鑑定士と顔のない依頼人 [DVD]

監督 : ジュゼッペ・トルナトーレ 
出演 : ジェフリー・ラッシュ  ジム・スタージェス  シルヴィア・ホークス  ドナルド・サザーランド  ジェフリー・ラッシュ  ジム・スタージェス  シルヴィア・ホークス  ドナルド・サザーランド 
  • Happinet(SB)(D)
3.65
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感想 : 163
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4907953061095

感想・レビュー・書評

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  • 正直、この映画がハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、全く答えがでない。
    とりあえず見終わってすぐは、怒涛の展開とラストに「うわー!!?」ってなりました。残酷。怖い。
    でもすごく面白い。巧妙。美しい。
    なにより、ある種の「豊かさ」や「尊さ」が確かに存在する。ひどくこじらせたものだけど。

    誰もが認める超一流の美術鑑定士オールドソン。気難しく、潔癖で、誰も愛したことのない、孤独な老齢の独身男。
    彼は売れない画家ビリーと共謀し、自身がディーラーを務めるオークションを悪用して超第一級の婦人画を安く手に入れ、コレクションしていた。
    そんな彼のもとに、ある日不思議な仕事依頼の電話が来たことから、彼の人生は大きく動いて…。

    いやー、いろんな意味で私好みの映画でした。
    一見残酷で、でも、見方次第ではとても幸福で。
    どうとでも解釈できる。
    色々な伏線が効果的でグイグイ観られるし。
    私がミステリー慣れしてないからかな?

    話は逸れるけど、オールドマンが不正に集めていた美女コレクションの見事さと来たら。
    いや、あれもそれも世界に名を馳せる一流美術館の一流目玉展示作品やで!?とツッコミどころ満載。
    でも、美術館にあるほうが実は贋作だったりしたら…と思い出したら面白くて妄想がとまらなくなる。

    「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」
    オールドマンが何気なく口にするこの言葉に監督が託した、意味深さと不可解さ。
    オールドマンの美術に対する超一級の審美眼は、果たして生身の女に対してはどうだったのか…。
    謎は謎のままで。
    いや、謎というよりは、鑑賞者が判断しろということかもしれない。

    鑑賞中は楽しみ、恐れおののき、人生の哀愁に胸を痛め、美しさに浸かって。
    鑑賞後はあらゆる場面を反芻して色々なことを思い、組み立て、また打ち消して…。
    また見直して…。
    本当に何度も何度も楽しめる作品。

    とりあえず、もう一回観る。
    そして、誰か観て。

    • あいさん
      こんにちは(^-^)/

      これはよかったですよね!
      ちょっと前なので忘れていることも多いけど(^_^;)
      ラストは私も物凄く考え...
      こんにちは(^-^)/

      これはよかったですよね!
      ちょっと前なので忘れていることも多いけど(^_^;)
      ラストは私も物凄く考えました。
      バッドエンドだと思いますが、ハッピーエンドと思いたい、そう思おうと思いました。
      2018/11/28
    • hotaruさん
      けいたんさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      これ、確かに一見バッドエンド寄りだと思うのですあ、でも、あのチェコにおけるラス...
      けいたんさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      これ、確かに一見バッドエンド寄りだと思うのですあ、でも、あのチェコにおけるラストが気になって…。なんか、地獄から回復してる?というか。
      面白いけど、本当に解釈分かれる作品ですね。
      2018/11/29
  • 観終わったあと、そういえばの伏線を探しに再度見たらもっと面白いかもしれない。
    後味は良くないけどこの終わり方を哀しいと捉えるかハッピーエンドと捉えるか、、

