Tale of Tales / [Blu-ray] [Import]

監督 : Matteo Garrone 
出演 : Salma Hayek  Vincent Cassel  Toby Jones  Shirley Henderson 
  • Shout Factory
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 0826663169218

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  • ■五日物語 ―3つの王国と3人の女―
    TALE OF TALES/IL RACCONTO DEI RACCONTI
    2015年 イタリア+フランス 133分
    監督:マッテオ・ガローネ
    原作:ジャンバティスタ・バジーレ『ペンタメローネ(五日物語)』
    出演:サルマ・ハエック/ヴァンサン・カッセル/トビー・ジョーンズ/ベベ・ケイヴ/ステイシー・マーティン
    http://itsuka-monogatari.jp/

    原作は17世紀にイタリアで書かれた民話集。デカメロンが10日間なら、こちらのペンタメロンは5日間の枠物語でつまり50の挿話がおさめられているのだけど、中身はデカメロンと違い、ペローやグリムより古い民話収集なので初期形態の残酷めの童話的なお話が多いらしい。らしい・・・というのは実は原作未読だから。この映画の公開あわせでちくま文庫が復刊してくれないかなと期待してたのだけど出なかった(苦笑)なので映画が原作のどのエピソードをピックアップまたは複合したものなのかは不明ながら、日本版のサブタイトルどおり3つの王国のエピソードとして併行して描かれている。

    ひとつめは「ロングトレリス国の不妊の女王」子供が欲しいのにできない王妃と国王は、魔術師の「海の怪物を殺してその心臓を処女に調理させたものを食べろ」という言葉に従い実行する。海獣と闘って王様は死亡、手に入れた心臓を処女である召使の娘が調理するが、調理中の煙を吸い込んだだけで彼女はみるみる妊娠、王妃もまたその心臓(見た目ほとんど生肉)をムシャムシャ食べるとあっというまに妊娠、一晩のうちに王子を出産する。16年後、王妃が生んだ王子エアリスと、召使が生んだジョナはそっくりに成長。二人はとても仲良しだけど王妃はそれが気に食わない。息子を溺愛する毒母となった王妃は邪魔者であるジョナを自ら殺そうとし、察したジョナは国を去る。しかしジョナが残した泉が濁ったことでジョナの危険を察知したエアリスはジョナを追って彼が失踪した森へ。洞穴に落下して怪我をしていたジョナをみつけ助け出そうとするエアリス、しかしそこに巨大なコウモリが現れ逃げ惑う二人。なんとかエアリスが化け物コウモリを倒すが、その正体は実はジョナを憎むあまり姿を変えた王妃だった。

    ふたつめは「ストロングクリフ国の二人の老婆」連日酒池肉林を繰り広げている好色な王様(ヴァンサン・カッセル、はまり役・笑)は、ある日美しい歌声の町娘に心惹かれ、彼女の家を訪れる。しかし実は歌声の主は声だけ少女のような老婆ドーラ。妹のインマと二人で暮らすドーラは、なんとか王様を騙そうと皺を伸ばしてニカワで貼ったり姉妹で必死でプチ整形、暗闇でならオッケーですことよ、と返事をしてまんまと王様と一夜を共にするも、ことを終えてぐうぐう寝てたら王様に正体を見られてしまう。たちまち憲兵が呼ばれ王様のベッドの真っ赤なシーツごとお城の窓の外に放り捨てられたドーラ、しかしそのシーツが木にひっかかったおかげで命を取り留める。ここまでのくだり、たいへんコミカルで面白かったのだけど、この先がちょっと怖い。ドーラを助けてくれたのは森の魔女、赤ん坊をあやすようにドーラに乳を飲ませると、ドーラはたちまち若返り美しい娘になる。この場面美しかったなあ。そこへ狩りにやってきた王様、まさかその美女が自分が窓から捨てた老婆とも気づかず恋に落ち、結婚。ドーラはその結婚式に妹を招待するが、自分につきまとって離れない老婆インマに次第に苛立ちを募らせ「どうやって若返ったの?」と尋ねるインマに「皮を剥いたのよ!」と適当な嘘をつく。はい、もうオチはわかりましたね?(怖)

    みっつめは「ハイヒルズ国の夢見る王女」寡の王様は、なぜか自分になついたノミに夢中になり、エサを与えるうちにノミはどんどん巨体化、ほとんど人間と変わらないサイズにまで成長(ぬいぐるみみたいだけどお世辞にも可愛いとは思えない)、しかし虫の寿命は短く、あっさり死んでしまう。それまでたったひとりの娘である王女ヴァイオレットを放置していた王様は、ここで突然くだらないことを思いつき、ノミの皮を剥いでなめしたものを飾りそれが何の皮であるか当てたものに王女を与えるとお触れを出してしまう。当然そんなサイズのノミがいるとは誰も想わないゆえ、どんなイケメンがやってきても正解は出ない。ついに最後にやってきたのは険しい山に住む山賊か悪鬼のような男。王様が寛大ぶって彼にも権利を与えたため、なんとこの鬼のような男がノミの皮であることを言い当ててしまう。夢見がちな王女はショックで父王を罵倒し飛び降り自殺をしようとするも説得され、この鬼男に嫁ぐことに。険しい峡谷に連れ込まれ逃げることもできず屈辱と恐怖の日々を送る王女。しかしある日偶然崖の反対側に来た旅芸人の一座が彼女を救い出してくれる。崖にロープを渡して王女を背負い綱渡りする旅芸人の息子、追ってくる鬼男、あわや、というところで王女は助かり鬼男は崖下へ。旅芸人の夫婦と三人の息子たちと楽しく帰路を急ぐ王女、とくに綱渡りしてくれた三男はイケメンだし、良かったこれでハッピーエンドだ、とてっきり観客も思いきや、なんとターミネーターばりにタフな鬼男は彼らを追ってくる。キャー!親切な旅芸人一家はイケメンもすべて惨殺され、ひとり残された王女は鬼男のもとへ大人しく戻るふりをしつつ、隙を狙って見事斬りつける。全身に返り血をあびた姿で鬼男の首を持ち城へ帰還した王女に土下座する父王。

    ラストはこのヴァイオレットの即位式に、王妃の死後王位を継承したと思しきロングトレリス国のエアリス、美しい王妃ドーラを伴ったストロングクリフ国王も参列、しかしその式典のさなか、突然老化の始まったドーラだけは泣きながら走り去る。

    童話的な世界観とはいえ、かなりのダークファンタジー。残酷な血みどろ場面が随所に挿入されているし、魔術師や魔女、虫や動物系の怪物も満載(でもこれはわりと可愛いらしめ)、なにより人間の欲望やエゴの表出の仕方がとても怖い。夫である王様が死んでも顔色ひとつ変えず子供を産むことしか頭にない王妃や、若返るためにどんな痛苦も厭わない老婆の姿はとてつもなくグロテスク。しかし映像はとにかく美しい!世界遺産にもなっているイタリアの本物のお城や峡谷、洞窟などのロケーションは素晴らしいし、王宮の人々の豪華絢爛な衣装などはそれだけでも目の保養。個人的にはとても好きな映画でした。

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