交流のしくみ 三相交流からパワーエレクトロニクスまで (ブルーバックス) [Kindle]

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  • 難しい...

  • 交流において、コイルとコンデンサは抵抗のように電流の流れを妨げるように働く。つまり、交流回路をオームの法則で表すことができるようになるということ。コイル、コンデンサ、抵抗の電流を流しにくくする性質を、足し合わせて示す量として、インピーダンスが使われる。それぞれの見かけ上の抵抗、リアクタンスが直流の場合のように単純に合成できないところが、少しむずかしいところなのだ。電圧と電流では位相が異なる。そのために、電圧と電流の積として表される電力の働きとしては、プラスマイナスでキャンセルされる無効電力がどうしても生じる。有効電力を定める指標としてその割合=力率が0.85以上になるように電気製品らの規格は定められている。

    交流は電圧を容易に変更させられる。送電において、送電網が長くなればなるほど送電線の抵抗が大きくなってしまう。高電圧にして、電流を小さくして送ることができる交流は、抵抗によるロスや電圧低下を抑えられるとして、直流ではなく、長距離送電に有利な交流が送電網システムに採用されることになった。変圧器を用いれば電圧をコントロールできる。受け渡しする2つのコイルの巻数比次第で、一定の電力の中で電圧電力を任意で変化させることができる。

    高圧線で送電されてきた交流は、電柱上の変圧器で降圧され、主に100Vと200Vで家庭内に引き込まれる。この引き込みは3本の電線が使われていて、そのうちの2本の組み合わせ方で100/200Vどちらにも配線ができるようになっている。これが単相3線式交流と呼ばれる。家庭以外では、三相交流が用いられている。単相交流が3つ組み合わされたような仕組みだ。3組の単相交流は3本の導線で負荷に接続できる。同じ周波数の交流が位相を1周期の1/3ずつずらして流れている。これによって、ある1つの相の電圧・電流がゼロになるときにほかの2つの相はゼロにならない。常にいずれかの相の線間の電圧・電流はゼロではないということだ。だから、交流はモーターを回すのに適している。電線が+1本で3本、1.5倍になることで電力が約1.7(√3)倍になることも特徴だ。発電所では三相交流を発電し、三相交流が送電されている。電力の多くの部分は三相交流が使われている。

    発電所で使われるのは同期発電機だ。リング状の鉄芯の内側に120°ずつずれた位置に巻かれるようにできた三相コイル内で回転する磁石(コイルに直流電流を流した電磁石)によって誘導起電力が生み出され、回転のサイクルに合わせて三相の交流が発生する。回転の周期によって交流の周波数も制御される。コイルの極数を増やせば、回転数によらないでも周波数を上げることができる。この三相コイルの働きを反転させた仕組みを取るのが三相モーターだ。

    電気は作られるのではなく、いろいろなエネルギーを電気の形に変化させるということをしている。火力・原子力発電は燃料を燃やすことによって発生する熱によって蒸気を生み出し、タービンを回転させる。水力発電は位置エネルギーをもった水から運動エネルギーを取り出し回転エネルギーに変換する。太陽光発電は太陽電池に太陽光が当たることによって生じる光起電力で直流を発電する。発電によって発生する熱を回収し温水に変換して利用するコジェネレーションシステムも汎用的に使われるようになった。

    パワーエレクトロニクスとは、電力の形を別の形に技術だ。その基本はスイッチングによって制御することだ。(直流)電源においてON-OFFのスイッチングとその周波数(回数)による制御で電圧を変更する。断続を埋め平滑化するために半導体デバイス(IGBT)が用いられる。電流を流し続けるように働くインダクタンスとその誘導起電力をオンさせるダイオード、エネルギーを蓄積し電圧の変化をほぼ一定に抑えることができるコンデンサが組み合わされた仕組みだ。

    インバータは、直流から交流を「逆変換」(インバートinvert)する装置で、パワーエレクトロニクスで最も多く使われている。スイッチの切り替えで負荷抵抗に流れる電流の向きを反転させるのが基本となる。デューファクター(オンオフ時間の比率)によって出力を制御することも可能だ。滑らかではない矩形波となる電圧をフィルタ(インダクタンスやコンデンサを使う)でひずみを取り除き正弦波に整形することができる。

    IGBTが10kHz以上の高速スイッチングを可能にしたことでその高い制御性能によって、電流の制御も自由にできるようになった。交流のコンセントにプラグを挿していても、その内部の機器は商用電源をそのまま使っているのではなく、内部でいったん直流に変換して、インバータで再度交流に変換することがよく行われるようになっている。

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著者プロフィール

【監修】
森本 雅之(モリモトラボ 代表)

「2022年 『モータの熱対策』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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