  • 審美眼を持つ一流の美術鑑定士。仕事とお金、僅かな友人、そして最高の芸術品。それらだけが人生で価値あるもの。人生に必要なのは、それだけだった。
    満足していたはずの日々、ある日突然、奇妙な査定の依頼が舞い込む。それは、姿を現さない"顔のない依頼人"。
    心がくすぐったくなるような、年のかけ離れた女性との恋。初めてのキス。人生は薔薇色に彩られていく。
    幸せな人生の黄昏を予感するラスト、まさかの展開。ああ、騙されました。
    彼が彼女と出会い、喪ったもの。それは仕事、お金、人生をかけて集めた女性たちの肖像。それはどれも脆く儚いもの。しかし、決して形には残らないけれど、人生においてかけがえのないものを得た。それは愛すること、信じること。
    「どんなことがあっても、これだけは忘れないでいてーーー貴方だけを、愛してる」
    それが真実の言葉だったのか、その言葉までもがお芝居のうちだったのか。それは誰にもわからない。
    ただ、秘密部屋に初めて入った時、「私の前にもたくさん彼女がいたのね」と言って振り返ったクレアの表情は嘘ではなかったと信じたい。だからこそ、秘密部屋のすべての女性たちを1人残らず持ち去り、自分の肖像だけを残して去っていったことは、「私だけを愛していて」とささやかれているようで。
    彼女にもう一度出逢うため、彼女の愛の言葉を信じて、彼はプラハの曇り空の下、今日も来ない女性を待ち続けている。それが切ない。
    やるせないラストだったけれど、心にあたたかい感情も残りました。
    このストーリー展開には、脱帽です。

  • ジュゼッペ・トルナトーレ。
    かの「ニュー・シネマ・パラダイス」ですっかり
    心酔させられてしまったた映画監督。
    またしても ほほーっ となる名作を見せていただいた。

    贋作と本物。
    贋作の中にも価値のあるものもある
    それは本当に本物か??

    人物、物語、展開など縦糸と横糸を
    巧みに織り合わせた巧妙な映画でした。

    是非、感想などは何も見ずに見ていただきたい。
    ネタバレ厳禁。
    情報を入れないおかげで大いに楽しむことが出来ました。

    くれぐれも何も見ずに、聞かずにご覧ください。
    オススメですから。


    <これ以下はネタバレを含みます>

    主人公の超一流の老美術鑑定士。
    美術品の真贋は一目瞭然でわかる。
    でも、心を奪われた相手の”真贋”は見抜けない。

    老いて初めて知った恋の味。
    盲目の度合いが違います。
    逆手になんて取られたらもうイチコロ。

    周到に用意されたことも匂わせる部分もあったり
    行きずり上そうなって行ったと思わせる部分もあったり
    登場人物に感情移入すればするほど
    信じたい部分、信じたくない部分に切なくなります。

    オートマタの言葉は「彼らの」本意なのか。
    繰り返す自らの声が深みや、悲哀、切なさを更に増すように感じました。

    とても面白かった。

  • 『いかなる贋作の中にも、必ず本物が隠れている』

    前半で一風変わったラブロマンスかと思いきや、後半は怒涛、巧みなミステリーに変貌する。
    伏線の張り方から、もう一度見たくなる、という売り込みらしいが、二度目見てみて感じ入ったのは主人公ヴァージル(ジェフリ・ラッシュ……「英国王のスピーチ」の先生)の「痛ましさ」。
    現実の女性は信じられず絵画の女しか愛せない、さらには女の顔をコレクションしてしまうなんて、まったく自分そのもの。分身かと思うよ。
    それが寄ってたかって騙されるのだから、辛いったらない。
    本格ミステリとはいいがたい。
    最近「金田一少年」を犯人の側から語りなおす漫画を読んだのだけれど、谷崎あるいは乱歩提唱の「プロバビリティーの犯罪」を超越した、「騙す相手がこちらの台本通りに動いてくれてウハウハな犯罪」というものがあるにせよ、「えーおまえどうしてそんな動きすんの。(共犯者に)なんでそこの演技もっとしっかりできないの。どんだけ金銭を要求すんだよ(そろばんぱちぱち)」という犯人の苦闘もまた裏側に存在する。
    壮大な犯罪計画の裏には地道な深謀深慮があるのだ。
    そこまで、連想させられた。
    つまりは骨の髄まで美味しい映画だったというわけだ。

