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感想・レビュー・書評
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下巻は4世紀後半、コンスタンティウス二世の時代にガリア軍団に担がれて皇帝になるユリアヌスの話から始まり、最後は15世紀の東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の滅亡までを記載しています。上巻同様に本書もギボンの本の抜粋版で、章の合間に訳者による解説が数ページ含まれています。
上巻の書評でも書きましたが、訳自体はきわめて読みやすいので、あっという間に読破できます。その意味では、下巻では1000年にわたる歴史が凝縮されているので、上巻と比べると章が飛び飛びになっている感じがぬぐえません。そのため下巻においては訳者の解説の価値は上巻以上にある気がしました。ただしこれも上巻の書評で書きましたが、訳者による合間の解説はわかりやすい反面、ギボンワールドから現実に引き戻されるような感覚があり、功罪ともにあります。
しかしギボンのすごいところは、ローマ帝国衰亡史ということで、ある意味ローマ帝国の絶頂期から書き始め、徐々に衰亡すると言うことで、ややもすれば最初が一番躍動感があり、徐々に暗くクライマックスもなく終わりそうな感じになりそうなところを、最終章のコンスタンティノポリス(現イスタンブール)陥落をクライマックスに持ってきて、ローマ帝国の歴史をかなりドラマチックかつ感傷的にさせていることでしょう。ローマのフォロ・ロマーノに一度でも足を運んだことがある人は、最終章に書かれている、ローマ帝国滅亡直後にローマを訪れたある博士の感傷的なセリフにかなり共感を覚えるのではないでしょうか(それが600年前のことだということを忘れるくらいです)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
下巻は背教者ユリアヌス登場からビザンティンが滅びるまで。てっきり西ローマが滅びるまでだと思っていたので、読んでいて「Cパート長いな」と思った。解説にも書いてあったが、ギボンは「まだ行けるな」と思ったのだろう。とはいえオマケ要素が強いので、年数の割にはページ数は少ない。
面白いと思ったのはイスラム教のくだり。ビザンティンの領地を奪い、滅ぼしたのはイスラム勢力なので、イスラム教の誕生も解説している。その中で創始者のマホメットについて言及しているのだが、すごく主人公っぽくて笑ってしまった。イケメンで人柄もよく、喋りも巧み。上流階級に敬意を払う一方で、下層民にも親しげに接する。この他にも美徳が延々と続く。メアリー・スーかよ。
ローマ歴史書の古典である本なので、読めてよかったと思う一方、書いてあることがどこまで正しいのかと疑ってしまう。ギボンが書いたのは18世紀後半のことだ。今では間違いと言われていることも多々あるに違いない。ローマについて知るために読むというより、『ローマ帝国衰亡史』を知るために読んだというのが、率直な感想だ。