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感想・レビュー・書評
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著者の河野さんという人は、普通の人です。松本サリン事件をリアルタイムで知っている自分は、「マスコミや世間とたったひとりで闘った人」というイメージがあったのですが、これだってマスコミが作り上げたイメージに過ぎなかったことを本書で知りました。
著者自身がしみじみ言っています。ひとりだったら、ここまで闘えなかっただろうと。「理解してくれる人がひとりでもいればいい」とは自分も常に思っていますが、河野さんには何人もそのような人たちがいました。これってすごいことですよね。
当時はマスコミをあげて「河野犯人説」を報道してましたから、彼を知らない人はそう誘導されてしまいます。このことはのちに報道被害という概念を生むきっかけになって、それが知らしめられているはずなのに、似たようなことは何度も繰り返されています。河野さん自身、身の潔白が証明された後、各地で講演活動をされていますが、そんな場所でも河野さんを睨みつけながら、「自分は騙されないぞ。お前のウソを暴いてやる」といわれたこともあったそうです。それほど報道被害の影響は大きい。
助けてくれようとする人は、”かげでひっそり”信じています、とか言葉をかけてくれることはあるかもしれません。それはある”恐れ”があるからですが、河野さんを助けてくれた人々は、文字通り体を張って行動された人たちです。世間全体が犯人扱いするなかでその人を助けるということは、平たくいっちゃえばいじめられている人を助けることといえばわかりやすいでしょうか。
精神的な助けだけではなく、当時まだ未成年だった子供たちを、何かあったらかくまえるようにと、自分の自宅の近くにマンションを借りてくれた人もいたそうです。幸いなことに、利用されることはなかったようですが、家賃を払い続けてくれたそうです。
なぜ、そのような人々と友人関係になれるのか?と質問されたことがあったのですが、河野さんは答えに窮しています。もし「戦略的に」近づいていったのだとしたら、そんな関係にはなれなかったでしょう。自分はそう思います。こればっかりは「縁」なんですから。”引き寄せ”ですかね。河野さんがそういうものを持っている。ただヒントになりそうなのが、後半に書かれている幼少期の頃のエピソードでしょう。なかなかの”武勇伝”ですし、お母さんという人がかなりユーモアのある人です。いかにも昭和のお母ちゃんですよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示