論文捏造 (中公新書ラクレ) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • 7年以上の前の本とは思えないほど、最近起こった事件とまるで同じ。本質的な部分は何も変わっておらず、それを見事に表した本だからであろう。面白かった。

  • 久しぶりに5つ星である。一気に読んでしまった。
    本書を読んだのは、直接的にはある人がツイッターで紹介していたのがきっかけだが、間接的にはSTAP細胞などへの問題意識が根底にあった。
    本書で扱っているのは、2002年に発覚したシェーンの大捏造事件である。
    物理学の最先端の領域を掛け合わせた画期的な研究成果は全てシェーンの捏造であった。
    なぜこのような捏造が可能であったか。シェーン本人はどのような思いで捏造を行なっていたのか。
    湧き上がるいくつもの疑問に本書は答えてくれる。
    もちろん、分かることと分からないことがある。
    例えば、関係者の心のうちは分からない。
    しかし、丁寧な取材と慎重な考察で多くの疑問に答えようとしている。その姿勢が非常に真摯であり、科学的である。
    筆者は東大工学部を出た秀才。筆力もあり、何より丁寧に事実を積み重ねて、分かることと分からないことを区別しながら、考察をする姿勢が素晴らしい。

  • 本書は、過去最大規模の捏造であるシェーン事件の真相を追ったNHKのドキュメンタリー番組『史上空前の論文捏造』を書籍化したものだ。
    したがって捏造の背景にある問題を探りはするが、捏造一般についてというよりは
    個別の事例研究といった性格を帯びている。
    取材は本書の内容からそうとう綿密に行われており、この事件に関してはこれ以上ないと感じるほど深くかつ網羅的に調べられている。

    他の書籍同様、本書も科学界の構造が捏造を生み出しやすい状況を作っていると指摘している。20世紀に入り、経済との結び付きを急速に強めた科学界がその変化に対応できていないと本書は指摘する。
    科学者は外部の影響でシステムを変えるということを心底嫌がるだろうが、むしろ現代科学が進んで外部の経済力を求めていった結果、研究への投資とそのリターンから生み出される利益が科学界の外で一大産業になってしまったという現実がある。もはや科学者が企業や政府なしには研究できないというプレッシャーが捏造の温床となるわけだが、その状況はある意味自業自得であり、自分たちは変わる必要はないという傲慢な態度は許されないだろう。

    捏造に対する根本的な解決策を探る議論はまだ始まったばかりのようで本書でも「議論が必要」と述べるに留まっているが、そろそろ本気で科学界のシステムを変えるときが来ているのかもしれない。

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著者プロフィール

1990年NHK入局。新潟放送局、番組制作局 科学・環境番組などを経て、衛星ハイビジョン局 特集番組 ディレクター。担当した「NHKスペシャル 生殖異変〜しのびよる環境ホルモン汚染〜」で科学技術映像祭・内閣総理大臣賞、放送文化基金賞・テレビドキュメンタリー番組部門・本賞、地球環境映像祭・大賞を受賞。他に「NHKスペシャル 環境ホルモン汚染 人間の生殖に何が起きているか」「ワイドスペシャル地球環境」「クローズアップ現代」「サイエンスアイ」「生き物地球紀行」など担当番組多数。

「2003年 『環境から身体を見つめる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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