はるなつふゆと七福神 [Kindle]

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  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • 失業中のニート女子・榛名都冬(はるなつふゆ)のもとに、七福神の中でもマイナーな二柱・福禄寿と寿老人が現れた。ネットを使って自分たちの知名度を上げて欲しいという。自分の仕事を見つけてもらうことを条件に神様たちの依頼を引き受けた都冬。就職祈願は二柱の領分ではなく、大黒天を頼ることになったが、今度は大黒天から、憎き恵比寿との麻雀勝負への立ち会いを頼まれてしまう。この勝負、やがて大変な騒動へと発展していき…。

    人間以上に人間臭い神様たちと都冬のやり取りが楽しい、軽めのエンタメ作品。

  • 昔話を下敷きとして、新たな物語を産みだす。これは、一つの小説の作成技法としてしばしば出会うことである。本作もそのような物語の系譜に連なる作品の一つであろう。こう書いてしまうときわめてステレオタイプに思われてしまうかもしれないが、着眼点が面白かった。
    七福神はすでに人口に膾炙しているが、そこにおわす七柱の神を全部記憶しているかというと、途端に甚だ怪しくなる。本作の主人公である七福神のうちの二柱――すなわち福禄寿と寿老人、このマイナーな神たちを中心に据えたところが面白かった。これらの神が人間(つまり、主人公である「はるなつふゆ(注:人名)」)の前に現れた動機は、「ブログを使って、もっとメジャーな神になりたいから」というものである。
    動機が妙に人間的だ。およそ神が抱く願望としては、いささか人間臭い。となれば、そこに続くドタバタ劇も容易に想像できる。かくして人間とマイナーな神が引き起こすコメディーが始まるのだが、そこに他のメジャーな七福神や狐狸妖怪の類まで登場して、物語は混迷の度を高めてゆく。

    著者のあとがきを読むと、本作の執筆のきっかけは、七福神巡りをしていて「福禄寿」や「寿老人」を祀る神社に参詣したとき、全然テンションが上がらなかったことに由来するという。いわば、永遠にセンターの座を射止めることのないアイドルグループのメンバーを推しにしてしまったようなものだろうか? 判官贔屓のような情が感じられる。
    とはいえ、マイナーな神々も、ことさら自分たちの不人気や知名度の低さを嘆いているわけでもない。神たちはむやみやたらとポジティブだ。自ら積極的に「ぱそこん」を使ってブログを執筆してみようと試みたりしている。
    一方で、七福神の内輪では、神々の間でマウントの獲り合いがあり、やがてそれがもとで日本全体を覆うような大騒動にはるなつふゆも巻き込まれ、まさにドタバタなコメディーが展開されるのである。

    本作を読んでみようと思った契機は、このところスパイ小説のようなハードボイルドタッチの作品を立て続けに読んだため、少し肩の力を抜いて読める小説を読んでみようと思ったことにある。その意味では、本作は最適だった。七福神の話だからといって、あらかじめそれらの神々に対する予備知識が要求されることもない。歴史的背景を知る必要もない。無の境地でひたすら物語の世界に没入していると、いつの間にか(割とあっという間に)読了してしまっているタイプの物語である。
    タイトルにある「はるなつふゆ」が実は主人公の名前だったということで、何かしらあざとい仕掛けが(特に主人公の名前にまつわる)あるのかと思いながら読んでみたが、特にそれらしきものは読み取れなかった。位置づけからすれば、猫と鼠の追いかけっこをただ楽しむ『トムとジェリー』のような印象の物語というところか。

    あえて言及すれば、騒動の始まり方も収束の仕方も、全編を通してゆるい。この「ゆるさ」が本作の真骨頂なのだが、一方でその「ゆるさ」を楽しめるかどうかで評価は二分するだろう。
    読みやすい軽い物語が好きな人、(自分のように)たまに肩の凝らない物語を読んでみようと思い立った人、こうした読み手にはおすすめできる。神は常に崇高な存在であらせられなければならない、と考える人には勧められない。神々が繰り広げるドタバタコメディーゆえ、登場する神々も本来の品格を備えているとは言い難い。神同士が、場末の小さな雀荘で、しかもいかさまを前提に今や存在するのかも怪しい手積みの麻雀で勝負をするなど、品格の断片すら感じない。
    たまにはいつもと違う食事をとか、ちょっと疲れているからリラックスしたいとか、最近面白いことがないななどといった人は、是非本作を手にしてみてほしい。心の洗濯に役に立つ、かもれない。

  • 神様の知名度を上げるためにパソコンを使って試行錯誤していくなか巻き起こる物語。中々楽しめたけど戦いの終わりが肩透かしというか。うーんって感じ

  • 『七福神』商売繁盛の恵比寿様は知っていたけれど、その他はどんな神様たちなのか知らなくて、この本をきっかけに調べてみました。実は国際色豊かな神様たち。それぞれ個性豊か。七福神巡りをしてみたくなりました。そして、都冬ちゃんと同じく、知らなかった(!?)福禄寿さまと寿老人さまもちゃんと覚えましたー!

  • 七福神の喧嘩に巻き込まれる不運女子の冒険。
    めじゃーとかマイナーとか、神様たちのバタバタが面白い。

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