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感想・レビュー・書評
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親鸞がわかった気になった。
親鸞をまったく誤解していた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
●梅原猛
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梅原猛が、親鸞にまつわる4つの謎について、これまで偽書のような扱いを受けてきた『正明伝』を中心に据えて再検証している。『正明伝』は、親鸞の孫覚如の長子、すなわち親鸞の玄孫に当たる存覚が著した親鸞の伝記である。
第一の謎、親鸞の出家については、「親鸞の母親が源頼朝とは腹違いの兄姉に当たる」という説を踏まえ、父日野有範の子がみな出家していることに着目し、「平家から子どもの身を守るために出家させた」という説を披瀝している。
第二の謎、法然に入門した経緯については、「時の政治や権力に左右される師慈円や比叡山のあり方に愛想を尽かし」、他力浄土の教えを説く法然の下に入門したという。
第三の謎、親鸞の結婚については、「九条兼実の娘玉日と結婚していた」という説を様々な事実を列挙して裏付けている。しかも、この結婚は法然が勧めたという『正明伝』の記述も紹介されていて興味深い。
第四の謎、人間の犯す悪にこだわり続けたことについては、「祖父である源義朝が、保元の乱の後、父為義を殺した」ことがその後の思想形成に大きな影響を与えたのではないかと推論している。
『歎異抄』などに見られる親鸞の深い洞察や逆説に満ちた激しさがどこから来ているのかが見事に実証していると感じられ、親鸞の思想は汲めども尽きることのない深い井戸のように思えてきたのだった。