- Amazon.co.jp ・電子書籍 (134ページ)
感想・レビュー・書評
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- 『般若心経』の世界観を端的に言えば「分析の否定」。目の前にある存在を区分けして解体し、その要素を知ることで、「これですべて理解できた」と納得する、そういう姿勢を否定している。「そこにあるものは、そこにあるものとしてそのまま理解せよ。しかもその理解はあくまで人の知恵による限定的なものであり、その奥には人智を越えた法則があるということを承知せよ」ということ。
- 分析という作業には必ず、「ここで線引きができるだろう」という私たちの予断が入り込む。本当に客観的な分析などというものはなく、そこには必ず人間の先入観が含まれてくる。「空」の思想は、これを常に是正し、さらなる客観性への道を無限に示す。 -
般若心経とは何かを解説する本。
特に「仏陀の仏教」と大乗仏教(般若心経)の違いについて、分かりやすく解説されている。
ほとんど知識が無かったので、自分も般若心経には、仏陀の教えが書かれているのだと思っていた。
実は仏陀の教えとは別物であり、ともすれば仏陀を否定すらしているというのは興味深い。
上座部仏教は「自分で自分を救う」ための宗教であり、とても門戸は狭い。
対して大乗仏教は「神秘の力に救ってもらう」宗教であり、より多くの人を救ったのだろうという。
このように宗教の成り立ちが分かると、その価値もわかってくる。
実に面白い。
またこの本の中に、
『我々はつい権威主義的に
「より大元である釈迦の言ったことが正しくて、それ以外は全て偽物だ」
と考えがちだ。
しかし宗教に正しさや間違いはなく、大切なのは人の助けになることだ。』
と書かれていた。
これはその通りだと思う。
つい「元祖」や「本家」をありがたがってしまうが、大切なのはそこではない。
人の役に立てば、それでいいのだ。
どちらが正しいかを決めることこそ、不毛な争いであろう。
「独善的な宗教は、社会に不幸を撒き散らす」
素晴らしい一言だと思う。
この言葉を胸に刻みたい。