    また、映画や小説や絵画やといった芸術が好きだなんていう人のモチベーションは多分に「俺の思い通りになってくれる異性」への欲望であり、その真裏には、予測不可能な他者への予期恐怖と拒絶、がびっしりと苔むしている。
    代表例はヒッチコック「めまい」だが、変奏曲は無数にあるし、ジェームズ・L・ブルックス「恋愛小説家」、カラックス「ポンヌフの恋人」(頭を抱える男の腕を引きはがす女の「心、を、開、く、の、よ」)も同一テーマだろう。
    他人事じゃないのだ。

    もっともよく語られるのはきっとプロットと脚本だろうけれど、演出面でひとつ。
    ヴァージルがある絵画を落とす場面があるのだが、そこの音の凄まじさ。
    世界が崩れる音とはこうかと思った。

    また、徹頭徹尾ヴァージルの視点で話は進むのだが、彼が路上でボコられる場面だけ、朦朧としたヴァージルの視点を離れて「ふたりの女性」の視点にカメラが移行する。
    ここはミスというわけではまったくなく、語り手の攪乱が物語の核を効果的に視聴者に提示するための「起点」になっている。
    そしてまた、二階で屋内の女性→路上で悶えるヴァージル←二階で屋内の女性、というシンメトリカルな構図でもあるという、まさに映画巧者でしか生み出し得ない「はみだし」なのだ。

    ちなみに人形者としては、ヴォーカンソン(タンバリン、アヒル)やメルツェル(チェスプレイヤー……エドガー・アラン・ポー)といった、自動人形が魔術と受け止められていたころの挿話に言及されるのも、味わい深かった。

  • “人間の感情は芸術品と同じ。偽造できる。まるで本物に見える。だが偽りだ。
    何事も偽装できるのだ。喜び、苦しみ、憎しみ。病気、回復、愛さえも。“

    みなしごで育ち、人付き合い(特に女性)が苦手で、美術鑑定士の仕事に生きがいを見付け、名を成し財を築いた男が、
    老齢に差し掛かり、女を使った詐欺集団に全財産を騙し取られる話。
    詐欺集団の首謀者は長年の友人と思っていた老画家で、主人公が人生で初めて恋をした女性も、
    信頼していた仕事仲間の機械屋も、みな老画家とグルだったという結末。
    ラストシーンで老人は“虚構の中にも本物がある”という彼の審美眼をなぞるように、騙した女との思い出に浸る。

    なんとも後味の悪い結末。
    首謀者の老画家は、若くして主人公の鑑定士から才能の無さを通告され、
    その後鑑定士と協力して、掘り出し物を安く競り落とす手伝いの報酬で生計を建ててるフリをしながら、
    実は画家で大成する夢を諦めさせられたと、逆恨みし、永年復讐の準備を整えていたのである。

    鑑定士がオークションで競り落とした絵画は全て女性を描いたもので、
    女性と付き合うのが苦手な鑑定士にとっては現実の女性の替りだった。
    老画家は、鑑定士にとって人生初の恋をした女性だけでなく、これら絵画を最後にごっそり奪い取ったのだ。

    老人と愛を育んだが詐欺の仲間だった女が、詐欺作戦の成功が見えてきたときに
    老人に抱き付きうっすら涙を浮かべ「この先 何があっても私の愛は本物」と言う。
    女が去り、詐欺に気付いた後も老人が恋の牢獄に幽閉され続けたとして罪深いと捉えるべきか、
    この言葉があったから老人の人生は豊かになったと捉えるべきか。

