わたしはロランス [Blu-ray]

監督 : グザヴィエ・ドラン 
出演 : グザヴィエ・ドラン  メルヴィル・プポー  スザンヌ・クレマン  ナタリー・バイ 
  • TCエンタテインメント
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4562474164047

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  • LAURENCE ANYWAYS
    2012年 カナダ+フランス 168分
    監督:グザヴィエ・ドラン
    出演:メルヴィル・プポー/スザンヌ・クレマン/ナタリー・バイ/モニカ・ショクリ
    http://www.uplink.co.jp/laurence/

    ずっと見損ねてたのをやっと目黒シネマで。性同一性障害を乗り越えて強く生きる・・・みたいな映画をイメージしていたのだけれど、実際はたまたま性同一性障害だった男性と、ある女性の10年にわたる熱烈なラブストーリー。

    教師のロランスは、交際2年目の女性の恋人フレッドがいるのだけれど、30歳の誕生日に、実は女性になりたいと彼女にカミングアウトする。当然最初は激しく拒絶反応を起こしロランスを罵倒したフレッドだけれど、それでも彼を失いたくないという結論に至り、ロランスが女性として生きていくサポートをするように。

    とにかくこのフレッドが魅力的だった。性別を超えて一人の人間としてロランスを支えてゆこうとするその潔さは、愛情があれば性別なんて関係ないと素直に思わされるし。しかしそれで安易にハッピーにいかないのもまた道理。次第に支える側の彼女のほうも心を病んでしまい、二人は破局。フレッドは別の男と結婚し子供をもうける。
     
    一方肝心のロランスのほうだけれど、これはちょっと複雑。なんていうか、ゲイではないんですよね? 同性に恋をするという描写はなく、あくまで彼は異性愛者。しかし、自身は男性の自分に違和感を感じているし、女性として生きたい。でもセックスの相手は女性。つまりこれは一周廻ってレズビアンなの???むむむ難しい。自分の脳みそが短絡なだけかもしれないけど、女性になりたい=男性が好き、だったらわかりやすかったんだけど、あくまでロランスはずっとフレッドを愛し続けているし、別れた後一緒に暮らしている恋人も女性。

    それならば、そこまで愛するフレッドのために、男性として生きるという選択肢はなかったのかな、とつい考えてしまう。もちろんそれが苦痛であったからこそ、ロランスはカミングアウトしたのだろうけど。男として生きなければならない苦痛、と、愛する人を失う苦痛、どちらかを選ばなくてはならなかったときに、ロランスは男の自分を捨てることを選んだ。本来ならこの時点でフレッドを失う覚悟をしていたはず。それでもフレッドが恋人でいてくれたのは一時の僥倖。彼女が去ると決めたからには、まさに「二兎を追うものは一兎をも得ず」潔く諦めるべきだし、両方というのは虫が良すぎると思ってしまう。

    難しい問題ですね。いわゆる「ありのままの」「わたし」を優先するのか、「わたし」を偽って恋人をとるのか。でもやっぱり個人的には「わたし」を「ありのまま」で受け入れて、というロランスの要求はフレッドの側に一方的な犠牲を強いているし、フレッドにだって普通に生きたいわたし、を優先する自由はあると思う。私には、ロランスがちょっと我侭すぎるように映ってしまった。

    演じるメルヴィル・プポーは、ほぼ10年前の『ぼくを葬る』の頃はぎりぎり美青年だったけれど、今はさすがに美中年。たまになぜかアントニオ・バンデラスに見えて困った(苦笑)ドラン自身が演じるにはまだ年齢が若すぎたのかしら。

    映像は全体的に美しく、とくにところどころで見られる、何かが「降ってくる」シーンの美しさが印象に残りました。ロランスが母と和解するシーンで怒涛のように降ってくる雪、フレッドがロランスの詩集を読んだときに部屋に降ってくる洪水のような水、そして二人が逃避行的な旅行をした先で青空の中降ってくるカラフルな洗濯もの(?)のシーン。ロランスの口からポロリと蝶が出てくる場面も象徴的だった。随所で流れるキュアーやデペッシュモードその他音楽の趣味もよろしく、全体的には好きな映画でした。

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