんだけど猜疑的で、寂しがりやなのに自立心が強い。びっくりするほど寛容かと思えば、これまたびっくりするほど我儘。でも根底に流れる愛は、脈々と流れ続ける。
いなくなってしまえばいいと思う狡さも、大事にしたいと思う気持ちも、同時に在って、しかもそこから逃げない。
私はまだまだ若輩者なのだと、痛感させられます。老いることの美しさと恐ろしさが靄のように心に残ります。 -
偏屈なフリーダに家政婦として働く事になったアンヌ。しだいに心を通わせて行く2人だが…ゆっくりとしたパリを舞台に流れるドラマ。フリーダの服装がとても素敵!
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なんと言ったらいいんだろうな~。
素敵な映画でした。
長く介護していた母を亡くしたエストニア人のアンヌ。パリで家政婦をしないか、という依頼が舞い込む。
学生の頃からずっとあこがれていたパリ。ただ、病弱なマダムは気難しく、皮肉屋…。クロワッサンはパン屋で買うの、など注文も細かい。
何度も衝突するけれど、だんだんと心を通わせていくアンヌとフリーダ。
フリーダのコートをアンヌにあげるところがよかったな~。
ラストもドラマチックにしすぎず、でもステファンがしっかり走ってるところ、フリーダがなぜ行かせたのと聞いたところがよかった。
映画の長さはこのくらいがちょうどいいなー -
出演者たちの演技は悪くないのだが、肝心な「フリーダがアンヌに心を開いていく過程と理由」がもうひとつ物足りない感じがした。
エピソードカットしちゃったのでは?と思うくらい。
フリーダとアンヌには共通点は性別と国籍くらいしかないし、説得力が足りないんだよな。
フリーダも若い頃はアンヌみたいに野暮ったいコートを着てて…とかいうエピソードがあれば、しっくり来る気がするんだが。
ジャンヌ=モローはやはりすごい。
寝巻き姿でさえもオシャレ。
役どころとはいえ、彼女を見てるとオシャレを怠けているのを恥じる気持ちが芽生えてくる。
ステファンはくどくないジャンレノみたいでカッコいい(^ ^) -
久しぶりにフランス映画らしいフランス映画。老いたジャンヌ・モローの凄みを見る映画。エストニア出身の家政婦がモロー演じる老人に認められていくだけの映画だが、そこここにフランスらしい頑迷さが出てて良い。主人公の演技はちょっと微妙だけど。
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【クロワッサンで朝食を】予告編
https://www.youtube.com/watch?v=tZ0K42OTYtQ -
切ないけど心地良くて好きな感じだった。
こういう映画を見ると、どんな人生でもどこかしらに魅力があるなと思う。 -
クロワッサンとつくタイトルだから、なんか美味しそうだったり朝の爽やかな感じの映画かな、と思って見始めたら暗くて重い話だった。。
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・元有名歌手?の偏屈老婆フリーダが突然アンヌに心を開いたきっかけがよくわからなかった
・フリーダが家でもじゃらじゃらにアクセサリーで武装しているのがより寂しさを際立たせていた
・垢抜けていくアンヌ
・カフェオーナーにしてあげた過去の愛人
・50年前の不倫で顔を出しづらくなったエストニア人コミュニティ
・「僕も彼女が死ぬのを待っていた」
・「あなたの方が似合うわ。あげる」とあげたトレンチコートがベッドに残されていたのを見つけて抱き締めるシーンが印象的
・パリに残ることにしてもまた介護が待ってるのかと思うと単純にハッピーエンドとは思えない