ノックス・マシン 電子オリジナル・コンデンス版 (角川書店単行本) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA / 角川書店
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感想・レビュー・書評

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  • 上海大学のユアンは国家科学技術局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容について確認したいことがあるというのだ。その論文のテーマとは、イギリスの作家ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール、「ノックスの十戒」だった。科学技術局に出頭したユアンは想像を絶する任務を投げかけられる……。
    本格ミステリとSFの美しき「融合」がここにある。異形の奇想中編集!
    ※本電子書籍は、紙書籍『ノックス・マシン』から「ノックス・マシン」「論理蒸発―ノックス・マシン2」の2篇を収録した電子オリジナル・コンデンス(凝縮)版です。


    ・レビュー

    短編集『ノックス•マシン』の中の表題作『ノックス•マシン』と続編『論理蒸発ーーノックス•マシン2』のみを抽出した短縮版ということで、ほとんど一つの物語として読むことができた。厳密なジャンル分けをすると、古典ミステリを題材とした近未来SFとするのが妥当だろう。なのでミステリを求めている人は「SFじゃないか」と落胆するかもしれない。つまりベースはSFでストーリー上の小道具が古典ミステリという形式。
    ターゲットは古典ミステリの初歩的な知識(読んだことがなくても有名作品と有名作家の名前を知っている程度で十分)とタイムトラベルの初歩知識(量子力学や多世界解釈や分岐した時間線の収縮云々の話)を簡単に知っている人に限られると思う。ただ字面は難しいけれど、あくまで「知っている」程度で十分だと思う。理解するとなるとかなり難しいだろうし、僕も理解はしていないけれど作中で出てくる程度のレベルの話にならついていけるので精通している必要はない。SFとミステリが好きな人にはこれ以上ないジャンルの融合であったりするのだけれど、あらすじを読んでわくわくしなかったら終始退屈になる恐れはある。

    『ノックス•マシン』の方はシンプルな時間移動SFで、題材が古典ミステリ、探偵小説や推理小説をよく読む人には、未読でも常識として解る題材を扱っているのでそこまで深い知識がなくても読める。具体的にはノックスの十戒の存在を知っているのが最低条件かもしれないけれど、読む前に調べれば済むレベルの話ではある。ロナルド・ノックス本人に関しては知らなくても問題ない。タイムトラベルの理論も比較的知られているタイムトラベルの知識や簡単な量子力学の知識が解ればニュアンスは容易に伝わるレベル。シュレーディンガーの猫なんていまや誰でも知っているのだし、一昔前のタイムスリップものの理論がおかしいっていう話も有名。海外古典SFなんかだと頭が痛くなってくることもあるけれど、今作のタイムトラベルの理論はかなり解りやすいからおよそ誰でも読めるんじゃないかなとは思う。多分合わないと思った人はSFか推理小説のどちらかのジャンル自体がダメな人か、運悪くタイムトラベル理論や量子力学に関して全く触れたことがなかったかどちらかかと思う。それか単純に知識に関係なく合わなかったということもあり得る短編ではあるかな。ともかくあらすじを読んでわくわくしなかったら終始退屈になる恐れはあると改めて記しておく。

    論理蒸発の方は、ノックス•マシン2としているだけあってかなりノックス•マシンと関連した話。ノックス•マシンが難しく感じた人とつまらないと感じた人は多分読めないと思う。でもそこまで難しいかと言われると、2の方もさほど難しくはない。理論はより難しいレベルになっているけれどニュアンスはやはり初歩の知識で十分伝わる。ニュアンスさえわかればこの短編は楽しめる。
    内容としてはノックス・マシンでの物語が一つのきっかけとなって新たな事件が起き、再びSF的プロセスも以って事件を解決していく。ブラックホール理論とか虚数がどうのとか、そういう話がまた出てくるけれどここまでくればもう慣れである。
    こちらに必要な知識はほぼない。オートポエティックスの話も初見で解るだろう。エラリー・クイーンの存在を知っていればすんなり読める。具体的に使用されているのはクイーンの国名シリーズ。あとはレイ・ブラッドベリの『華氏451度』を読んでいると解りやすいのだと思うけれど、僕はあらすじ程度しか知らなかったが問題なく読めた。ただラストにかけて『チャイナ橙の秘密』を読んでいるかどうかがやや消化不良の原因になり得るか……。僕は未読だけど知っていたのでなんとかなったけれど全く知らなければ「?」が付くかもしれない。その点ではストンと落ちる『ノックス・マシン』の方が秀作かもしれない。ただあくまでも連作であり、続編なのでこちらも読んでみて欲しいところ。

  • 途中かなり楽しめたのですが、オチがわからず終わってしまいました。ううみゅ。かといって読み返すほどの内容ではなかったし。。。これでヨシと。

  • このミス2014第一位
    量子力学と未来の出版が、難しく。

  • 量子力学及び相対論に関する知見をノックスの十戒やエラリークイーンの作品に関する謎に結びつけるというアイデアは良かったと思うが、内容的にはついていけず、終始ポカーンと感じてしまった。

    また、仮に量子力学等の内容についていけなくても、1部はそのオチも含めて理解できたが、2部の方は、エラリークイーンの該当の作品を読んだことがないため、オチについて理解できなかった。

    実験的な作品という位置づけなのかな。

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著者プロフィール

1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。88年『密閉教室』でデビュー。02年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。05年『生首に聞いてみろ』が第5回本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 2005年版」で国内編第1位に選ばれる。2013年『ノックス・マシン』が「このミステリーがすごい! 2014年版」「ミステリが読みたい! 2014年版」で国内編第1位に選ばれる。

「2023年 『赤い部屋異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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