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感想・レビュー・書評
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キャラが確立しているので楽しさしかない。
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宇宙暦795年・帝国暦486年9月4日にガス状惑星レグニツァでレグニツァ上空遭遇戦が起きる。パエッタ中将率いる自由惑星同盟第2艦隊とラインハルト率いるミューゼル艦隊が激突した。ヤンはパエッタ中将の参謀として参加した。原作では才能を発揮することはなかった(『銀河英雄伝説外伝1 星を砕く者』)。
石黒版アニメ『わが征くは星の大海』や藤崎竜版漫画ではヤンの知略によって乗艦の撃沈を免れた。石黒版ではヤンから示唆を受けたアッテンボローが強引な行動をとって危機を脱する。藤崎竜版ではラップが上官の性格を読んだ巧みな意見具申が採用されて危機を脱する(田中芳樹原作、藤崎竜漫画『銀河英雄伝説 6』)。
石黒版は非現実的である。藤崎竜版の方が現実的であるが、優等生的な解決策である。要領のよい人物が成功するという話になり、物語としては面白みに欠ける。この比較では藤崎竜版の評価が下がるが、藤崎竜版には続きがある。アスターテ会戦でラップは真面目に意見具申して悲惨な目に遭う。後の査問会にも通じる自由惑星同盟の陰湿な体質が描かれる。旧日本軍のような精神論の世界であり、優等生的な正攻法は通用しない。
藤崎竜版漫画のヤンは歌を歌うなど不真面目で、やる気のないキャラクターに磨きをかけている。原作のヤンも昭和の「頑張ります」精神とは対極的なヒーローであったが、それを十全に描いている。流石は週刊少年ジャンプ連載作品『封神演義』で怠惰なヒーロー太公望を描いた漫画家である。
続く第四次ティアマト会戦ではラインハルトは左翼の指揮を任されるが、そこには総司令部の罠があった。原作のミュッケンベルガーは尊敬できない。石黒版ではフレーゲルの陰謀色が強いが、原作のフレーゲルは添え物レベルである。石黒版は本編で宇宙艦隊司令長官退任時のラインハルトと敬礼するシーンの印象が強く、悪の巨魁と描きたくなかったのだろうか。ラインハルトの奇策は小説ではあっさり進み、さっと読み終わるが、石黒版はゆっくりと進み、「ボレロ」のBGMによってドキドキ感を増している。