    出演者はなかなか渋い人選。
    主役であるベテラン鑑定士に 「パイレーツオブカリビアン」でバルボサ船長を演じたジェフリー・ラッシュ。
    使用人フレッドに「TV版 名探偵ポワロ」で仲間想いのポワロの盟友ジャップ警部を演じたフィリップ・ジャクソン。
    老画家ビリーに「カサノヴァ」で稀代の性豪カサノヴァを演じた、「24」のキーファーの実父、ドナルド・サザーランド。
    因みに監督は「ニューシネマパラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ、音楽はエンニオ・モリコーネ。

    病院で、思い出に耽りながら黙々とリハビリに努める鑑定士の眼は力強く、
    不屈の魂で立ち上がることも予感させるラストだった。

  • 姿を現さない女性・クレアと、屋敷を訪れるたびに見つかるオートマタの部品と、この二つが特に前半の大きな謎で、特にクレアの人物設定自体が非常にミステリアスで面白く、俄然物語にのめり込んでいった。オールドマンの度を超しているとも言える潔癖さや、屋敷の前のバーにいる特徴的な外見の女性の凄まじい記憶力なども、ミステリアス性をさらに加味する。そこにイギリス映画ならではのスタイリッシュな美しさもあって、絶妙に心地よい緊張感を維持していたように思う。
    ただ中盤についにクレアが姿を現したあたりから、正直なんとなく展開が読めてしまったので、私の中ではピークは中盤にきてしまった。とはいえ、オートマタは完成したらどうなるのか、などオチを見るまでは解明されない謎はまだまだあったし、それにビリーがこのとんでもない謀略に絡んでいたところまでは読めなかった。
    終わって振り返ると、あらゆるものがクライマックスの伏線として綿密に組み立てられていたことがわかり、まさに無駄のない良質なミステリー作品だった。

  • 鑑定士ー!!!

    気づいてー!!!

    冒頭から鑑定士の真面目な確かな技術に
    引き込まれて。
    映画のクオリティとしては星5つなんだけど、
    なんともやりきれないラストに星4つ、、、。

    鑑定士としては超一流、
    日常でもその観察眼は鋭い。

    それなのに、
    その眼を欺くとは、、、。

    最後までスマートな彼を見たかった。
    そう思うほどに引き込まれる映画は久しぶり。
    そして、
    冷静になって考えると、
    黒幕は、誰だ、、、?


    まぁ、でも、
    よく考えれば、
    初めから姿を現さないとか、
    断る理由は多々あったはずなんだけど、
    依頼人が男性だったらどうだったかな、、、?
    ゴニョゴニョ、、、

  • 見て直ぐは胸くそ悪い!!の一言。ここまで他人を弄んで幸福の絶頂まで引き上げた後に叩き落とすって、人間のする事じゃないわ!と。
    他の人のレビューに、ハッピーかバッドか、終わり方は見る人によって変わると書かれていて、何処が?と考えて気付いたこともあり。最後に時系列が分かりにくくなっているのは、見てる人間に選ばせるためなんだなぁ。私は最悪な取り方をしたらしい。
    けど、例えクレアが彼を真実愛していたんだとしても、最終的に騙して裏切ってるんだから、意味ないというか、余計に質が悪いと思う。主人公が幸せそうに語る場面を思い出すとやりきれない。

  • ところどころに違和感は感じていたがあの最後は想像していなかった。
    清々しいくらいに容赦がない。
    見終わって呆然とし、すぐにもう一度見返したいと思った。

著者プロフィール

映画監督・脚本家。1956年、シチリア生まれ。86年、『教授と呼ばれた男』で劇場映画の監督デビュー。『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)でアカデミー賞、『明日を夢見て』(95)『海の上のピアニスト』(99)『題名のない子守唄』(2006)『鑑定士と顔のない依頼人』(2013)でダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞受賞。2023年1月にモリコーネとのを組んだ『モリコーネ 映画が恋した音楽家』が日本公開。

「2022年 『エンニオ・モリコーネ 映画音楽術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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