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感想・レビュー・書評
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元建設省のお役人で土木の専門家が地形と気象から日本史の謎に挑む「日本史の謎は地形で解ける」第2弾。本書では、話題が日本史の謎にとどまらず、日本文化や風土へと広がっている。
「なぜ日本は欧米の植民地にならなかったか」、「日本人の平均寿命をV字回復させたのは誰か」、「なぜ家康は「利根川」を東に曲げたか」、「なぜ江戸は世界最大の都市になれたか」、「貧しい横浜村がなぜ、近代日本の表玄関になれたか」、「「弥生時代」のない北海道でいかにして稲作が可能になったか」、「上野の西郷隆盛像はなぜ「あの場所」には建てられたか」、「信長が天下統一目前までいけた本当の理由とはなにか」、「「小型化」が日本人の得意技になったのはなぜか」、「日本の将棋はなぜ「持駒」を使えるようになったか」、「なぜ日本の国旗は「太陽」の図柄になったか」、「なぜ日本人は「もったいない」と思うか」、「日本文明は生き残れるか」、番外編「ピラミッドはなぜ建設されたか」。
面白かったことを3つほど。
「欧米人の欲望をそそらない日本列島。欧米人の恐怖をかき立てる災害列島。そして、騎馬軍団の力が発揮できない地形の日本列島」。これが日本が植民地化されなかった最大の理由!
「日本史が大きく転換するときには、いつも森林消失という事態が深く関わっていた。 8世紀末、奈良盆地は森林を失ったため、桓武天皇は平城京から淀川流域の平安京へ遷都した。 17世紀初頭、西日本一帯の森林は消失していたため、徳川家康は関西を背にして、広大な森林を持つ利根川の江戸に幕府を開いた」。切実なエネルギー問題が歴史を何度も大きく動かした!
「細工して、細かくする。凝縮して小さく詰め込む。細工してないものは「不細工」と非難した。詰め込まないものは「詰まらない奴」と侮蔑した。 荷物を背負い歩き続ける日本人の「縮み」志向は、人々の精神に働きかけ人々の美意識にまでなっていった」。日本の細長くて平らな土地の少ない地形が日本人の器用さや軽薄短小文化を産んだ!
進化心理学によれば、人は気候風土に適合するように文化や気質を進化させてきたのだから、言われてみれば当たり前の結論ではあるのだが、とても新鮮に感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白い!すごく納得できる。
森林を伐採し尽くしたから遷都してたのか。日本中の森林が無くなる頃に、黒船来航によって化石燃料と出会えたのは、運が良かったのか。
横浜の歴史が興味深い。神戸も同じ感じやったんかな。
地球の温暖化によって、北海道は優良な農耕地帯になる。広大な北海道が、食糧自給のための切り札になるらしい。
日本人が、何でも小さく縮めてしまうのは、荷物を持って長距離を歩くときに、少しでも身軽にするためだった。他の国々では、大陸を馬や牛車で移動していたため、その必要がなかった。
おまけの「ピラミッドの謎」も面白い。三大ピラミッドとその他のピラミッドでは、建設理由が違ったのね。納得した。
この調子で世界史の謎も解いていってほしい。 -
地形観点での考察
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全部著者の仮説だとは思うが、その視点はなかったなぁとう言う話で非常に面白かった。広重の東海道五拾三次の絵の解釈は、司馬遼太郎が現代の京都の山は鬱蒼とした広葉樹ばかりで風情がないと、どこかで書いていたことに通ずるが、著者の目は風情どころではない説を開陳していて興味深い。レバノン杉を思ったりした。
歴史及び風俗や風習、宗教が地形のみならず気候に影響を受けていると言うのはなるほどと思えた。 -
広重の絵を元に、江戸時代後期は、伐採のため日本列島全体の森林資源は荒廃しており、エネルギー涸渇状態であった、との説明に感銘を受けた。
ちょうどその時、黒船が来て、化石エネルギーと邂逅した、と。 -
ブログに掲載しました。
http://boketen.seesaa.net/article/401411764.html
ピラミッドがなぜ建設されたか、治水技術からあざやかに解説
竹村公太郎の『日本史の謎は地形で解ける』(PHPb文庫)は昨年秋に発売された「目ウロコ本」で、呆け天ログでもとりあげた(2013.11.23)。今年にはいって、2月に第2部<文明・文化篇>、7月第3部<環境・民族篇>が相次いで刊行され、堂々の三部作となった。
歴史をめぐるあれこれの推理、解釈、薀蓄が好きな人種にとっては、たまらないほど面白い。